第84話「保育園の寝かしつけ担当がドラゴンになった」
◆昼前・ひまわり保育園(静かな場所にも、時々「静かすぎる」がある)
お昼寝前の保育園というものは、本来、静かさへ向かう途中のにぎやかさをしている。廊下を走らない約束を思い出した子がぎりぎりで足を止め、さっきまで泣いていた子がようやく涙を引っ込め、絵本を読む先生の声に混じって、まだ眠くない子の小さな抗議があちこちで揺れている。布団の準備をする音、コップを片づける音、誰かがまだ喋り足りないみたいに笑う音。その全部が少しずつ低くなり、やがて一人、二人と寝息へ変わっていく。保育士にとっては毎日のことでも、その毎日が同じ形でおさまる日は案外少ない。
だから、保育室へ入った瞬間に訪れるあの静けさは、園長の背中をぞくりとさせた。
窓際に並んだ小さな布団の上で、園児たちはほとんど同じ角度で横を向き、ほとんど同じくらいの深さで眠っていた。寝つくまでにいつも時間がかかる子も、抱っこから降りると目を覚ましやすい子も、今日はどういうわけか最初から争わず、泣かず、転がらず、すとんと眠りへ落ちている。保育士たちはその間にやるべき記録や片づけへ手を伸ばしていたが、手は動いていても顔だけは妙に落ち着かなかった。助かっているのに、助かり方が急すぎる。現場の人間ほど、そういう時に不安を覚える。
「……全員、です」
主任保育士の奈々子が、ほとんど囁き声で言った。
「今日は一人も起き返らないし、布団から出る子もいません。ありがたいんです。ありがたいんですけど、こんなに一斉に寝ることって、本当にないので……」
園長は頷きながら、室内の温度計へ目をやった。数字は二十七度を少し超えている。暑くて危険というほどではないが、午睡の部屋としてはやや高い。しかも壁のエアコンは、妙に弱々しい点滅をくり返していた。送風はしているようで、冷え方が追いついていない。室内がほんのりあたたかい理由を考えるより先に、園長の耳へ、窓の外からごく低い震えみたいな音が届いた。
歌だ、と気づくまでに少し時間がかかった。
人間の喉で歌う子守歌と違って、旋律より先に空気の揺れがくる。低くて大きいのに、不思議と痛くはない。胸の奥へ落ちてくるような音で、子どもの身体を揺すらずに重くする。園長は窓辺へ近づき、カーテンの隙間から園庭をそっと覗いた。
大木の陰に、青みがかった鱗の竜が伏せていた。
翼はきれいに畳まれ、長い尾は自分の身体へ巻き込むように寄せられている。姿だけ見れば大きい。大きいが、見せびらかすような大きさではなく、なるべく園庭の輪郭へ溶け込もうとしているのが分かる。目は半分閉じられ、喉の奥から流れてくる低音だけが規則的に続いている。その声が風と一緒に窓の隙間を抜けるたび、保育室の子どもたちはふっと呼吸を深くした。
園長は、助かっている現実と、通報すべき現実が一枚に重なって見える感覚を持て余しながら、結局ひまわり市役所へ電話を入れた。説明の途中で自分でも何を言っているのか分からなくなったが、子育て支援課の職員は途中から変に言い直しを求めなかった。たぶん、異界へ転移してからのこの町では、「何を言っているのか分からない」を正面から否定しても、あまり得にならないと皆もう知っているのだろう。
「お昼寝の時間なんです。全員、寝ています。ドラゴンが、園庭で……その、歌っています。空調が少しだめになりました。子どもたちは怖がっていません。でも、勝手に来ています」
自分でも、どこを一番先に言えばいいのか判断できていなかった。
◆午前・ひまわり市役所 異世界経済部(助かる現象ほど、制度の外から来ると扱いが難しい)
異世界経済部の朝は、だいたい書類の重みで始まる。紙そのものは薄いのに、中身が重い。通知、照会、相談、お願い、そして時々、読む前から嫌な気配しかしない緊急連絡。勇輝は机の端へ積み上がった紙束を見て、今日もまた普通の仕事と変な仕事が混ざっているなと半分だけ諦めていた。その諦めが形になる前に、子育て支援課の職員が走り込んできた。
「主任、至急です。保育園が……」
声が裏返っている。書類の山を前にした静かな疲労と違って、これは現場にしか出ない焦り方だ。
「落ち着いて。保育園で何が起きた」
「寝かしつけが……寝かしつけが、すごくうまくいっていて……でも、うまくいきすぎていて……」
「いいのか悪いのか、どっちなんだ」
「寝ます。全員寝ます。あり得ないくらい寝ます。それで園長先生が怖くなって電話してきました」
勇輝が眉を寄せたところへ、美月がさっと身を乗り出した。こういう意味不明な案件に対する食いつきだけは本当に早い。
