文化祭 昼の光景 キスする場所の意味
保健室に戻り、僕を抱いたまま、京ちゃんはサイフォンのスイッチを入れた。
「琥珀、隣の部屋で待っていて。一緒にコーヒー飲んで出番が来るのを待とう。」
僕を床に下ろすと、京ちゃんはマグカップを取り出した。
コーヒーの良い匂い。その時だった。
バタン、ダン、ガチャ。
乱暴な音が響いた。扉壊れちゃうよ。誰だろう。
知兄ちゃん!どしたの?
走ってきたのか、息が乱れ、髪の毛もぐちゃぐちゃ。
執事のコスプレもどこか乱れている。だけど、眼だけは爛々としていた。
あ、コレ、ヤバイ。
京ちゃんも驚いたように知兄ちゃんを見つめている。
「知センセ?どうしました・・・」
黒蜥蜴の衣装の上に白衣を羽織った京ちゃんが、知兄ちゃんに近づいた。
だけど知兄ちゃん、京ちゃんの問いかけに答えず、いきなり京ちゃんの手首を掴み、引き寄せた。いつもならスニーカーだから踏ん張ることが出来る京ちゃんだけど、今日に限っては、ハイヒール。
無理だよぉ。
「知・・・」
ぴちゃりぴちゃりと水の音がする。
知兄ちゃん、京ちゃんにかなり激しく口づけた。それもいきなり。
まあ、無理ないよねぇ。恋人(仮)がいきなり変身したんだから。
「ん・・・んん・・・」
息が苦しくなったのか、京ちゃんは知兄ちゃんの胸板を叩く。
唇が離れたと同時に、知兄ちゃんは京ちゃんを抱きしめた。
「いきなり、どうしたんですか・・・」
「そりゃ、俺のセリフですよ・・・こんな綺麗になって、あんな誘惑して・・・俺は私のものだなんて宣言してくれちゃって」
ボンという音がでるかのように、京ちゃんは真っ赤になった。
「いや、だって・・・ほら・・・貴方の親衛隊が・・・」
「京子さん」
知兄ちゃんは再び京ちゃんに口づける。やがて、一旦離れると、京ちゃんの耳元に何度も口づけながら囁いた。
「あんな宣言なんてしなくたって、俺はとっくに貴方のものだよ。貴方を愛している。だから、京子さん。だから貴方も、俺のものになって。俺を愛して。」
京ちゃんは首を横に振ろうとするが、それより先に知兄ちゃんは首筋に噛みつくように口づけた。
知兄ちゃんがキスした場所、興味深いねぇ。
唇=愛情。
耳=誘惑。
首=執着。
「知さん、ここ、学校」
「ああ、此処で抱かれること期待した?」
「期待なんてしてな・・・」
再び知兄ちゃん、京ちゃんの唇を自分の唇で塞いだ。
コサージュに隠された傷跡に気がついて、其処に口づけた。跡が残るほど激しく。
「此処が学校じゃなかったら、このまま押し倒していたんだけどなあ・・・」
くすくす笑う知兄ちゃんに、京ちゃんは笑った。
「正直だなぁ・・・私も三沢知之が好き。貴方になら抱かれてもいい。いや、抱いて欲しい。だけど、私初めてだから、リードしてくれないと困りますね。」
初めてという単語に、知兄ちゃんが驚いた表情を浮かべた。
「初めて?」
「不本意ながら。この年まで男性経験はありません。」
京ちゃん、笑いながら知兄ちゃんの背を撫でた。その様子に、今度は知兄ちゃんが真っ赤になる。
「・・・分かった。覚悟してくださいね。今日の夜、貴方を奪いにいく。」
知兄ちゃんはそう言うと、再び部屋をでた。




