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星と剣の英雄譚  作者: kito
工業都市編
31/37

第30話 『交戦』


「っ……!」


 まるで最初から隠れているのが分かっていたかのように、ジェルドが命じる。


「承知しました」


 ボルドと呼ばれたドワーフは返事をすると、シロンの方へと向かってくる。

 ジェルドはそれを見て悪辣な笑みを浮かべると、屋上を去っていった。


 もはや隠れていても意味はないと木箱から姿を現し、剣を構える。

 相手が一人であれば戦いようもある、いざとなれば逃走も可能だろうという判断だ。


「『エア・スラッシュ』!」


 その場で激しく回転し、風を纏った一撃をボルドに叩きつける。

 衝突音が響き、先制攻撃の成功を知らせる。



「やはり、人間は野蛮だ」


 様子見の一撃とはいえ、詠唱した上で放った剣技だったはずだ。

 しかし、ボルドは大剣を構えてそれを防いでいた。


 どこから取り出したのかは見当もつかないが、考える余裕はないと頭を振る。


「……お前たちは、何が目的なんだ?」


「人間への復讐だ」


 瞳に憎悪を宿し、吐き捨てるように答える。

 その気迫に一瞬息を呑むが、シロンは表情を崩さない。


「これ以上は話してやらねぇよ」


 会話で情報を引き抜こうとしているのを察したのだろう。半ば強制的に中断されてしまう。



 その時、遠くから爆発音が響いた。

 続けざまに、あちこちから悲鳴と怒号が上がる。


「……フェルダーズ」


 先のジェルドの言葉が脳裏をよぎる。

 そちらに意識を向ける暇もなく、ボルドが大剣を後方へと引き絞る。


「そらッ!」


 声と共に大剣が唸りを上げて振り抜かれる。

 空気が爆ぜるような音と共に、衝撃波がシロンに襲い掛かる。


「くっ!」


 シロンは瞬時に飛び上がり、それを回避する。


「『エア・スラッシュ』!」


 空中で全身を回転させ、纏った風をボルドに叩きつける。

 一撃目と同じように防がれてしまったが、それは想定済みだ。

 『エア・スラッシュ』を防がせることで、着地する隙を突かれないようにしたのだ。


 着地すると同時に地を蹴り、突進する。

 眼前に迫ったところで、ボルドが床を踏み抜いた。


「な……」


 地面が崩壊し、再び空中に放り出されるが、今度は状況が違う。

 ボルドは既に大剣を振り上げており、それを叩きつけようとしていた。

 即座にボルドの身体を蹴って距離を取り、適当な場所に着地する。


 散乱する瓦礫が互いの機動力を制限している。

 力押しの戦法を取るドワーフのボルドにとっては大した問題とならなかったが、俊敏な動きを戦術の一つとするシロンにとって、それは痛手であった。


 しばらく睨み合いが続く中、次に仕掛けたのはボルドだった。

 積み上がる瓦礫を蹴り上げて、散弾のようにシロンへと撃ち込む。

 広範囲の攻撃に対し、シロンは早々に回避を捨て迎撃の判断をする。


 襲い来る瓦礫を弾き、斬り捨て、蹴り飛ばす。

 対処を終えて向き直ると、そこにボルドの姿はない。

 瞬間的に集中力を高め、左手に迫る気配に感づく。


「そこだっ!」


「ぐっ……」


 瓦礫の隙間を突くと、苦悶の声が上がる。

 ドワーフの小さな身体を活かして回り込んで来ていたようだ。


 ボルドは再び瓦礫の中へ姿を紛れさせると、シロンの後方へと回る。

 振り向いた先で、ボルドが片手で大剣を振り上げていた。


「遅い!」


 振り上がった大剣を剣で弾き、その隙を突こうと────


「……かかったな」


 見れば、空いていた手に大剣が握られていた。

 どこにも装備しているようには見えなかった。しかし、ボルドの手には二本の大剣が握られている。


「しまっ…」


 咄嗟に剣を挟むも大剣の威力は殺し切れず、横っ腹に衝撃が刺さる。

 そのまま吹き飛ばされ、全身を硬い鉄の壁に叩きつけられる。


「が……っ」


 視界が揺れ、口から血が漏れる。

 身体を突き刺す痛みが、辛うじて意識を保たせてくれた。


 瓦礫を踏む音が聞こえる。小さな身体に二本の大剣──片方を肩に担ぎ、もう片方を地面に引き摺りながら、ボルドがこちらに向かってくる。


「く……」


 幸い、剣は手放していない。

 それを支えにしながら、覚束ない足取りで立ち上がる。


「終わりだ」


 そう言ってボルドが大剣を振り上げ、シロン目掛けて振り下ろす。




 その時、シロンの前に出現した光の壁が大剣の攻撃を防いだ。


「なっ……!」


「『スター・ショット』っ!!」


 突然の出来事に困惑するボルドに星の弾幕が襲い掛かる。

 ガードを上げる間もなく直撃を受け、その身体が大きく吹き飛んだ。


「シロン! 大丈夫!?」


「れ……ぁ」


 喋ろうとしても、声と一緒に血が零れてしまう。

 その様子を見て慌てるレーアに、外にいたドワーフが声を上げる。


「嬢ちゃん! こっちだ!」


 シロンの身体を傷つけないよう、星の光で包んで外へと運び出す。



 建物の奥、舌打ちしながら立ち去っていくボルド。

 その手に握られた二本の大剣が、パッと小さくなって消えるのが見えた。


 そこで、シロンの意識は途切れてしまった。

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