「それ、寝かしつけ担当が強すぎるやつですね。何が原因なんですか」
子育て支援課の職員は、そこで一度だけ目を閉じた。言葉へすると、現実味が増すからだろう。
「ドラゴンです」
「……担当が?」
「はい。園庭で、ドラゴンが、子守歌のようなものを歌っていて……」
美月の目が一瞬だけ輝いたので、勇輝は先に釘を刺した。
「撮りに行くなよ」
「まだ何も言ってないです」
「言う前の顔をしてた」
加奈が差し入れのクッキーを机へ置きながら、事情を聞いて小さく首を傾げた。
「勝手に来たの?」
「誰も呼んでないそうです。園児の泣き声が森まで届いて、気になって来た、と」
「理由だけ聞くと妙に優しいね」
「優しいのと、園へ無断で入っていいかは別です」
市長が通りがかりに足を止め、その一言でだいたいの状況を理解したらしかった。
「なるほど。ドラゴンが寝かしつけ支援か。現場が助かるなら、いきなり否定しなくていいんじゃないか」
「市長、助かってるのは本当だと思います。でも、勝手に園へ入るのは別問題です。子ども相手の施設なんだから、安全確認と保護者説明と、最低限の線引きは必要です」
「その通りだ。だから見に行こう」
結局、止める前にも続ける前にも、現場を見ないと話にならない。勇輝は手帳と端末を持ち、加奈、美月、市長、それに子育て支援課の担当を連れて庁舎を出た。歩いて十分の距離なのに、そのあいだじゅう、美月は「低音の子守歌って気になります」「でも撮りませんから安心してください」と、安心できない種類のことばかり言っていた。
◆午前・ひまわり保育園 園庭(大きいものが静かにしている時ほど、周りが緊張する)
保育園へ着くと、最初に目へ入ったのは、園庭の隅で丸まるように伏せた青鱗の竜だった。大きい。けれど、わざと小さく見せようとしている気配がある。翼の端を遊具へ触れさせないよう引き込み、尾の先も砂場の囲いへかからないよう自分の足元へ巻きつけている。身体の大きさそのものより、その気遣いの細かさがまず目についた。
園長は泣きそうな顔のまま、それでも園長らしく一歩前へ出てきた。
「来てくださって助かりました。通報案件なのか、協議案件なのか、途中から判断がつかなくなってしまって」
「その感覚は正しいと思います」
勇輝は率直に答えた。
「子どもたちは本当に寝てるんですね」
「はい。こんなに全員が一度に深く寝るのは、私も初めて見ました。怖がっている感じはありません。泣いてもいません。ただ、空調が……」
園長に案内されて保育室を覗くと、たしかに全員が眠っていた。眠りの深さまで揃っているのが、むしろ異様だ。うつ伏せになりかける子もおらず、寝返りで布団から外れる子もいない。保育士たちは逆に困惑で目が冴えていて、寝かしつけが不要になって余った緊張の置き場に困っているように見えた。
「こんなに静かな午睡、助かるは助かるんです」
主任保育士の奈々子が、声を抑えたまま言う。
「でも、助かりすぎると逆に心配になるんですよね。毎日見ているからこそ、今日は効き方が大きすぎるって分かるというか……」
「その感覚はすごく大事です」
勇輝は頷いた。
「現場が『助かるけど、これは確認したい』と思ったなら、その時点で行政案件です」
加奈が子どもたちの寝顔を見ながら、小さく息をついた。
「安心して眠ってるのは本当だね。怖くて気絶した感じじゃない。むしろ、抱っこでしか寝ない子も気持ちよさそう」
「はい。そこがまた難しくて……」
奈々子先生が苦笑する。
「保育士としては、正直に言うと救われるんです。お昼寝の時間って、寝つく子と寝つかない子がいて、背中をさすりながら隣の子が起きないよう気を配って、ようやく一人寝たと思ったら別の子が起きて、ということが毎日続くので。全員がこんなふうにすっと眠ってくれると、書類も連絡帳も、午後の準備も回ります。だから『困ります』だけでは言えない」
その本音に、子育て支援課の職員がしみじみ頷いた。保育現場の負担は、役所の資料では見えづらい。こうして顔つきの中に出る。
勇輝はエアコンの表示を確認した。運転ランプは点いているが、内部エラーを示す点滅も混じっている。室温は危険域ではないものの、午睡の部屋としてはやや高めで、何より機械の調子が明らかに不安定だ。
「温風ですか」
「はい……」
園長は心底申し訳なさそうに言った。
「最初、子どもがどうしても泣き止まなくて。午前中ずっと不安定な子がいて、つられて別の子も泣いてしまって、保育室全体が少し落ち着かなかったんです。そこへ、園庭の向こうから大きな影が来て……。正直、最初は固まりました。でも、その竜が窓の外へ伏せて、低い声で歌うみたいに鳴き始めたら、子どもたちの呼吸がだんだん落ち着いてきて」
