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ぬば玉  作者: しんげつ
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四、天竺屋

友野は天竺屋持ってきたたくさんの陶器を見ていた。

「どれもこれも素晴らしいな。」

と感嘆の声で頷いている。


「はい。陶氏の里からの購入でございます。

普段使いのものとは訳が違ごうございます。」


「うむ。この表面の光沢。

形成してから薬をかけると聞く。」


友野が興味深々とみてとると、

「陶氏の里は技術を秘伝としております。」と釘を刺した。


「そうだな。秘伝な。」

朱い壺を手に取って静かにしばらく見ると、

「陶国の陶氏の里には、半獣のものがいるというのは本当か?」

と聞かれた。


(ああ。あの噂か。)

天竺屋は大臣に体を向け直すと、

「噂には聞いております。」

とだけ言った。


「何も知らん…か?」

友野が知っているだろ?という目線で聞いてきた。

天竺屋は少し真面目な表情を作ると

「噂に聞く半獣とやらを見たことはございません。正直、彼国を含めて何処のクニでも見たことはございません。

陶氏の里へは何度か行こうと思いましたが遠い。

いつも途中の八俣の交易地までで陶器を購入をしております。」

「八俣か。」

友野の気はそちらに振れた様だ。


「八俣の市は大臣様も行かれたことがあると伺っておりますよ。」

「ああ、色んなものがあって、目移りするな。」

朱い壺を机にもどすと、

「半獣が作成に関わったならば、この怪しげな色彩も理解できるというものだ。」

と言う。

天竺屋は友野の手が次の茶器に移ったのを見て、話題を変えた。

「こちらなどは、華やかで和仁さまにいかがでしょうか?」

手に取った首長い水差は牡丹の真っ赤な花が色彩豊かに表現されており、

対の杯は葉を表すように艶やかな緑が半分ずつ斜めにいれられている。


「おお。和仁も喜ぶ。」

友野は直ぐに反応して手を伸ばした。

和仁は友野の縁者であり、和仁のおかげで大臣まで上り詰めたといってもおかしくはない。

元は共に彼国の言葉を解す北の亡国の出自だった。


「最近、こちらの此の国では戦が治っております。戦が無ければ人心も落ち着いて

購買欲も高まります。

ひとえに天帝のご人徳のおかげかと。」


友野が返した視線がぶつかり、二人とも瞳に暗い、強い光がみなぎる。

大国の彼国は群雄割拠の時代だ。此の国が攻め入るのは賢明ではない。

彼国の砂漠と山脈を越した先は、

まだ見たことがない。

天竺屋は戦乱が起こり易い彼国での商売は諦めて、西へ行かずに太陽の登る東へ逃げてきた。


「そうだな。王子も健在であらせらる。

戦は人の心を荒ませる。」


友野が小さく頷くと、

「では和仁さまにこちらの杯と水差しを。

こちらは献上品でございますればお代は要りません。」

「おお!そうか!和仁には良く言っておくぞ。」

嬉々として言う友野に天竺屋は

「そちらの壺代はいただきとうございますが。」

にっこり、商人の顔で微笑んだ。


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