三十八、見通し
月が満月になるのに合わせて、神託の儀式は垓月王の前で、藤見が行う。
藤見が祭壇に向かって、禊の祓いをしていた。
祭壇に高さ二寸ほどの正方形の赤い板。板の上手前
中央に鏡があり。左に酒、右手に塩盛り。
藤見の動きが速くなり、
次第に集中しているのが後ろからも見える。
動きが止まり、両手を挙げる。
「今年は五穀が実り、豊かに恵まれる。嵐がもう直ぐやってくる。
凶は手遅れになること。」
そういうとその場にへたり込んだ。
臣下のざわめきの中で、垓月は満足そうに頷く。
数人の侍女たちが、藤見を助けて、席に下げさせるものが神前を去ると
「では、凛。」
という。
前にでて、円い鏡を前にする。
赤い盆板の向こうのしめ縄の向こうには神が居る。
座ったまま、集中する。
昨日円盤と星を組み合わせて出た占辞は、
乾の方向に水。
反対の巽の方向に日。
西に将軍。戦い。
東に赤。であった。満月の月は斗宿の近くに見えて、
おそらく牛宿へと移動していく。この時期の月は濃い金色見える。
佐奈田様は一年を通して今が一番低い位置の満月だと言っていた。
神はどの様に見るのであろうか。
「遠くに嵐が見えます。
そして、その後に洪水。
西の方角に戦い。
南に赤色の何かが見えます。」
後ろの臣下達がざわついた。凛より前に席がある上座の垓月も驚いたのがわかり、
口にしてから、しまった。と思う。
もう少し、言葉を選ぶべきだった。
背中にざわめきを聞きながら、祭壇の鏡を見つめていた。自分で動けないと感じる。
察した克勝が、隣にいた相生に一言何か言うと、
雅も動いて、近くの侍女と退出させようとした。
「待て。」
垓月が頭に手をやり制止する。
「戦いか?」
凛は垓月を見て座り直した。
「西は日が沈む方角だな。」
「はい。」
「天府か?」
「そこまでは見えないのです。
海の向こうの彼国かもしれません。
方角は見えるのですが。」
克勝が続けて
「彼国は戦乱が多くございますれば、何とも申し上げられませぬ。」
と割って入った。
「うむ。南に赤と言ったな。」
「はい。」
赤とはなんだ?
「月の根国の南の方角には歌仙山がございます。その辺りかと。
銅を産出すると聞いております。その赤なのか。。。。」
「ああ。銅に関することか。まあ、いつでもそこは何かあるからな。」
垓月が納得をすると、その場の緊張が少し緩んだ。
その雰囲気を察して、克勝は言う。
「豊作の兆しとは吉兆。収穫は嵐に備えて、民に早めに刈り取りを命じましょう。」
「そうだな。せっかくの実りを台無しにするな。」
「は。」
皆で拝礼する。
相生が扉を開けた。
椅子に肘を置いて、「嵐か。」
垓月は一言そういうと立ち上がった。
凛はもう一度深く拝礼すると、
垓月の背中を見送っった。口々に神託の言葉を解釈する意見が聞こえる。
綾人は臣下達のざわめきから少し離れた場所で
藤見が直ぐに気を戻して、凛の占辞を聞いていたの見ていた。
力を使い過ぎたのか、彼女は顔色が悪そうに見える。
なるほどな。コレハツカエソウダナ。




