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ぬば玉  作者: しんげつ
55/74

五十五、見舞う

神祇家に居た相生と会うなり

「これを。」

カラは懐から布を取り出すと、彼に渡した。

「ん?」手を伸ばしながら相生は怪訝な顔をする。

「筮竹を使った占いの方法だ。凛に渡しても良いか?」

「ああ。」少し布を開いて、相生はカラを見返す。


「まだ、全然駄目か?」

綾人が誅されてから、凛は塞ぎ込んで部屋から出られていない。


「雅殿が診ているからな。もう、日にち薬、しかないとな。」

「会えるか?」

「話は通してある。俺だけでは、部屋に行くのも憚られてな。」

「そうか。会って考えよう。王は?御前であったのだろう?」

「まあな。俺が覆い被さっていた形で、退出されたから、見えはしなかったが

 王には、かなり心引き裂かれる出来事であるしな。もう一月経つが、あの部屋は

 禊を行なっても、御成は難しそうだ。」

「静将軍は?」

「麻継殿は謹慎中だ。こちらはもう解かれる。軍事は、静一族無しには

 どうにもならない。言葉通り、綾人との縁を切って、政と鏡殿を

 守られたのだろうし、王も連坐で血を流すことは避けられた。」


歩きながらも相生は言葉を選んで話しをする。

「この建物だ。」そういうと、階段を数段上がり、外廊下を行く。

陽の良く当たる明るい場所だと

日暮らしの音を遠くで聞きながら、カラは思った。


部屋の前で中に声をかけると、雅が顔を出した。

「まあ、カラ。久しぶりね。」

「ご無沙汰しております。」

「二人が揃うと壮観ね。」と嬉しそうにいうと、部屋へ招きいれた。


凛は、布団の上で食事をとっていた様で、来客に合わせてちょうど腕を置いた

とこだった。

「カラ様。」少し笑顔を見せる。

「よう。食は少しはあるか?」

「ええ。食べないと。と思い始めて。」

「食べられれば、気力も戻る。これを。」先程、相生に了解を取った

占卜について書かれた布を渡す。凛は受け取ると、広げてすぐ、

「筮竹ですか?」と聞いた。


「ああ。そのうち役に立つかと思う。」

凛は少し陰りのある顔で「ありがとう。」と言った。

「まだ無理はするなよ。」と念を押す。

「全く喋ってくれないかと心配した。」

「カラ様。」ずっと温かい目で見てくれていたカラに言われると

何故か安堵する心持ちがする。


「本当は左衣殿も来る予定だったが、水の里は熱病が流行り出した。」

「え?熱病?」

「発疹をともなうやつだ。子供ばかりが罹っていて、大人はほとんど元気だな。

 けれど左衣殿にうつっていては大事になるからと、今日は無理だった」

「そう、か。」左衣に特別会いたかった、というよりは、

自分ばかり面倒を見て貰っている事が、少し恥ずかしい気分になる。


「元気になれば、水の里にも行けるぞ!」

相生は相変わらず、心底励ましたい気持ちを全面に出している。

凛は、自分の事ばかりに気を取られていた事を

改めて思った。

「あの、足はもう傷も塞がっていて、このまま手当をすれば上手く治りそうなの。

 もう普通の生活はできそう。でも、」

 言葉を切った凛にカラは優しい声で

「でも、占いは難しいか。」

「カラ様。」手で顔を覆って考える。自分がいなければこんな悲劇は起こらなかったのでは、という疑念がどうして拭えない。

カラの左手が凛の頭にをなぜる。

「答えは一つではないからな。今、自分にできることを精一杯やれ。」

涙目で凛はカラ見た。カラの目は相変わらず緑と灰色の違う色の目だ。

素敵だなといつも思ってきた瞳だ。


「精一杯、色々な見聞を深める事かな。。。。」

霧がかかった様になっていた視界が、晴れていく気がした。

隣で聞いている雅も相生も、嬉しそうだ。


そうだ、前を向けるかも知れない。

私に出来る事は何だろう。。。。。



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