「そこまでは、まだ奇跡っぽい話で済むんですが」
勇輝が壁のエアコンを見る。
「そのあと息を吐いた」
「火ではないんです。本当に、あったかい風というか、布団の中を外から撫でるみたいな、やわらかい熱で……。それが気持ちよかったのか、みんなすっと眠って」
「で、機械が負けた」
「はい……」
市長が感心したように顎へ手を当てた。
「保温と低音。理屈だけ見れば、寝かしつけとしてはかなり筋がいいな」
「筋がよくても設備が死にます」
勇輝が返すと、美月がすかさず端末へ打ち込んだ。
「『温風禁止』は太字ですね」
「まだ制度化してないから先にまとめるな」
とはいえ、美月の反応は間違っていない。続けるにしても止めるにしても、どこが駄目でどこが効いたかを切り分けないと話にならない。
勇輝は園庭へ出て、竜と正面から向き合った。竜は人が近づいても威嚇せず、ただゆっくりとまぶたを上げた。目の色は暗い琥珀で、思ったよりずっと落ち着いている。野生の獣の警戒というより、「ここで騒ぐつもりはないが、用件は聞く」という顔だ。
「まず確認します。あなたは、なぜ保育園へ来た」
竜は一度だけ首を傾け、それから低い声で答えた。
『小さいものの泣きが、森まで届いた。群れからはぐれた子の声に似ていた』
「それで、来た」
『苦しむ声は長く聞きたくない。眠れば、落ち着く』
目的が妙にまっすぐで、かえって言葉に困る。悪意がない。ないが、ないから許可が要らないわけでもない。
加奈が一歩前へ出て、勇輝の言葉の角を少し削ってくれた。
「来てくれたこと自体は、たぶん助かったんだと思うよ。園の先生たちも、すごく救われたって顔をしてた。でもね、保育園って、子どもの安全のために決まりがたくさんある場所なの。大きいからだめ、とか、異界の存在だからだめ、とか、そういう雑な話じゃなくて、来るなら来るで守ってほしい線がある」
竜は加奈のほうを見て、しばらく考えるように沈黙した。
『線』
「そう。たとえば、勝手に園庭へ入らない。息を吐いて機械を壊さない。子どもへ触れない。来る前に連絡する。そういう線」
『……踏まなければよいか』
「踏まないのは最低条件です」
勇輝がすぐに言うと、竜は少し不満そうに鼻を鳴らした。鼻息だけで園庭の砂がかすかに動く。これだけでも十分に規格外だ。
市長がそこで、妙に落ち着いた声で会話へ入った。
「協力する意志があるなら、市として役割を考えることはできる。ただし、無断は駄目だ。子ども相手の施設だからな」
『役割』
「そう。好きに出入りするのではなく、決まった時間、決まった位置、決まったやり方で手伝う。そうすれば園も助かるし、おまえも無用に怖がられずに済む」
竜はその言い方を嫌がらなかった。むしろ、役割という言葉には少し反応がよかった。異界の存在でも、何かの役目を持つこと自体は嫌いではないのかもしれない。
『我は、卵の眠りを守ったことがある』
竜は不意にそう言った。
『巣に風が入りすぎる夜、火を使えぬ時は、歌って眠らせる。低い音は、殻の内まで届く。小さいものは、それで安心する』
加奈が目を細めた。
「だから子守歌みたいだったんだ」
『子守歌と呼ぶなら、それでよい』
美月が小声で、「ちょっといい話っぽい」と漏らしたので、勇輝は肘で制した。
「いい話で終わるなら役所はいらない」
そう言いながらも、話の芯は見えてきた。竜にとっては本能に近い行動で、園にとっては現実に助かった。ただし、そのままでは設備と安全線を超える。ならば必要なのは、禁止か礼賛ではなく調整だ。
◆午後・保育室前の試験設計(助かるものを、助かるまま町の手順へ入れるには、だいたい一回細かくなる)
園長室を借りて、急ごしらえの協議が始まった。園長、主任保育士、子育て支援課、異世界経済部、市長、加奈、美月、そして窓の外の園庭に伏せたままの竜。紙の上に書き出してみると、問題は思ったより明確だった。
第一に、園児への直接接触は不可。爪も鱗も尾も、本人に悪気がなくても危険だ。
第二に、寝かしつけ効果は高いが、温風による設備負荷と室温上昇は受け入れられない。
第三に、無断来園は継続できない。保護者への説明も必要だし、園の一日の流れに合わせる必要がある。
第四に、効果が強すぎるため、時間と音量の調整が要る。よく効く、で終わらせると「効きすぎ」がすぐ別の問題になる。
勇輝はその場で整理しながら言った。
「続けるかどうかを今すぐ決める必要はないです。ただ、現場として一回試したい気持ちは正直あると思う。だからこそ、条件付きの試験運用にします。正式導入でも、善意の放置でもない、その中間のやり方で」
