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第39話

 魔物はこちらの意図も気にせず、なおも迫り続けている。このままでは逃げ場がない状態での戦闘になるだろう。

 後ろには先に進む為の通路、傷付いた救助対象者2人。それと仲間の2人……。


 勝てる自信はある。

 が――後ろの4人を無傷で済ませるのはかなり厳しい、さてどうしたものか……。

 

『考えてる暇なんてなさそうよ? どうするの?』

「僕を殺して妻だけ抱えて逃げてください! はやく!」

「少し黙ってくれないかッ!」


 ジョルジュが私の叫びに体を硬直させた。

 少し……ほんの少し考える時間をくれ……。

 前からは数が不明の魔物の集団。更には人間並の知識を得た統率の取れたパーティー。

 後ろの通路からは魔物の気配をそこまで感じない。比較的安全に進めるだろう……が行き着く先にはボスの間がある。

 この場の全員を無事に帰還させるためには――


「よし。全員荷物をまとめろ! 奥へ進む!」

「奥へだって!?」


 私の号令でリオンは荷物を背負い、ジーナが奥さんをおぶった。

 だがジョルジュだけは納得がいかないと言ったふうに食いついてくる。


「奥はボスの間があるんですよ!? ここは僕を殺して引き返すべきだ。あなたはそれが出来る力があるでしょう! 冷静に考えてそうするべきだ!」

「私は生きている人間を殺しはしないッ! 絶対にだ! ここで死んだらあの人と過ごした時間はどうなる!」


 ジーナが背負う奥さんを指差して言ってやった。


「あんたが死んで生き返ったとしても記憶がいくつか消されるんだぞ! その消えた中に2人で過ごした思い出があるはずだ! あんたが記憶を消された状態で生き返った後……あの人はそんなあんたを見てどう思う!」

「それは……」

「生き返ったとて同じ人間とは限らない。似た顔、似た声、似た仕草をするだけのあんたに似た劣化体だ。愛する人を悲しませるぐらいなら、生きて足掻いて、なんとかこの場を潜り抜ける方に頭を動かすんだな」


 行くぞ。と私は奥へと足を踏み出し、リオンとジーナは私の後に続き始めた。


「あー。もう! これで死んでも知らないからなッ!」


 ジョルジュも意を決したらしい。


「なに。心配いらないさ。今日の夜には家で家族団欒してるだろうさ」


 そうだ。私はその為にこの依頼を引き受けたのだから。


 ***


 グルエルから託されたタブレットを見るに、ダンジョン最奥のボスの間まで、この地点からそう離れていない。

 偶然か、幸運か、はたまた罠かは分からないが、魔物も奥に魔に近づくにつれて数が少なくなってきた。


 とは言え、武器と矢を温存したいところだ。

 私は徒手格闘でのみ魔物パーティーを潰して進む。

 このような魔物が蔓延る異常ダンジョンのボスだ。どんな手合いが現れるか計り知れない。


「ご主人? なぜ奥へ進むと決めたのだ? ボスはダンジョン内を徘徊している魔物よりも脅威だと言うのに」

「そうそう。倒したって帰りの道中に魔物は襲いかかってくるじゃん」


 ジーナとリオンの疑問も最もだ。


「確かにな。だがボスを倒した後、ダンジョン内にいる魔物は新たなボスを決めるための競争状態に入ることは知ってるな?」


 2人は頷く。これまで共にした仕事の中でボス討伐した事もあるのだから身を持って記憶しているはずだからな。

 

「我先にとボスの間を目指すようになるはずなんだ。そうなるとパーティー戦術といった連携どころの話じゃない。私はそれに賭けることにしたんだよ」

「つまりご主人はボスを倒した後の混乱に乗じてダンジョンからの脱出を考えたと……」

「そういうわけだ」


 ただこれは勝率の低い賭けでもあるがな。

 ダンジョン自体異常なんだ。魔物の本能なんてもはや機能しないかもしれない。だが全員が無事に帰るためにはこんな無謀な賭けにも乗るしかないんだ。

 内心ヒヤヒヤしながらも進んでいるとその扉は現れた。


「着いたな」


 ボスの間へと繋がる死の扉だ。

 扉の奥から重圧が漏れ出ているのか、冷や汗が流れた。

 荷物のチェックは先ほど済ませた。武器も回復アイテムも十分にある。

 気をつけるべきは……後方で待機させた仲間達への被弾。それと即死攻撃ぐらいだ。

 亜人系のダンジョンだ。即死系攻撃を使うアンデットの類が控えていることはないだろう。

 が……念には念を。警戒はしておくべきだろう。


「本当に……行くんですか?」


 着いてきたはいいがここに来て不安になったのだろう。ジョルジュが正気か? と聞いてきた。


「ああ。それしかこの状況を打開する手段はない」

『奴ら追ってきてるわよ〜』


 後ろの通路を「ん〜?」とウィルが観察していた。

 霊魂の類だから暗がりでもよく見えるんだろう。

 というか霊魂に視力は存在するのか?

 まあ今はどうでもいいか。


 少し気が紛れ緊張がほぐれた。皆に先に進むことを告げ、私は、目の前の扉に手をかけ開いていく。

 重たい扉が開くと同時、中からひどい悪臭が吹いてくる。

 なんだこの臭いは……。隙間から生臭い臭いが……。

 鼻を覆いつつ中に……ボスの間に潜む魔物を探る。

 カワイイヨの魔物の死骸の中に奴は居た……。

 奥に一体。巨体だ。高さは私の倍はあるか? 武器は大振りで錆びついた大剣、そして大盾のようだ。

 鎧で顔ははっきり見えないが……。


 考えているとバタン! と扉が閉まる。

 私は振り返り仲間達が全員入ったのを確認する。

 これで背後から迫る魔物集団の奇襲を心配することはない。

 1対1だ。いいや。今はウィルがいる分1対2か。私の方が有利だな。


 鎧姿の巨体が動き始めた。久々に動いたのか、体がガチガチ、ギギギと歪に動いている。

 顔が上がると目が赤く光だした!

 その顔は生き物なんかじゃない冷たい物だ。

 そう物……。無機物だ!


「ゴーレム!!」


 そう結論づけると同時、ゴーレムは巨体を駆り、私たちの元へ動き始めた!

 まさかの相手に紛れたはずの緊張がぶり返す。

 ゴーレムは物理、魔術に対して耐性があるだけで無く生き物由来の命がそもそも無い。

 つまり……ウィルの強制デバフも意に返さないと言うことだ!!

 

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