十三、天帝
宴が盛り上がっている。
女たちの矯正が聞こえ始めていた。
友野は女たちを見回した。
あの子とあの子だな。
帝の十光が好きそうな娘たちに近づく。
新しい酒と肴を持って二人に渡す。
「一緒に来なさい。」
友野は二人を後ろに控えさせて
「帝。」
と斜め左手から声をかける。
「舞手でございますが、どうやら三毛でございます。
もうすぐ御山に仕える身でありますれば、
殿上することは無理であると思われます。
代わって、宰相、克勝より舞手を数人次回の天府での大礼に送るともうしております。」
一気にここまで言うと帝をみる。
「気に入らんな。」
友野は帝の攻撃的な人格が出るのを恐れた。背中に汗をかんじる。
月の根国でそれは避けたい。足が浮きそうな心地がしていた。
ドンッ
と太鼓の音がして、篳篥や笙の音が鳴り始める。
すでに食事場所となっている舞台の端で、
銅剣を持った女が踊り始めた。
「な。」
始めて見る舞の形だ。
友野が呆気に取られていると、
「ほう。」
と十光が呟いた。気を引かれたようだ。
音楽は一気に速くなり琵琶と箏が加わって力強さを増していく。
舞手は銅剣が重さが無いかの様に、器用に回し始めた。
これは大陸の西方の踊りか?
友野は昔の記憶を思い出していた。
額に赤色の玉、濃い紫の衣装にもガラス玉が縫い付けてあり、
松明は足したのか輝いている。
音楽は此の国のものだが踊りが違った。
呆気に取られた友野に
十光は
「あやつなら良いか?」
と声をかけた。
「何処のものかもわからず何とも。」
「まあよい。後でこちらへ寄せることは?」
「そ、それは大丈夫かと。」
「うむ。堪能しようぞ。」
友野は旅芸のような一座を見て、胸を撫で下ろした。
雅楽とは異なる。楽器は見慣れたものばかりだが音の使い方、
踊り方が違う。銅剣を二本持っているのは帝が見ていた目線にあった背の高い女だ。
足の飛び方、踏み方がみたことがない。
戦いの音楽なのか一定のリズムが加速していく。
太鼓が主音を奏でているが、音が多くなっていった。
鈴の音がうるさいくらいになると
最初と同じ
ドンっ
と音が爆発して、舞は止まる。
背の高い女が長い前髪からじっとコチラをみる目は、
ドキリとさせられた。
「わっ」と若い臣下たちがもてはやす。
同じことを帝も考えた様だ。
「これはこれは。」
ニヤリと笑うと友野を見る。
「た、只今。」
御簾から出た。
そして舞台から降りた背の高い女に、
「役者の様だが。」
と声を掛けた。