園長は少し迷ったあと、本音を口にした。
「……続けたいです。少なくとも、可能性としては。今日みたいに一斉に眠るのが毎回でなくても、寝つきが悪い日や、どうしても情緒がざわつく日に、少しだけ助けてもらえるなら、現場は本当に救われます」
主任保育士も小さく頷いた。
「子どもたちが怖がっていないことも大きいです。むしろ、窓の外に大きなものがいて守ってくれている感じを、安心に変えている子もいました。ただ、それを続けるには、私たちも保護者も、何が安全で何が駄目かをはっきり知っていたい」
「そこですね」
勇輝はすぐに拾った。
「じゃあ、今日この場で仮ルールを作ります。まず、竜は園庭の指定位置にしか入らない。建物の中へは来ない。子どもへ直接触れない。声は窓越しのみ。息は吐かない。熱は絶対に加えない」
窓の外の竜が、不満そうに尾を一度だけ動かした。
『息を使わぬと、眠りは浅い』
「機械が壊れるよりましです」
勇輝が返すと、竜は少し考えてから別案を出した。
『ならば、歌の深さを落とす。風を混ぜぬ。声だけで沈める』
「それでどのくらい効きますか」
『半刻は要らぬ。十五分あれば十分だ』
数字が出たのは大きかった。感覚だけでなく、運用へ落とせる単位になる。
美月が端末へものすごい速さで打ち込む。
「十五分限定、音量制限、窓越し、温風禁止、来園前連絡……」
「あと保護者説明」
加奈が添えた。
「保育園って、親が『ここなら預けて大丈夫』って思えることが前提だから。たとえ助かるやり方でも、あとから『聞いてない』になると、一気に不安になる」
園長が深く頷く。
「その通りです。私たちも、保護者へ説明できない形では受け入れられません」
市長はそこで、役所らしく線を引いた。
「なら、今日の午後は試験運用にとどめる。対象は一クラス。保護者へは『異界協力による午睡支援の安全確認を実施』と連絡を入れる。明日以降の継続は、今日の結果と設備点検、それから保護者の反応を見て決める」
「『ドラゴンさんが寝かしつけます』って書かないんですね」
美月が少しだけ残念そうに言うので、勇輝は即答した。
「書きません。事実でも、その書き方は強すぎる」
「強すぎる言葉はだめ、ですね」
「この町、最近そればっかりだな……」
加奈が笑ったが、笑い方はやわらかかった。
「でも、たしかにそう。ドラゴンって言葉だけで、親はまず大きさと火を想像するもん。だから先に『園庭の外から、低い声の支援をします』みたいな説明にしたほうが安心かもね」
「それでいきます」
勇輝はメモを取りながら、園長へ確認した。
「試験はどのクラスが現実的です」
「年少の一組がいいかもしれません。今日はその子たちが一番泣き疲れていて、効果も見えやすい。ただ、効きすぎて起きなくなるのも困るので、途中で切れるよう保育士が合図を出します」
窓の外の竜が、その話を聞いて低く言った。
『合図は分かる。二度指を打てば止める』
「指を打つ?」
「手拍子のことだと思います」
加奈が通訳のように言い換えた。
「じゃあ先生たち、終了の時は窓のそばで手を二回。始める前は一回、でどうですか」
奈々子先生がうなずいた。
「それなら現場でも分かりやすいです」
ルールが少しずつ形になる。こういう瞬間、役所の仕事は変に地味で、だからこそ助かる。誰かの善意をそのまま持ち込むのではなく、合図、位置、時間、説明、責任の所在まで一つずつ置いていく。面倒だが、面倒を飛ばすと町はすぐ伝説になる。
◆午後・試験運用(効くかどうかではなく、どこまでなら安全に効かせられるか)
午後の試験運用は、年少一組の保育室で行われた。園児は十二人。昼食後で少し眠気が来ている子もいれば、まだ身体を動かし足りなさそうに布団の上で転がる子もいる。ふだんならこの時間に、先生が一人ずつ背中をさすり、絵本を読み、ようやく半分眠れば上出来、という流れになるらしい。
窓の外では、竜が大木の影へさらに身体を寄せていた。近くで見ればやはり大きい。だが、窓の高さに顔を合わせず、視界へ威圧的に入らないよう位置を調整しているのが分かる。あの気遣いがなければ、今日の話は始まる前に終わっていただろう。
室内のエアコンは、応急で別室の移動式冷風機を入れて対応していた。完全修理は夕方以降になるが、今日の試験に必要な冷えだけは確保する。子ども相手の現場では、「様子を見ながら」がすぐ危険に繋がることがあるから、設備側の手当ても同時にしておく必要がある。
