十五、集める
友野は珍しく、侍従長の定を見かけた。
普段は後宮から出ない。
その道は入り口から後宮へ繋がる唯一の道だ。
「定」
と思わず声を掛けた。
「これは友野様。」
拝礼する定に
「珍しいの。」
と言った。
「はい。帝はお休みなくいらっしゃいますので。」
「良いことであるな。ご健勝と言う意味で。
最近は?」
意味ありげな目をして見る。
「やはり、三毛のような聖域に参ることができそうな
少し神秘的なものが良いようです。」
定は、未だ斎宮という人を近くでは見たことがないが、
きっと近づき難い様な人をいうのだと思っている。
「なるほど。沢山要るか?」
「最近また手配しております。」
「街で?」
「はい。昨日もお一人では満足されず、
3人ほどお召しになりました。
繰り返しの女人はお悦びにならないのです。」
「一度きりか?」
「いえニ回から三回と言ったお召しというところで。」
「慣れてくるものが気に入らぬか。」
「ええ。昨日も
三度目のお召しのものが出過ぎた真似をしまして
。。。。縄で腕を縛りまして。。。。」
さすがにびっくりして、
「まさか。死んだか?」
と聞いた。
「いえ、毎回そこまでではございません。」
「はー。
お互い苦労が絶えんな。」
友野が言うと、
「はい。」と言う定はうつむいた。
「巽の娘は?」
「かなりお気に入りのようです。
いつまでかは分かりませんが。」
「そうか。三毛な。」
「三毛は沢山でなくともそれなりにいると考えていたのですが。」
「血統だからな。必ず生まれるとは限らん。
今は月の根国の宰相夫人の雅殿の系統しかいないのだ。」
「後執着の三毛は娘ですか?」
「いや、孫に当たる。」
「今の斎宮の?」
「いや、そうではない。斎宮は清らかでなくてはならん。
ゲスな言い方をすれば
男を知らないはずの斎宮が子供を産んだりはできん。」
「では誰のお子なのですか?」
「今の斎宮殿の妹だ。」
「斎宮に上がる前に産んで亡くなった。」
「まあ。」
定は大抵の情事なら驚かない。
毎日、その事が仕事だ。けれども斎宮に上がる前に出産と言うのは
流石に、クニのあり方を根底から覆すような大事だ。妹というのも気になる。
「まあこのあたりの事情は色々あってな。
帝にも三毛はさすがに諦めて頂く。」
お互い次の言葉が見つからず
「ふう。」
と二人でため息を付いた。




