第21話 『エルガルド大祝祭の騒動』
城の前の大階段も、今日は物凄い人だかりだ。
華やかな正装に身を包む貴族、使い古したマントをなびかせる冒険者、不審な物や行動に目を光らせる騎士。
レーア達は慣れないドレス姿に苦戦しつつ、階段を上り切った。
「玉座の間は三階だったな。行こう」
「ま、また階段……」
入って正面に見える階段を上り、三階の玉座の間にたどり着いた。
「御二方、少し待たれよ。騎士団以外はこの先、武器の持ち込みが禁じられている」
玉座の間に入ろうとすると、見張りの騎士に呼び止められる。
見れば、剣や杖といった武器類が長机に並べられていた。
「そうだな。預けていこう」
「シロン、大丈夫?」
レーアの心配そうな声に、シロンが笑いながら頷く。
オーブが耐久性に優れないという話はフィースから聞いていた。
このような事態も無論想定しており、そうなれば手刀で壊すのみだと考えていた。
部屋に入った二人は早速オーブを見つける。
王が座る玉座の前に、オーブを保管する台座が置かれていた。
台座の左右には騎士が一人ずつ立っており、王の隣にも側近であろう老人が一人いるのが見える。
「団長や司書はいないようだ。軽く見回しても、他に手練れは見当たらない」
「フィースさんのおかげ!」
二人は玉座の前へ足を踏み入れると、別行動を開始する。
レーアは嬉々として食事が並べられたテーブルの方へ向かっていき、どれから手を付けようかと眺めていた。
シロンはゆっくりと部屋を歩き回りながら、自然とオーブに近づく。
「(位置は良好……あとは抑制の宝石の起動を待つだけか)」
周りの貴族や騎士に特に怪しまれる様子もなく、シロンはオーブの近くで待機し始める。
好きに食べ回るレーアを眺めたり、周囲の会話に耳を傾けたりしながら、シロンは決行の合図を待っていた。
その時、玉座の間の魔灯が一斉に光を失った。
突然の出来事に辺りが騒がしくなるが、騎士の一人がすぐに簡単な炎魔法で周囲を照らした。
「皆さん、落ち着いてください! 大丈夫です!」
明かりが消えただけということで、ざわめきも少しずつおさまってくる。
「おい、オーブが割れてるぞ!?」
だが、一人の叫びで空気が再び張り詰めた。
王国を長きに渡り守って来たと言われる『祝福のオーブ』が粉々になっているのを見ても、王は冷静に判断する。
「どうやら、狙いはオーブだけだったようだ。皆に案ずるなと伝えよ」
「仰せのままに」
王が耳打ちすると、隣にいた老人が恭しく一礼し、玉座の間に集まった民の方を向く。
「皆様、どうかご安心を。賊の狙いはあくまでオーブに限られていたようですので、皆様に危険が及ぶことは無いでしょう」
よほど信頼を寄せられているのだろう、老人の言葉に皆が安堵した様子を見せる。
しばらくして、魔灯が再び光を取り戻した。
王の言った通り、民衆は誰一人傷つけられることはなく、オーブが破壊されただけだった。
「ですが、オーブの庇護が失われたというのは深刻な問題では……?」
「団長殿は一体どこで何をしておられるのだ?」
次々と声が上がるが、王は落ち着いた様子だった。
「無礼は承知の上で申し上げますが、我らとしても、今回の騒動――賊の正体とその目的について、早急に調査を進めねばなりませぬ。本日はどうかお引き取りいただけますよう、お願い申し上げます」
老人の言葉に騎士達も動き始め、玉座の間から人が消えて行った。
「上手くいったね、シロン!」
「ああ。フィースの方も、上手く撤退していると良いのだが」
もう一人の共謀者の身を案じつつ、二人はフィースの家に戻った。




