表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星と剣の英雄譚  作者: Kyth
工業都市編
39/48

第38話 『守る為に』


 レーアと別れた後、シロンはカルテトを一周する形で建物の上を駆けていた。


「やはり、表に出てきてはいないか」


 街は、見渡せば常に視界に入るほどドワーフたちで溢れている。

 それでも、ジェルドはおろか付き従っていた二人のドワーフも見当たらず、シロンは溜息を吐く。



「……レーアは無事だろうか」


 溌剌な少女の姿を脳裏に浮かべ、その身を案じる。




 その時、シロンは背後に迫る敵意を察知した。

 瞬時に場を飛び退くと、遅れて大剣が突き刺さる。


 隣の屋根からドワーフが飛んできて、大剣を引き抜いた。


「またテメェか。……人間のガキ」


「……ボルドだったな。私の名前はシロンだ。覚えておくといい」


 言いながら剣を抜き、全身に魔力を纏う。



「誰に負けるのかくらい、知っておきたいだろう?」



 剣先を向けて言い放つと、ボルドは大きく舌打ちをする。


「随分と大口を叩くじゃねえか。二度目なら勝てるとでも思ってんのか?」


 声には怒気が含まれており、シロンの挑発に苛立っているのは明らかだった。

 もっとも、当の本人に挑発のつもりはなかったが。


 大剣を構え、身体を落とし、獲物に喰らいつく寸前の獣のように前傾姿勢になるボルド。

 それを見て、シロンはフッと口角を上げる。


「以前は苦戦した相手……この力を試すのに丁度良い」


 魔力を纏うことにより、シロンの身体能力は前回と比べ物にならないほど上昇している。


 通常、魔力を持たないドワーフが魔力を感じ取ることはできない。

 しかし、ボルドの戦闘者としての勘が警鐘を鳴らしていた。


「……だとしても、この短時間で何ができる」


 雑念を捨て、勢い良く地面を蹴る。

 金属の床が凹むほどの凄まじい衝撃を受け、ボルドの体が矢のように射出された。


 シロンも剣を構え、迫り来るボルドに視線を向けている。


「避けられるもんなら避けてみろよ……ッ!」


 吼えながら大剣を振りかぶり、それを叩きつけようと振り下ろす。


 轟音が響き、確かな手応えにボルドはニタァと笑みを浮かべる。


 しかし、それはすぐに驚愕に変わる。




「避ける必要などない」


 ドワーフの筋力に、突進の勢いも乗せた大剣の一撃を、シロンは涼しげな表情で受け止めていた。


「なっ……!」


 ボルドは額に汗を浮かばせ、警戒して即座に距離を取る。


「逃がさない」


 ボルドの後退とほぼ同時にシロンも地を蹴り、両者の距離が一瞬で詰まる。

 シロンは剣をくるりと回転させ、柄の部分でボルドの腹部を突いた。


「ごはぁっ!」


 衝撃を受けて、鎧は砕け、ボルドの体が吹き飛ぶ。



「ふむ……今後は戦略の幅が広がりそうだ」


 その様子を見てシロンは満足気に頷いた。



 屋上から飛び降り、吹き飛ばした方へと向かう。

 見れば、ボルドは身体の半分が瓦礫に埋もれた状態で倒れていた。



「……クソ、が」


 腹部を押さえ、恨めしそうにシロンを睨みつける。


 もう動く元気もないように見える。

 だが、これが相手の油断を誘うための演技であることをシロンは見抜いていた。


「苦しませる趣味はない。首を刎ねて終わりにしてやる」


 そう言って、敢えて隙を晒すようにゆっくりと剣を振り上げる。


 剣を振ろうと腕に力を込めた瞬間、ボルドが瓦礫に埋もれていた右腕を引き抜く。


「油断したなァ!!」


 その手の中に一瞬にして大剣が現れ、シロンの胴体を両断せんと迫る。



「なるほど、面白いな。作戦もだが、この剣……魔道具か」


 それを片手で易々と止めると、シロンは感心したように呟いた。


「……と、私は別にお前を殺すつもりはない。何か企んでいたようだったから、それを誘いたかっただけだ」


「何、なんだ……テメェは……」


 対するボルドの呟きには、先程までの怒りは感じられない。

 未知の存在への恐怖が、その瞳を暗く染めていた。


「どちらにせよ、暴れられては困るからな。少し眠っていてもらう」


 そうして、唖然とした様子のボルドの首に手刀を食らわせ、気絶させた。



「さて、どうしたものか」


 顎に手を当て思考を巡らせていると、二人のドワーフが近づいてくる。


「おや、シロンの嬢ちゃん!」


「シロンの嬢ちゃんも戦ってたとこか?」


「……いい加減、その呼び方はやめてくれないか」


 彼らは、地下シェルターで現状把握の為に話を聞かせてもらったドワーフたちの一人だ。

 名をヨルドとヤルドと言い、ドワーフでは珍しい双子だそうだ。


「しかし、丁度良かった。こいつをザレスの所まで運んで欲しい」


「「んー?」」


 二人はシロンの示した先を覗き込み、驚きの声を上げる。


「ボルドじゃねえか! こいつに勝っちまったのか!」


「いやぁ……嬢ちゃんもなかなかの戦士だとは思ってたが、これほどとはなあ」


「気絶させてはいるが、いつ目を覚ますか分からない。連れ帰って拘束魔法をかけてもらってくれ」


「おう、任せときな!」


 ヤルドの快い承諾を聞き、再び戦場に戻ろうとして思い出す。


「そうだ、もう一つ。……これはボルドの使っていた武器だ。魔道具だと思うのだが、彼に鑑定を頼みたい」


「そっちはオレに任せとけ!」


 持っていたツルハシを投げ捨て、武器を受け取ろうと手を差し出してくるヨルド。


 彼の手に、二本の大剣をパラパラと落とす。


「!? 何だこれ! 武器の欠片か?!」


「恐らく、大小可変式の武器だ。隠し持った状態から奇襲を仕掛けるといった使い方をしていた」


「な、なるほどな。まあ、これも持って帰るとしよう!」


 二人を見送ると、シロンは改めて、戦場の様子を把握するため適当な建物を駆け上がっていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