園長と市長は後方で見守り、勇輝は窓際の位置を確認し、美月は「今日は記録用だけ」と自分に何度も言い聞かせながら端末を構えていた。加奈は年少クラスの担任の隣へしゃがみ、子どもたちの顔色を見ている。
「始めます」
奈々子先生が小さく言い、窓辺で一度だけ手を打った。
次の瞬間、竜の喉の奥から、ほとんど聞こえないくらい低い音が落ちてきた。
歌というより、揺れだ。旋律らしきものはたしかにあるが、人間の耳が先に追う種類の音ではない。床板がかすかに共鳴し、布団の下の空気がふわりと均される。加奈が「地面の中から子守歌が来るみたい」と小声で言い、勇輝はそれを妙に正確な表現だと思った。
子どもたちの反応は早かった。最初に、布団の端でまだ喋っていた男の子が口を閉じ、そのまま自分の手を見ていたのをやめる。次に、寝返りばかり打っていた女の子が枕へ頬を乗せる。先生に背中を撫でられなくても、自分から身体の力を抜いていく。効いている。効いているが、昼前ほどの過剰さではない。温風を抜き、声も浅くしたぶん、眠り方が自然になっていた。
加奈がそっと囁いた。
「いい感じだね。落ちていくけど、落とされてる感じじゃない」
「そこ大事です」
勇輝も同じ印象を持った。強制的に眠らせるなら、それは保育ではなく別の何かになる。子ども自身の呼吸がちゃんと眠りへ寄っているなら、まだ「支援」と呼べる範囲にいる。
だが、効くものはだいたい、効くからこそ一段先で問題を起こす。
窓際にいた一人の子が、眠りかけながらも竜のほうへ手を伸ばしたのだ。怖がってではない。好きなぬいぐるみでも見るみたいな、無防備な手つきだった。
担任がすぐその手を包み、布団の中へ戻す。竜もその動きに気づいたのか、すぐ顔をさらに後ろへ引いた。意思疎通がある。あるからなおさら、ここを曖昧にしてはいけない。
勇輝はその場で一つ書き足した。
『園児からの接触も不可。距離維持のため窓際布団配置変更』
十分ほどで、十二人全員の呼吸が整った。昼前のような「全員同時に爆睡」という怖さはない。深さに個人差があり、眠りへ入る順番も自然で、そのぶん現場が扱いやすい。
奈々子先生が、半ば信じられない顔で部屋を見回した。
「これなら……これなら、本当に助かります」
その声には、楽をしたいというより、毎日の消耗が一つ減るかもしれないという切実さが混じっていた。保育士の負担軽減という言葉は役所の資料にも載るが、現場で聞くと重さが違う。十五分縮まるだけで、その十五分ぶん連絡帳が書ける、片づけが進む、午後の制作準備ができる、呼吸が整う。そういう具体がある。
予定の十五分が近づき、窓辺で奈々子先生が手を二回打った。竜の低音はそこで、驚くほど素直に止んだ。止まったあとも子どもたちはすぐ起き上がらず、そのまま眠りを続ける。これは本当に大きい。効き終わったあとに反動が来ないのなら、運用の余地はずいぶん増える。
市長が、ほとんど感心を隠さず言った。
「空調は壊れない。園児は眠る。保育士の負担は下がる。条件さえ整えば、相当有効だな」
「だからこそ制度にしないと危ないんです」
勇輝が返すと、加奈もすぐ頷いた。
「うん。今日みたいにうまくいったからって、じゃあ明日から毎日勝手に来てください、だと絶対に崩れる。効くものほど、線を引いとかないと」
美月が記録を見ながら言う。
「親御さんへの説明も、この結果があれば落ち着いて話せそうです。『大きな存在が来ました』じゃなくて、『外から低音支援を行い、十五分以内で睡眠導入が確認できました。直接接触はありません』って言えます」
「日本語が一気に役所になったな」
「そこは得意です」
窓の外の竜は、まだ木陰に伏せたままだった。誇らしげに胸を張るでもなく、ただ少し目を細めている。小さいものが眠るのを見るのが好きなのだろう。その感情自体は悪くない。問題は、悪くない感情ほど、手順なしで町へ入れると危ないことだ。
◆午後・保護者説明の前(助かったことと、不安があることは同時に成立する)
試験運用が終わると、園では急遽、保護者向けの説明文をまとめることになった。お迎えの時間になれば、子どもから「今日はドラゴンのお歌で寝た」と真っすぐな顔で報告が飛ぶだろう。その前に、園と市から筋道の通った説明を出しておく必要がある。
職員室の机へ向かった園長は、さっきよりかなり落ち着いていたが、それでもペンを持つ手つきは慎重だった。
「何をどこまで書くかが難しいですね。隠しすぎると不誠実ですし、書きすぎると余計な不安を招く」
「まず、事実だけを並べましょう」
勇輝は文案を整えた。
「本日午睡時に、異界存在による低音支援の安全確認を行ったこと。園児への直接接触はなかったこと。設備不具合が一件あり、原因は温風による可能性が高いため、今後は温風を禁止し、施設管理課による点検を行うこと。継続の可否は保護者説明のあとに判断すること」
「『ドラゴン』は書きますか」
園長が訊く。
少し考えてから、勇輝は頷いた。
「書きましょう。ただし、先に『異界存在』と書いて、そのあと括弧で具体名を入れる形にします。名前だけ先に立つと、大きさと火の印象が先走る」
「なるほど」
加奈はその横で、保護者の側から気になる点を洗い出していた。
「たぶん質問は三つかな。怖くないのか、危なくないのか、なんで勝手に来たのか。あと、続けるならいつ誰が判断するのかもいる」
「その四つですね」
美月が素早くまとめる。
「じゃあ説明会では、子どもの反応、安全距離、今後のルール、園と市の責任体制、この順でいきます。『神秘的でした』みたいな言い回しは避けます」
「避けてください。本当に」
夕方前の短い説明会には、想像していたより多くの保護者が集まった。仕事を抜けられなかった家庭には、文書と個別連絡で対応する。会議室の椅子に座る親たちの顔には、不安だけではなく興味も混じっていた。ひまわり市は、こういう「普通ならありえないこと」がある程度日常になっている町だ。だからこそ、最初から怒鳴る人は少ない。代わりに、「具体的にどう管理するのか」を知りたがる。
園長が経緯を説明し、勇輝が今日の試験内容と今後の条件を整理した。最初に質問したのは、やはり年少の子を持つ母親だった。
「子どもは本当に怖がっていないんですか」
「はい」
担任がすぐ答える。
「驚きはありましたが、泣いたり、逃げたりはありませんでした。むしろ音が入ったあとに落ち着く子が多く、今日は眠りへの移行が自然でした。ただし、近くへ寄せたり触れさせたりはしていません」
別の父親は、もっと現実的なところを訊いた。
「安全距離はどれくらいですか。もし急に動いたらどうなるんです」
「そこは市と園で、位置を固定します」
勇輝が図を見せる。
「園庭の大木の裏、窓から一定距離を取った地点を指定位置にします。来園時は必ず事前連絡、園長または主任保育士の許可がある時のみ。園舎内へは入れません。保育中は職員が常時監視し、園児との直接接触は禁止です。違反があればその時点で協力停止とします」
その明確さが効いたのか、会場の空気が少しだけ柔らいだ。好意的な親もいれば慎重な親もいる。だが、「どうせ何となく続けるんでしょう」という不信だけは避けられそうだった。
最後に、一番後ろに座っていた保護者がぽつりと言った。
「助かるなら、私は反対ではないです。うちの子、お昼寝がすごく苦手で、家でも夕方に限界が来てしまうので……。ただ、助かるから何でもいい、にはしてほしくないです」
その言葉には、多くの親が静かに頷いた。
「それが今日の一番大事な線だと思います」
勇輝は答えた。
「助かることと、何でもいいことは違う。だから、今ルールを作っています。続けるとしても、園の都合だけではなく、保護者にも分かる形で続けます」
説明会は、思ったより穏やかに終わった。全会一致の賛成ではない。むしろそれでよかった。異論や慎重さが表に出た上で、条件付きの理解が増えるほうが、後からずっと強い。
◆夕方・庁内協議(役に立つ存在を「役に立つまま」置いておくには、呼び方から整えないとすぐ伝説になる)
市役所へ戻ると、その日のうちに庁内協議まで開かれた。子育て支援課、施設管理、法務確認、教育委員会からも参考参加が入り、異世界経済部が事務局を引き受ける。机の上には、また新しい案件名が一つ増えていた。
『異界協力人材による午睡支援の暫定運用について』
美月がその表題を見て、ちょっとだけ物足りなさそうな顔をした。
「ずいぶん落ち着いたタイトルにしましたね」
「ここで『ドラゴン寝かしつけ担当』とか書いたら、一瞬で庁内回覧が伝説になります」
「もう十分伝説では」
「文書だけは抵抗する」
施設管理課からは、エアコンの簡易診断結果が届いていた。やはり高温の外気が一気に吹き込んだことで内部センサーが狂い、保護停止に近い状態へ入っていたらしい。完全な故障ではないが、「竜の温風は空調へ負荷」と書かれた点検メモの字面がじわじわ面白くて困る。
勇輝はそこをまず潰した。
「温風は禁止で確定です。もし冬場に『あたためにも使える』みたいな話が出ても、施設側が先に止めてください」
施設管理の職員が真顔で頷く。
「止めます。設備は善意で壊れるのが一番困るので」
子育て支援課からは、保育士負担の簡易集計も出ていた。寝かしつけに要した時間、職員の手数、午睡後の記録作成の遅れ、それらが今日だけは明らかに軽くなっている。現場負担の軽減は、本当にあった。
「だからこそ、完全禁止にはしにくい」
勇輝は言う。
「禁止すれば分かりやすいけど、現場が救われた事実まで消える。今回は、救われたところを残しつつ、危ないところだけ潰す方向で進めたい」
市長もそれに賛成した。
「名称も工夫しよう。『ドラゴン保育』のような言い方はしない。保育士の仕事を置き換えるわけではなく、あくまで午睡時の補助だ」
「そこは大事です」
加奈も頷いた。
「先生たちも、助かった一方で『自分たちの仕事が別の何かに置き換わるのかな』って少し気にしてた。だから、補助なんだって線はちゃんと引いたほうがいい。寝かせるのは竜でも、その前後の安心を作ってるのは先生たちだもの」
その指摘は大きかった。技術的に優れた補助が入ると、現場は助かる反面、「自分たちの役目が軽く見られるのでは」という不安が生まれる。学校も園も、異界の協力が入るたびそこが揺れる。
勇輝は運用案へ書き足した。
「保育士による事前導入と終了確認を必須。竜は合図なしに開始しない、合図があれば即時停止。午睡支援は保育士業務の代替ではなく補助と位置付ける」
美月が読み上げる。
「『補助』って一言、効きますね。安心する人多そう」
「効かないと困る」
その後も議論は細かく続いた。来園前の連絡方法はどうするか。専用回線までは不要だが、子育て支援課を経由した当日連絡は必要。体調不良や避難訓練の日は中止。園ごとに環境が違うから、すぐ全園展開はしない。保護者の不同意があるクラスでは実施しない。音の記録は取るが、動画拡散は禁止。ひとつずつ聞くと地味だが、その地味さの積み重ねでしか、この町の生活は異界と並べない。
最後に、最も重要で、最も面倒な項目が残った。
「本人の同意です」
勇輝が言うと、会議室の何人かが一瞬だけ黙った。
「本人って、ドラゴンですか」
施設管理の職員が確認する。
「そうです。こちらが勝手に『協力人材』扱いするのは違う。あくまで本人が『来る』『来ない』を選べる前提で組みます。役割はある。でも拘束ではない」
市長が静かに頷く。
「それは必要だな。助かったからといって、町の便利な設備みたいに扱うのは違う」
その言葉を聞いて、勇輝は少しだけほっとした。市長がそこを外さないなら、制度の線もまだ大丈夫だ。
◆夕方・保育園の大木の下(役割を頼むなら、頼み方にも礼がいる)
庁内協議を終えたあと、勇輝たちはもう一度だけ保育園へ戻った。竜はまだ大木の陰にいたが、今度は完全に休んでいるというより、夕方の園庭を見守るような姿勢だった。お迎えの時間を過ぎた園庭にはもう子どもの声はなく、代わりに風で揺れる葉の音だけが残っている。
勇輝は少し距離を取って立ち、率直に話した。
「今日のことで、一つ頼みたいことがある。勝手に来ないでほしい、というのはまず前提として。その上で、もし今後も手伝ってくれる気があるなら、町としてきちんと条件を決めた上でお願いしたい」
竜は目を開けた。夕方の光が鱗の端に乗り、昼よりも少しやわらかく見える。
『頼む、という形になるのか』
「なります。呼びつけるんじゃない。お願いする。断る自由もある。その代わり、やるなら決まりは守ってもらう」
『決まりとは』
「窓の外からだけ。火も温風もなし。合図がある時だけ。子どもへ触れない。来る日は事前に連絡。そういう線です」
竜は少し考え込んだ。長くて静かな考え方をする存在らしく、返事までの沈黙も妙に大きい。その間、加奈がそっと前へ出た。
「もし嫌だったら、断って大丈夫だよ。今日助かったのは本当。でも、それで『じゃあ明日から毎日来て』って雑に決めるのは違うと思うから」
竜は加奈を見て、それから保育室の窓へ視線を移した。中にはもう誰もいない。布団も片づけられて、昼間の静けさが残り香みたいに薄く漂っているだけだ。
『小さいものが安心して眠る場所なら、我は嫌わぬ』
ようやくそう言った。
『だが、火を使うな、風を使うな、近づくな、ならば、我ができることは声だけになる』
「それで十分効いてました」
勇輝が答えると、竜はわずかに胸を張った。
『声だけでも、守りになるならよい』
「守り、ですか」
『群れが眠る時、外の大きいものが起きていると知れるだけで、内の小さいものは落ち着く。歌は、その印だ』
加奈が小さく微笑む。
「それ、たぶん園でも同じだよ。先生がそばにいるって分かるだけで寝られる子、たくさんいるから」
竜はその言葉へ、満足そうに目を細めた。人間の仕組みと、自分の知っている群れの仕組みが重なったのが嬉しいのかもしれない。
