第34話「温泉まんじゅう戦争勃発!」
~甘くて熱い、異界商戦開幕!~
■朝・温泉街メインストリート
湯けむりと甘い匂いが混じりあう“戦場”
温泉ブームに沸くひまわり市。
開湯したばかりの魔王温泉の影響で、温泉街がかつてない賑わいを見せていた。
店先からは蒸気が立ち上り、
観光客たちが「おいしそう!」と声を上げながら歩いていく。
「どのお店もお客さんでいっぱいですね!」
加奈が満面の笑みで歩く。
「ここまでは順調だ。問題は――」
勇輝が眉をひそめた、その瞬間。
ボフッ。
商店街の奥から黒煙が立ち上がった。
「……いや、やっぱり問題発生だな」
■午前・商店街特設ブース
魔界の刺客、まんじゅう界に降臨
黒煙の先にあったのは、巨大な垂れ幕を掲げたブース。
『魔界銘菓〈血のまんじゅう〉新発売!』
湯気とともに黒く、どこか艶めいた“真紅のまんじゅう”が並んでいた。
魔界商人ロッソが胸を張る。
「魔界の深紅糖を使った至高の甘味! 一口で魂が沸騰する!」
観光客が試食し、目をひんむいた。
「うわっ……辛い!? いや甘い!? 何この中毒性!?」
その様子を見ていた、地元老舗〈ひまわりまんじゅう本舗〉三代目の古田が震え上がる。
「うちの代々続く“温泉まんじゅう”が負けてたまるか!」
こうして――
“温泉まんじゅう戦争”が勃発した。
■昼・庁舎会議室
緊急商戦対策会議、議題は「まんじゅう」
庁舎の会議室には、各種サンプルまんじゅうが山積み。
甘い香りの中で、異界経済部の緊急会議が開かれた。
「……観光課、被害状況を」
勇輝が資料を手に取る。
「魔界銘菓がSNSで大バズり。“ひまわりまんじゅう”の売上が半減です!」
柳田(観光課)が涙目で報告した。
「でも、魔界の材料って安全なんですか?」
加奈が不安げに尋ねる。
ミーネ(錬金士)はにっこりと笑った。
「一応、人体には無害ですが……摂りすぎると“少しだけ翼が生える”程度ですわ♡」
「“少しだけ”じゃねぇだろ!」
■午後・温泉街商戦
湯けむりと蒸気、そして怒号
温泉街は、もはや菓子フェスを通り越して戦場の様相だった。
古田は“秘伝温泉蒸し”で勝負。
魔界商人ロッソは“魔力蒸気機関”で倍速生産。
湯気と香りが混ざり、トングを持った客たちが右往左往している。
ロッソ(拡声器)
「魂を燃やすなら“血のまんじゅう”だぁぁ!」
古田(負けじと)
「心を癒やすなら“ひまわりまんじゅう”だぁぁ!」
加奈は湯気の中で額に手を当てた。
「これ……完全に戦争ですね」
■夕方・加奈のアイデア
町を救うのは“ゆるキャラ”…!?
商戦の混沌を見て、加奈が勢いよく手を挙げた。
「勇輝さん! 双方が競うだけじゃ、町が分断されます!」
「確かに……何か統一の象徴が必要だな」
加奈は満面の笑みで、どこからともなく大きな袋を引きずり出した。
「なので、作りました。“公式ゆるキャラ”です!」
テーブルにドン、と置かれたのは――
まんじゅう型着ぐるみ『まんまるん』。
湯けむりのようなタオルを頭に巻き、胸には「湯」の文字。
「……なんか微妙に圧が強いな!?」
勇輝が後ずさる。
「でも、“まんじゅうは一つ、町も一つ”って伝わると思います!」
■夜・合同イベント「まんまるフェス」
異界と人間界、甘味の共演
温泉街の中央広場で“まんまるフェス”が開幕。
光る提灯と湯気の中、ステージにまんまるんが登場。
観光客A
「かわいい~! 一緒に写真撮ろう!」
ロッソ
「……人間界、やるではないか」
古田
「負けてられんな。魔界の材料、ちょっと混ぜてみるか」
試作された新商品
“ひまわり血糖まんじゅう”
が意外なヒットを生み、双方の売上は倍増した。
「……結果オーライだな」
勇輝はぽりぽりとまんじゅうを食べながら呟く。
加奈(穏やかに微笑んで)
「“甘い競争”なら、町を壊さずに済みますね」
■ラストシーン
湯けむりの向こうに、まんじゅうの背中
夜の温泉街。
オレンジの灯りと湯気の中を、まんまるんがゆっくり歩いていく。
背中の文字は――
「異界友好・商魂温泉」
勇輝
「町が動くのは、人が熱いからだ。
甘く、苦く、でも温かい。
これが――ひまわり市流の町おこしだ。」
第34話「温泉まんじゅう戦争勃発!」END
次回予告(第35話)
「異界ゆるキャラ選挙!」
魔王推薦の“ゆるキャラ・マオーン様”が電撃出馬!?
市のPRを巡り、まんまるん陣営と大激突!
投票のカギを握るのは――市民の“萌え”と“共感度”!?




