第40話
私がゴーレムに驚いたのは、私の持っている手段がどれも通用しないからと言うわけではない。
ゴーレムとは別名、人造機兵と呼ばれる存在だ。
そう人工……。つまり人間が生み出した存在というわけだ。そんな存在がダンジョンのボスをやってる理由なんて一つしかない。
誰かがダンジョンにゴーレムを解き放ち、魔物との競争に勝ち残ったんだ。
一体誰が……そんな思考が頭を過ぎる中――
ガキンガキン! と激しく大剣を振るうゴーレムの攻撃を跳んで跳ねて交わし続ける。
なんとかゴーレムの背後に回り込み、仲間達への攻撃から私に誘導しようとしたのだが――
「敵……殲滅滅滅」
「ちぃッ!!」
私なぞどうでもいいとゴーレムが仲間達に向かって突進し始めた。こいつ! 見境なしか!!
「【シルファ・ニーフル・ザッファ!!】」
急ぎ詠唱。風魔法の応用である高速移動でゴーレムの前に立つ。
「先生!?」
「ご主人!!」
「お前達は2人を守れ! 私のことは気にするなッ!」
来いデカブツ! その錆びついた体と思考回路を焼き切ってやる!!
「【ヘイン・シュトリテ】」
ゴーレムに魔術の類は通用しない。が――例外はある。
奴は特殊な魔道電気で起動している。で、あれば雷系統の魔術であれば……。奴の回路を断つことができるかもしれん!
「【ザザーラン!】」
両手から稲妻が迸る! 轟音と共に放たれたそれがゴーレムに向かうが――ゴーレムの纏う鎧に雷がへにょりと曲がり軌道をさらされた!?
「なんだその装備は!?」
「先生!!」
ゴーレムが大剣を振り下ろす! 咄嗟に鞘から引き抜いた剣で防御を試みたが! とんでもない衝撃が頭上から降り掛かった!
なんて……重さだ。
「流石はゴーレムだ、な」
『ちょっと大丈夫? まさかお前もここまでの命なのかしら〜?』
人が必死に争ってるというのにウィルめ。面白おかしく私を揶揄うんじゃない。
「お前は私の仲間だろう!? 少しは協力しろ!」
『え〜。だって私の能力意味ないじゃん。それなのに協力ったって……ねぇ?』
タダ働きはごめんよ〜。と言いたげな目を向けてくる。
こいつ……誰に似たんだか!
「くそ! 何が欲しい! なんでも買ってやる! だから少しは手伝ってくれぇ!!」
『なんでも!? 言ったわね。言ったよね! その言葉に二言はないんでしょうね!』
「ない! ないから頼む!」
ゴーレムがさらに重みを与えてきた!!?
このままでは潰されてしまう!
ビシッ!
その前に剣が持ちそうにない!
「早く!!」
『は〜い』
言ってウィルが私の側から飛び立ちゴーレムの体の周りを浮遊し始めた。ゴーレムはそんなウィルを一切気にも止めない。いや……見えていないのかもしれない。
『へ〜。そういう事〜』
「何かわかったらさっさと報告しろ!」
何がふむふむなるほど〜。だ! こっちは潰されかけてるんだぞ!!
フワリと戻ってきたウィルがニヤニヤしながら私に耳打ちしてきた。
『あの鎧だけど〜。王国製の紋章が刻まれてたわ〜。いいえ。鎧だけじゃなくて剣も盾にもね』
「と、言う事は――」
『あのゴーレム自体王国製なのかも知れないわね〜。これで十分かしら〜』
十分だ!! 王国製の武具であれば対処の仕様はいくらでもある!
剣を傾け、ゴーレムの攻撃をいなし、飛び掛かる。
王国の武具は魔術に対して強力な防御を誇る。恐らくゴーレムの弱点である雷魔術をカバーするために装備されたってあたりだろう。
だが所詮鎧は鎧だ――鉱物から熱を使って精製された物に過ぎない! 魔術に耐性があるとはいえ、強力な火魔術には耐えられまい。
「【グレニア・ダス・イモータル】」
剣の鋒を手でなぞり地獄の業火を付与する。
この魔術は本来決して消える事のない炎を敵にぶつける物だが、1発に対して魔力消費が激しい。
こういった高威力魔術はそのまま使うんじゃなく、付与して何発も振えるように変換する方がお得だ!
「ふんッ!!」
剣を振るうとゴーレムは俊敏な動きで大盾を構えた。
が――無駄だ。
剣が盾とかち合った途端。じゅわりと融解して斜めに溶け裂く。
続いて、大剣に斬り掛かり、ただの溶けた鉄へと変えてやった。
これで奴は武器を失った!
付与した剣も後一振りで形を失うだろう。
その前に!
地面を踏み込み、ゴーレムの巨体へ飛び込んだ。
ゴーレムは目から光線を放つが――それぐらいは読んでいるぞ!
身を傾け、掻い潜り私の剣がゴーレムの体を切り裂く!
ガキン!! と剣がゴーレムの内側の装甲に弾かれ折れてしまった。
やはり魔術は通さないか! だが――
鎧はどろりと溶けて落ちていく。形すら残さない。一度も燃え移れば、全て焼き尽くしていく。
これがダンジョン産の鎧であればこうはならなかったかもな。何せ未知の物質も存在すると聞く。
「ガガ、ガガガ! 装備の8割消失。戦闘不能戦闘不能!!」
見ぐるみ全て剥がされたゴーレムが壊れたように警告音を発し始めたようだが、言葉とは裏腹に存外やる気じゃないか。
手足で私を潰そうとしてくる様はまるでオーガの類のようだ。
目から光線を放つあたりオーガよりは強力か。
「うっ……」
その攻撃を躱し振り返るとジョルジュが膝をついていた。痛み止めの効果が切れかかているのか?
私としたことが、この戦闘を楽しんでしまったようだ。
「さて。ゴーレム。お前とのお人形遊びもここまでだ」
手を構える。先程無効化された雷魔術をお見舞いしてやる。
「【ヘイン・シュトリテ】」
お前を完全には破壊しない。王国製なのだろう? ダンジョンにいるはずのないゴーレム。このダンジョンの異常。知恵をつけた魔物共。その原因がこいつにあるのなら、倒して調べ上げるまでだ!
「【ザザーランッ!】」
迸った雷がゴーレムの全身を覆った。その数多くは弾かれ霧散していったが、この魔術自体でお前を破壊する訳じゃあない。
パチッと腕の関節から雷が内部に入り込んだのが見えた。
「終わったな」
呟いたと同時、ゴーレムの目が一層発光し、全身から煙を噴いた。
「体内の温度上昇。各システムに異常発生。継戦不能――能――」
ブゥン……。と停止し完全に動かなくなったのを確認して私は剣を――ふむ。溶けているな。
捨てて、ゴーレムの元へ向かう。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
もし面白いと思って頂けたら
評価とブックマークをして頂けると励みになります。
よろしくお願いします!




