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第28話「王都突入!」

「だからこそ、お前には期待しているぞ。ファラオよ、古代の砂の王!」

「……エッ?」

変なテンションで急に持ち上げられて、ミイラ男はフリーズする。

え、なに? どういう流れ? 褒められてる?いや怖い。

……と、困惑の中で、ほんの数秒で理解した。

「チョマッ!お前……まサか、もウ一回挑む気か!?そノ“不死帝”に!」

「当たり前だが?

でなければ、縁もゆかりもないヌビトにファラオの肉体を回収しに行くわけないだろう?」


……バカだ。

この人、バカだ。

そんな昔に死んだ仲間との約束を果たすために、

一人でわざわざファラオ蘇らせてって……

ちょっと青春感じるのは、まああるけどさ。

根本的に、やっぱバカだろこれ。

「……そノ戦いに出陣するノハ、俺ハ拒否しタいんダが?...」

苦虫を噛み潰したような反応に、ザンギリも全力でコクコクとうなずいている。


「その“呪い”は未知だ。さっきも言っただろう?

アンデッドはもちろん、仲間に悪魔使いや魔獣使いもいた。

それなりに専門的な話もいくつか聞いているが……」



「だがな、その古代の呪いに匹敵するものは、私は知らん。

ザンギリに斬られたときに発動した“自動再生能力”もそうだ。」

ゴンギは真剣な面持ちで語るが、当のミイラ男は全然納得していない。

「しかもお前には、まだ“伸びしろ”がある。」

「え? 俺ガ?」

反射的に言い返したそのとき、ミイラ男はハッとする。

左手首にはめられた腕輪――副葬品のひとつ。

「アあ、こレか……」

「副葬品をすべて集めたとき、

もしかしたら、不死帝すらも凌駕するような…

おっと、希望的観測はいかんな。」

ゴンギはやたら興奮気味に歩を進める。

ちょっとだけ、歩くの速くなってるぞ。

「なんの話でごわすか?」

ザンギリに副葬品や腕輪の話を説明すると、

「あー、オークも仲間を弔うときに屍体を食うけど、

生前使ってた武器とかを食器にしたりするでごわすよ!

それみたいなモンでごわすなぁ」


……もうめんどいから、それでいいや。


確かに現時点で集まっているのは、左手の腕輪ひとつ。

冠に、右手、胴体……靴とかもあるんだろうか?

全部そろったら、もしかして無敵になって、ビームでも出せたりして。

──別に強さを求めてるわけじゃない。

けど、古代ヌビトの波動を常に肌で感じていられるなら……

このファラオの遺体に宿る意志や、かつての魂に対して、

せめてもの“礼儀”を尽くせるなら。

遺物集めは、ぜひとも積極的にやっていきたい。


ラスボスに挑むのは──そのあとで、全部揃ってからでいい。

シチューも「参戦拒否」って顔で、スス…と一歩後ろに下がった。

草木をかきわけ、歩く。

運命に追われるように、あるいは導かれるように──進む。

胸の奥で、理由のないざわめきが膨らんでいく。


あたりはすっかり夜の帳が下りていた。


街道沿いの松明に照らされた、セルリアール王国ー王都ブラッデインの城門。

門の上には兵士が二人、交代の時刻らしく眠たげな目でこちらを見下ろしている。

「止まれ。許可証を確認する」

無骨な声とともに、ランタンを持った衛兵が近づいてくる。


……当然の反応だ。


夜中に、いかにも怪しいミイラを引き連れて来たのだ。警戒されるなというほうが無理がある。

だがそこは、我らがゴンギ。

淡々と、皮で綴じられた許可証を差し出す。

表紙には、王都の印章──双頭の龍のような紋が押されていた。


まるで“職質マスター”の肩書を持つ常連のように、ゴンギは完全に機械化した抑揚ゼロの声で自己紹介を終えた。

対する衛兵たちは、当然ながら眉間にしわ寄せまくり。

何より問題は、我々随伴メンバーのビジュアルだ。


──巨大なネズミ(漂う腐臭?)、

──骨だけの人型(ずっと無言)、

──包帯ぐるぐる、時折目を赤く光らせるファラオ

──そして死亡直後のゾンビオーク。


もうこれ、カタギな集団なわけがない。

「ネクロマンサーか…まぁいいだろう。」

ちょっと風変わりなネクロマンサーということで認めてもらえた。


「……そちらの、包帯を巻いたのは?」

「特級呪物。移送中。重要な研究対象(アンデッド)だ。下手に触れると祟る。死ぬ」

「ひっ……は、はあ……」

「触ったら終わりだ。ちなみに、後ろのネズミとオークは、このミイラに無礼を働いて──こうなった」

「ヂュウ!!」

「あっ、はい」

シチューが呼応するように金切り声を上げ、ザンギリも“ゾンビ界の良識枠”みたいな表情で頷く。


けれど、それが逆に効いたのか──

衛兵は目を泳がせ、「この連中、深掘りしたら絶対ろくなことにならん」という、

官僚系NPCが生まれつき備えている“危険回避レーダー”をフル稼働させはじめた。

そりゃそうだ。

逆の立場でも「うっかり関わると死ぬ劇団」みたいな一団はノーサンキューだ。

実際、そんな危険な地雷は…このミイラ男だけなのだが。

ひとしきりの問答の末、ようやく門番の手にしたランタンがゆっくりと左へ傾けられた。

すると、城門脇に仕込まれた錠前が「カシャン」と重々しく解かれ、鋼鉄と石の門扉が静かに開きはじめる。

「通ってよし。この時間帯は、スリに気をつけろよ」


半ばあきらめたような声とともに、一行はついに──王都の土を踏んだ。

第一層市街。広い石畳と高くそびえる木造や白石の建築群。

夜の王都は、死者たちを迎え入れた。


◇ ◇ ◇

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