表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫が書く徒然草  作者: 瀬古刀桜
同居にまつわるエトセトラ
4/89

魔女姫に恋した男。

ふさふさな毛並みを持つ黒猫が、俺の隣に座った。

琥珀色の瞳が、じっと俺を見つめる。

「京センセが・・・俺を年下の後輩としか見てくれない・・・琥珀・・・」

ぎゅうと目の前の黒猫を抱きしめた。

名前は琥珀。黒い毛皮。前足の爪先あたりに、ちょこんと白い毛が混じっている。長毛種の血が入っているのか、かなり大きい。

琥珀は俺を慰めるかのように、頬をぺろりと舐めた。ホント、頭の良い猫。

俺は一昨日、琥珀の飼い主である橘京子先生の自宅に遊びに行った。つうか。正確には俺が風祭教頭を脅迫して、連れて行って貰ったのだ。

だって、気になる女性の家に行くというのだ。何が何でも二人っきりにさせたくなかった。だが。

「・・・酒飲み過ぎで風祭さんと野球拳って・・・何やってんだろ。ぜってぇ嫌われた。最悪だああ。」

満開の桜の木の下で、微笑んでくれた優しい人。

猫を相手にしゃべる所も、時折見せる腹黒い言動も。

「琥珀・・・どうすればいいんだ。」

目の前の黒猫が目を細めていた。

「何やってんですか。君は」

黒く艶のある髪をゴムで一つに束ね、フレームレスのメガネに白衣の女性ー橘京子先生が笑っていた。

「京センセ」

「渡すものがありまして。はい。コレ」

なんだろう?

俺は袋を見つめた。

「お弁当。要らないのなら・・・」

弁当包みを俺から取り上げようとした京センセから、身体をそらして弁当つづみを守る。

その様子を見た京センセの目元に笑い皺ができた。

か、可愛い。

「知先生。酒はほどほどにしなさいよ。」

そう言うと、京センセは手を振って去っていった。




職員室に戻り、俺は弁当包みの包みを開けた。

包みを開けると、中から出てきたのはベーグルサンドイッチ。卵とマヨネーズ。ハムと比較的シンプルな代物だった。

もう一つはスープジャー?

なんだろう。

「ポトフ・・・野菜嫌いだっていったから、食べられるように考えてくれたのかな。」

一口ポトフを食べた。

「旨い・・・やっぱ京センセ、好きだなあ。俺」

ヤバイ、俺、京センセイに胃袋をがっちり捕まれている。

「知。一応言っとくが、それ全部、お京の手作りだぞ」

「手作り?」

飯を食っていた風祭教頭がコーヒーを飲みながら行った。

「アイツ、パンから何から全部作れるんだよ。あー見えて、凝り性なんだ。」

「風祭さん。」

「ん?どうした。」

「決めた。俺、京センセの恋人に立候補する。」

ぶっ。

コーヒーを飲んでいた風祭さんが、噎せた。どうやらコーヒーが気管に入ったらしい。

「・・・オマエ、確か・・・恋人」

ゴホゴホ言いながら風祭さんが何か言おうとしたが、俺は彼の言葉に応えた。

「ここ2年、交際している女はいない。京センセ一筋。だって、あんな綺麗で可愛い女性、見たことないもん。俺」

「・・・可愛い。あの【魔女姫】が?」

俺の言葉に、風祭さんは首を傾げていた。

無理もない。

生徒内では【魔女姫】と何故か恐れられていた。頭が良い人だからかな。

だけど俺にとっては。

「可愛い。可愛くてたまらないよ。」

俺の言葉に、風祭さんは笑った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