市長がそこで最後の確認を入れた。
「では、町の暫定協力として記録する。名前はどう記すのがよい」
竜はしばらく黙ってから言った。
『ラギアス』
初めて名を聞いた。名があると、役割は少しだけ現実味を持つ。勇輝は手帳に書き込む。
『異界協力人材 ラギアス
午睡支援補助
窓越し・低音限定・温風禁止
事前連絡・保護者説明・直接接触禁止』
書いていて、自分が何の職種なのか少し分からなくなる。だが、この町ではそれを言い始めるとたいてい仕事が増えるので、勇輝は黙って書き切った。
◆夜・市役所へ戻る道(伝説になりそうなことほど、先に手順へしてしまう)
保育園からの帰り道、夕方の町はいつもより少し静かに感じられた。たぶん、保育園の「静かすぎる午睡」を見たあとだからだろう。商店街の前では夕飯の買い物をする人が足を止め、喫茶ひまわりの窓からはあたたかな灯りが漏れている。異界へ転移したとはいえ、暮らしの輪郭そのものは案外変わらない。変わらない中へ、時々、ドラゴンが子守歌を歌う、みたいなことが差し込んでくるだけで。
市長が並んで歩きながら、ぽつりと言った。
「ドラゴンが子育て支援に入る町、という言い方をするとずいぶん派手だが、やっていることは案外地味だな」
「低音で十五分、窓の外から。言い換えると、本当に地味です」
「だが現場は救われた」
「そこが一番大きいです」
加奈が頷く。
「保育の現場って、毎日の小さいしんどさの積み重ねだからね。そこへ、ちょっと助かる仕組みが入るなら、ちゃんと助かる。でも、助かるからって何でも通していいわけじゃない。その間を作るのが、たぶん役所の仕事なんだと思う」
その言葉が、今日一日のまとめとしてかなり正確だった。役所がやっているのは、大きな奇跡を起こすことではない。効きすぎるものを少し弱め、危ないものに線を引き、助かる部分だけを残すことだ。結界でも、水道でも、給食でも、今日のドラゴンでも、結局そこへ戻ってくる。
美月は最後まで少しだけ名残惜しそうだった。
「でもやっぱり、『ドラゴン保育士資格』って言葉、ちょっとだけ惜しいですね」
「惜しくても作らない」
「『午睡支援協力竜』は?」
「役所文としてはやや正しいのが嫌だな」
「じゃあ庁内限定で」
「それもだめ」
加奈が笑いをこぼした。
「でも、今日の園は本当に救われたよ。園長先生、最後の顔が全然違ってたもの」
「……そうだな」
勇輝は素直に頷いた。朝の園長は、通報と相談の間で固まっていた。昼の園長は、助かっているのに不安を消せずにいた。夕方の園長は、ようやく「このまま全部を怖がらなくていいかもしれない」と思える顔をしていた。その変化は大きい。
市長が歩きながら、もう一つだけ言った。
「ただし、勝手に来るのだけは絶対にやめさせよう」
「そこは完全に同意です」
「善意の無断来園が一番処理に困る」
「市長、その言い方がもう制度設計側なんですよ」
「今日は制度設計の一日だったからな」
たしかにそのとおりだった。役所は今日もまた一枚、マニュアルを増やした。異界協力人材、午睡支援、窓越し、音量制限、温風禁止、保護者説明。紙へすると可笑しい。可笑しいが、その紙があるだけで、明日また同じことが起きた時の町は少しだけ落ち着く。
勇輝は歩きながら肩の力を抜いた。疲れている。だが、嫌な疲れ方ではなかった。現場の助かった顔を見て、危ない線も一応引けた日の疲れは、まだましだ。
「この町、油断するとすぐ伝説になるな」
思わずこぼすと、加奈が横で笑った。
「だから先に手順にしちゃうんでしょう。伝説になる前に、『窓越しで十五分』って書いとくの」
「夢がないな」
「でも生活は守れる」
その返しが妙に強くて、勇輝は少しだけ笑った。夢がないようで、たぶんそれが一番大事なのだろう。異界の大きなものが町へやってきても、子どもたちが安心して昼寝できて、先生たちが午後の仕事へ戻れて、親が説明を聞いて納得できる。その地味な形へ着地させることができれば、ドラゴンの子守歌だって、ただの伝説では終わらない。
役所の灯りが見えてきた。明日になればまた別の紙が積まれ、別の相談が飛び込んでくるのだろう。その中に「ラギアス、事前連絡あり」と書かれたメモが混じる日が来ても、もう少しは驚かずに済む。
町が生きている限り、マニュアルは増える。増えるたび、日常の守り方も少しずつ増える。そう考えるしかないし、今日はそれでよかった。
ドラゴンが子どもを眠らせる町になっても、保育園は保育園のまま終わる。ひまわり市は、今日もそういうふうに一日を片づけた。




