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第六話 影の刃と再会の名

紅陽へと戻ったレン。

だが、その背後には“影”が迫っていた。


静かに始まった追跡は、ついに形を持つ。

そして――紅陽の中で、激突する。

 紅陽の入口。


 まだ整備されていない細い山道を抜け、レンは村の中へと戻ってきた。


「ただいま――」


 声をかけるより早く。


 背後から、気配が“変わった”。


(来る!)


 反射的に身体をひねる。


 次の瞬間、空気を裂くような音とともに、細い刃が頬のすぐ横をかすめた。


「っ……!」


 着地と同時に距離を取る。


 目の前には、猫耳の獣人の女。


 王都で見た、あの女だった。


「……やっぱりついてきてたか」


 レンが低く言う。


 女は答えない。


 ただ、じっとこちらを見ている。


 その目には、敵意と、それ以上に強い“執着”が宿っていた。


「何者だ」


 レンが問いかける。


 だが返事はない。


 代わりに――


 再び、動いた。


 音もなく踏み込み、懐へと潜り込む。


(速い!)


 レンが反応するより早く、二本目の刃が放たれる。


 咄嗟に弾く。


 だが、それは“本命”ではない。


 視界の外から、もう一撃。


「ちっ!」


 無理やり体を捻り、回避する。


 その瞬間。


 横から鋭い気配が割り込んだ。


 ――キンッ!


 金属音。


 リディアの剣が、暗器を弾いていた。


「不用意に近づきすぎだ」

「助かる!」


 リディアが一歩前に出る。


 女と正面から対峙する形になる。


「……アサシンか」


 静かに言う。


 女は無言。


 だが、その構えは明らかに戦闘のそれだった。


 周囲では、レオンとセラが動いている。


「下がって!」

 セラが叫ぶ。


 カイ、ミレーヌ、そしてレンファを後方へと下がらせる。


「ここは俺達で抑える!」

 レオンが位置を取る。


 だが――


「来るぞ」

 リディアが呟いた瞬間。


 女の姿が消えた。


(消えた!?)


 レンの視界から完全に外れる。


 次の瞬間。


 背後――ではない。


 “上”。


「っ!」


 振り上げられた刃。


 リディアへと一直線に落ちる。


 だが。


 ――ガキィン!!


 リディアはそれを正面から弾いた。


「……!」


 女の目が、わずかに見開かれる。


「これを見破るなんて……」


 初めて言葉が漏れる。


 だが次の瞬間には、再び冷静さを取り戻す。


「でも――」


 地面を蹴る。


 間合いを詰める。


 刃が連続で閃く。


「ここでやられる訳にはいかない」


 速い。


 だが、荒れてはいない。


 精密で、無駄のない動き。


 完全に訓練された殺しの技だ。


「あの人の手がかりを掴むまでは!」


 その言葉と同時に、フェイント。


 視線を外し、別方向からの一撃。


 リディアはそれすらも弾く。


「甘い」


 短く言い放つ。


 だが、その表情は僅かに引き締まっていた。


(強い……)


 レンも同じことを感じていた。


 単純な力ではない。


 技術と経験。


 それが噛み合っている。


(リディアと正面でやり合える……)


 普通ではありえない。


 それほどの実力だった。


 戦闘は激しさを増していく。


 地面を蹴る音、刃のぶつかる音。


 紅陽の静けさが一瞬で塗り替えられる。


 だが、その時。


 後方で――


 ひとつの気配が動いた。


 レンファだった。


 外の様子を見ていたその目が、ある一点で止まる。


「……っ」


 呼吸が止まる。


 視線の先。


 戦っている猫耳の女。


 その姿を見た瞬間。


 言葉が、漏れた。


「……ルナ」


 次の瞬間。


 声が、はっきりと響いた。


「ルナ!」


 その一言で。


 空気が、凍る。


 女の動きが止まる。


 リディアの剣も、レンの動きも、すべてが一瞬止まる。


「えっ?」


 レンが思わず声を上げる。


 女――ルナは、ゆっくりと振り返る。


 その視線の先。


 レンファが、立っていた。


「……レ……」


 声が震える。


 信じられないものを見るように。


「レンファ……!!」


 叫びに近い声だった。


 その瞬間。


 戦闘は、完全に止まった。

第六話を読んでいただきありがとうございます。


今回は紅陽での戦闘と、猫耳の獣人――ルナの本領発揮、そして再会の瞬間までを描きました。

リディアと互角に立ち回る強さ、そしてアサシンとしての技術が見えた回でもあります。


そしてついに――

レンファとルナが再会。


次回は誤解の解消と、感情のぶつかり合いへと進みます。

ぜひ続きもお楽しみください。

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