文化祭 夜の光景 信じることができませんか?
京ちゃん、真っ赤になったまま椅子に座った。
「知先生のくせに、生意気・・・」
コーヒー、冷めちゃうよ。
僕の鳴き声に気がついて、京ちゃんは立ち上がり、コーヒーを自分のカップと僕用のマグカップにいれた。
「一口だけだよ。」
僕用のマグカップを床に置いた。
ありがとうです。コーヒーは一口で充分。
うん、美味しい。
「今夜って・・・どんな顔して待てばいいのよ。」
京ちゃんは僕の頭を撫でながら、溜息をついた。
文化祭の仮装ダンスバトルだけど文芸部。無事に一位です。
流石、京ちゃんと柏木くん。
黒蜥蜴の京ちゃんと明智小五郎の柏木くんのタンゴは見事でした。
ただね。知兄ちゃんファンクラブに京ちゃん、かなり睨まれることになっちゃったみたい。
その筆頭がこの人。
河野静香先生。
文化祭が終わり帰る間際、何故かこの人が来た。僕は急いで窓辺に向かって、窓の外から二人の様子を見ていた。
ちなみに、保健室は一階にあります。
「知先生に柏木くんと随分とお盛んなようですねぇ。橘先生」
京ちゃん、無言で河野先生を睨みつけた。当然だよね。
自分だけじゃなく、柏木くんと知兄ちゃんを侮辱したのと同じだよ。河野先生。
「柏木君は文芸部で指導している生徒の一人ですが?」
「その綺麗な身体を使って指導したんでしょ?どうせ」
身体を使って指導=柏木くんとSEXしたんでしょ。
何それ。
攻撃しようにも、猫である僕が出たら、ますます不利になる。僕は、保健室隣の物置部屋に向かった。
そこにある京ちゃんのパソコンをこっそりいじって録音機能をONにしたあと、知兄ちゃんを呼びに行った。
丁度、俺は職員室に向かう途中だった。職員室にある荷物をとったら、京子さんと琥珀と一緒に帰る予定だったのだ。
「ちょっと、来なさい」
ぐい。
俺は腕を掴まれ、振り向いた。視線の先にいたのは琥珀お姉様だった。
黒いブラウスに黒のロングスカート。
いつもどおりの姿だが、表情は酷く険しかった。
珍しい。
「知兄ちゃん、京ちゃん、河野先生にイジメられている。」
眉間に皺を寄せた琥珀お姉様の様子に、俺は彼女の後を追った。
途中、柏木君もアタクシと知兄ちゃんの異変に気がついたようだ。
彼は何も言わず、アタクシ達の後を追った。
アタクシは保健室の隣の物置部屋へ二人を案内した。ここからなら、隣の保健室の話し声が聞こえる。
「知之さんにふさわしいのは私なの。貴方、邪魔。この学校から出ていって。」
「どういう意味ですか?」
「私と理事長の関係はご存知よね。」
確か、理事長の姪に当たるのが彼女だと聞いている。
「彼と私、昔恋人同士だったの。行き違いがあって別れたけど・・・私と知之先生が結婚すれば、知之先生は理事長になれるの。」
やれやれ。理事長が姪に甘いのは知っていたけどさ。これは酷い。
アタクシと柏木くんは二人して、知兄ちゃんを見た。
恐ろしい顔をした知兄ちゃんがいた。
「まず、柏木君の指導ですが、私が身体を使って彼を誘惑したとは言語道断。教育者として恥ずべき言動では?第一、このような大きな傷のある身体で、どうやって彼を誘惑したと?」
その言葉ともに、衣擦れの音がした。
「何、その傷・・・」
「幼い頃の事故で負いました。」
柏木くんを見ると、彼の表情がなくなっていた。
能面。だけど、その表情こそ、彼が怒り狂っている証だ。
「次に、三沢先生の件ですが、貴方と結婚なんぞせずとも、彼は望むなら己自身の力で理事長になれますよ。私はそうなると信じています。貴方はそれを信じることが出来ませんか?」
その言葉を聞いた知兄ちゃんは黙って、隣の保健室に入っていった。




