表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星と剣の英雄譚  作者: Kyth
工業都市編
38/48

第37話 『暴走の予兆』


「やっ! えりゃっ!」


 レーアは次々と魔力玉を投げ飛ばし、接近の隙を見せない。

 しかし、マルドには確実にダメージが蓄積していく。


「フッ……これが魔法使いか……」


 息も絶え絶えになりながら、マルドが呆れたように笑う。

 突然の形勢逆転に対応する間もなく、彼の体力は限界を迎え始めていた。


「まだまだっ!」


 楽しげに魔力玉を投げ続けようとするレーアだが、その手が止まる。


 カランと音を立てて、短刀がマルドの手から落ちた。




「私の勝ち、だね?」


 力なくその場に座り込んだマルドからは、もはや敵意は感じられない。



「……。それで、お前はどうするんだ」


 レーアは本を閉じ、少し考える。


「えっ? うーん……引っぱっていくわけにもいかないし……」







「情けねェ姿だな。マルド」


 突然、頭上から声が降りかかる。


 跳ねるように視界を声の方に向けると、赤黒い鎧に身を包み、左目に眼帯を着けた一人のドワーフが、建物の上に立っていた。



「ジェルド……様」


「まさか、こんなガキにやられたんじゃねェだろうな?」


 建物から飛び降り、重々しい音を立ててジェルドが着地する。


「あなたが……」


「ザレスの野郎から聞いたな。だが奴は一つ勘違いをしている」


 そう言ってジェルドが全身に力を込める。

 それに呼応するように鎧が赤い光を放ち、周囲の空気が揺れ始める。


「な、なにこれ……!?」


「……逃げた方が良い。あれは都市の動力源……コアの力を宿した鎧だ。お前が敵う相手ではない」


 マルドが視線はジェルドに向けたまま、ぼそりとレーアに告げた。






 元々、マルドはこの作戦に反対していた。


 カルテトの動力源である巨大なコア、そのエネルギーを専用の器として作られた鎧に流し込む。

 それを着用したジェルドを筆頭に、かつて差別的な思想を垂れ流していたエリシア王国を制圧し、ドワーフたちの力と存在を強く刻み付ける。



───人間は皆殺しにすべきだ!



 しかし、これを「憎き人間たちへの復讐」とする者もいれば、「惨劇を繰り返さないための戦い」とする者もいた。



───やりすぎだ!そこまでする必要はない!



 両派閥間での対立は深まっていったが、ある出来事をきっかけにフェルダーズたちはジェルドに完全に従うことになった。





『他に文句のある奴はいるか?』


『……っ』


 真っ赤に染まった手から血を滴らせながら、ジェルドが冷たく言い放つ。

 傍らに倒れているのは、頭を潰されたドワーフの死体。


『人間は忌むべき存在だ。俺たちはいずれ、大切なものを再び失うことになる』


 吐き捨てるように言い残し、ジェルドがその場を去っていく。


 こうして、ジェルド派閥のドワーフたちはより強い忠誠を誓い、反対派のドワーフたちは恐怖により従い始めることになった。



『ジェルド様、恐れながら申し上げます』


『……マルドか。なんだ?』


 過激思想が増幅し続けるフェルダーズの空気に危機感を覚えたマルドは、ある日、思い切ってジェルドに進言することにした。


『フェルド様の遺志を継がれることに、異を唱えるつもりはございません。ですが……どうか憎しみに呑まれませんよう。憎しみは、思考を曇らせます』


『……あぁ。俺は別に人間を憎んでなんかねェよ』


 意を決したマルドの進言に、平然とそう返すジェルド。

 言葉の意図が分からず、マルドは困惑の色を浮かべる。


 マルドが部屋を去った後で、ジェルドは眼帯を押さえながら口角を上げる。





『力と、それを振るう場まで用意してくれるんだ。フェルダーズの奴らには感謝しないとな』




 吹き荒れるエネルギーの嵐が周囲を包み込む。

 解放されたジェルドの圧倒的な力を、レーアたちも肌で感じていた。


「ハーーッハハハハ!!!」


 ジェルドが高笑いをしながら両の拳を打ちつけ合う。


 すると、紅い光の環が広がり、レーアの身体に叩きつけられる。


「っ……!」


 咄嗟に魔力を固めるも、殺し切れなかった衝撃が身体の内部に響く。

 レーアの小さな身体が後方へと吹き飛ばされ、冷たい床の感触が頬に伝わる。


「ハッ。ただのガキじゃないらしいな。……まずはお前で、この力を試してやろう」


 凄まじい威圧感を放ちながら、ジェルドが歩き始める。



「みんな、お願い……っ」


 レーアは輝きを取り戻した少数の星を空へと打ち上げた。


 上空で眩い光を放ち始めたそれらを、ジェルドが訝しげに見つめる。


「狙いも定まらないほど朦朧したか?」


「……」


 嘲るようなジェルドの声にレーアは何も返さない。


「まァ良い。肩慣らしに付き合ってもらうぞ」


 鎧のエネルギーを籠手に流し込み、それをレーアに向けて放出しようと掌を向ける。


 しかし、その射線を遮るように立ち塞がった者がいた。






「……何の真似だ。マルド」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