三十七、盤
「あまりゾッとしないね。おもろない。」
墳丘墓の入り口付近を掘りながら葉瀬は言った。
「まあな。」
「墓なんて掘るもんじゃないぞ。」
間人もつまならそうだ。
「ふんっしょうがない。宝はないけど、
文字の書いた木か石な。」
どさっと盛り土がおちる。
「ぶ。口に土が。」ペッと唾をはく。
「静かにやってくれよ。」
少し遠巻きに見ていた依頼人が駆け寄る。
「ここか?」
葉瀬と間人は、しらっとした。
この気の弱い依頼人は本当に支払いをしてくれるのか。
松明で、穴の入り口を照らす。
「さてと。」掘った穴が奥の部屋に続いているのを見てから、
依頼人は穴に入り始めた。続いて葉瀬と間人も入る。間人は盗掘は初めてだが、
意外に広くて整然としているのに驚いた。
「墓は奥から死んだのが早い順だ。」
「ああ。」
松明を掲げる。
すぐ左を曲がると、ずらっと石棺がならぶ。
「やれやれ。1番新しそうなのはコレだぞ。」
「小さいな。」
「いや。それは子供だ。赤ん坊で亡くなった。」
「んじゃ、これから。」
石棺のよこに彫り物があるが、文字か絵かわからない。
「まあコレだな。」
ズズっと蓋をずらしてみた。
「よし。」
「おお。彼国の貨銭もあるじゃねえか。」
「それじゃないな。」
「それは女だ。」
「女?なんでわかる?」
「顎が小さい。首飾りが女だ。」
「じゃあコレか?」
「いやこれだ。」
気の弱い依頼人は石棺を指差した。
石には星が刻まれている。
ずずず。
3人で蓋をずらす。
朱がたっぷりはいっている。依頼人は手を突っ込んだ。
「うわっと。」手を引く。
腕に骨の手がくっついていた。
「はー。」
この気の弱い依頼人はいったい何だ。
「朱を取り除きますか?」
「そうだな。」
どさどさと、石棺の脇においていく。
じゃらじゅらと音がし始めた。
「し、慎重にな。」
手で、朱を全部避けてやると、骨と、玉と、貨銭、
木の板が出てきた。
「こ、コレだ!おお!」
両手で板を掲げる。
「何だあれ?」
間人は葉瀬に聞いた。
「さあな。賭け事の盤じゃないか?」
「ふーん。彼国のか?」
「さあ?」
「よーしよし。」
二人は、騒がしい依頼人を一緒に埋め戻したい。
と一瞬思った。
「は!匙もないか?」慌てて石棺を覗く。まだ朱の中には物がありそうだ。
「匙だ。匙がなければ意味を持たん。」
バタバタと手で朱を払う。首飾りや耳飾りが沢山出てくる。
「大きさはどれくらいなのですか」
葉瀬は聞いてみた。
「この盤にのけられる大きさだな。」
盤を掲げると、間人が
「これか?」と言って引っ張り上げた。
「おお!正しくこれだ!」
最初に静かにやれと言った、うるさい依頼人を二人で見つめる。
そして葉瀬はあの盤、何処かで見た事があるな。
そう思っていた。




