第33話「魔王温泉・爆誕!」
巨大木箱、ついに開封!
朝日が差し込む庁舎前。
異界仕様の巨大木箱が、存在感たっぷりに鎮座していた。
魔界の紋章が刻まれており、箱そのものが微かに熱を帯びている。
勇輝は額に手を当て、深く息をついた。
「……よし、慎重に開けよう。ドラン、準備はいいか?」
ドワーフ技師ドランは巨大工具を抱え、頼もしげに頷く。
「任せとけ! 中身が爆発しても最小限に抑える!」
「爆発前提なのやめて!?」
加奈がタオルを握りしめながら、祈るように呟く。
「……温泉が出てきますように……」
「お前、楽観的すぎるだろ!?」
ドランがレバーをゆっくり引くと――
ボンッ!!!
地鳴りのような轟音と共に、箱から“魔力混じりの蒸気”が噴き出した!
■午前・町中
町が一瞬で“温泉島”に変貌
市役所の敷地はもちろん、
商店街、公園、図書館の裏、さらには市役所地下まで――。
あらゆる場所から温泉が噴き出しはじめた。
「わ、わぁぁ! あっちも! こっちも!」
加奈が指をさすたび、赤紫の湯気が舞い上がる。
「地盤沈下レベルだぞこれぇぇ!」
勇輝も声を上げずにはいられない。
湧き出た湯は、薄い赤紫色。
魔導錬金士ミーネがサンプルをひと舐め(舐めるな!)し、目を輝かせた。
「普通の温泉成分に、魔界由来のエネルギーが混ざってます!」
「健康被害とかは!?」
「むしろ活性化効果がありますわ♡」
「……なんで嬉しそうなんだよお前は!」
■昼・臨時記者会見
世界中(と異界)が注目!
庁舎前には、異界新聞、天界報道、人間界メディアが入り乱れ、
カメラと魔法記録石が一斉に勇輝へ向けられる。
「ひまわり市は“異界温泉都市”に認定されたそうです……」
勇輝はもう諦めたような顔で原稿を持つ。
記者A(天界通信)
「天使も入浴できますか?」
「羽が溶けなければ大丈夫です!」
記者B(魔界放送)
「魔族用の混浴は?」
加奈(顔真っ赤)
「そ、それは条例審議中ですっ!」
報道陣はますますヒートアップしていく。
ひまわり市が世界規模でバズるのは時間の問題だった。
■午後・温泉街建設会議
新名所の名は、“ひまわり魔泉郷”
市長室の壁には、新温泉街のデザイン案が何枚も貼られ、
会議卓には湯気の出るサンプル模型まで置かれている。
「地元旅館組合が再建協力を申し出てくれました!」
加奈が目を輝かせる。
「温泉地再生プロジェクト……まさか異界由来で叶うとはな」
勇輝も感慨深げだ。
「魔力泉を利用すれば、電力と暖房も自給できるぞ!」
ドランが胸を張る。
ミーネ(にっこり)
「でも、使い方を誤ると“温泉魔獣”が発生しますけどね♪」
「何その軽い爆弾発言!」
■夕方・開湯式
虹色の湯気、空には魔界オーロラ
町は一気にお祭りムード。
湯けむりが虹色に輝き、空には魔力が形成するオーロラが広がる。
市民も異界人も、観光客も、
みんな笑顔で新しい温泉に浸かっていた。
「町が、また元気になりましたね……」
加奈は胸に手を当てながら呟く。
「ああ……たとえ魔王の策略でも、
この笑顔は守りたい。」
勇輝は湯気の向こうで、静かに微笑んだ。
■夜・温泉の奥
温泉の正体は“魔界通信用ゲート”
深夜。
勇輝は単独で温泉の源泉へ向かった。
湯の底から、赤い魔石がドクンと脈動している。
「……これ、まさか“魔界通信用コア”か?」
次の瞬間、湯面に魔王デスガルドの映像が映し出される。
「気に入ってもらえたようだな、勇輝殿。
我が温泉は、次元を繋ぐ“門”でもある。」
「やはり狙いは……この町を“魔界港”にする気か!」
デスガルドは不敵に笑う。
「人も魔も、湯に浸かれば同じ。
共に栄える道を、見つけてみせよ――」
映像はふっと消え、湯気だけが残った。
■ラスト・屋上
湯の香りと、月明かりと
屋上に戻ると、加奈がタオルを抱えて駆け寄ってきた。
「勇輝さん、湯冷めしますよ!」
「……ありがとう。
でも、この温泉――まだ何か隠してる気がする。」
「それでも、“みんなが笑顔で入れるお風呂”なら……
私は信じたいです。」
夜風に湯気が漂い、
満月がひまわり市の温泉街をやさしく照らしていた。
第33話「魔王温泉・爆誕!」END
次回予告 第34話
「温泉まんじゅう戦争勃発!」
魔界銘菓 vs 人間界老舗!
温泉街の覇権をかけた“まんじゅう大戦”がついに火蓋を切る!
加奈が提案する“ご当地ゆるキャラ戦略”が――
まさかの形で、戦局を変える!?
甘くて熱い、異界スイーツ戦争、開幕!




