Humanity Magi
こうして国家は不祥事を公に認め、桜神靱が全ての元凶であることが世界に知れ渡った。この一件を通しても、長年培われてきた人間とマグスの間の溝はまだ埋まらない。両者が手を取り合える時代が訪れるのは、まだまだ先の話である。
御鷹は愛恋と共に、「Humanity Magi」という協会を立ち上げた。この協会の目的は、人間とマグスの共生である。新たに残された最終課題を胸に、彼らは今日も世界平和を謳っている。
この協会には、奏美も加入している。彼女は今までの自分の罪を告白し、難民と化したマグスたちへの経済的支援に身を捧げている。強制収容所や人体実験場にいたマグスはもちろんのこと、人間の襲撃によって住処を失ったマグスもいる。彼らは皆、奏美の支援の下で衣食住を保証されている。
ある日、御鷹は集落の跡地を訪れた。錆びた義足が落ちているのを見つけ、彼はその隣にしゃがみこむ。彼の片手には、高価なモルトウイスキーが握られている。御鷹はそれを義足の横に添え、空を仰ぐ。
「紅蓮……終わったよ」
彼はそう言い残し、その場を去ろうとした。彼が背後へと振り向くと、そこには祐と瑞葉、そして愛恋がいる。
「御鷹。ユーのおかげで、ミーは少しだけ……人間を好きになれたよん。ありがとね」
祐は御鷹への感謝を述べ、無邪気に笑った。彼に続き、瑞葉と愛恋も礼を言う。
「流鏑馬御鷹……貴方は本当に、ヒーローだったのですね。貴方のおかげで、助かりました」
「ありがとう……御鷹。僕がこうしてのびのびと生きていけるのも、君のおかげだよ」
三人は御鷹を信頼している。御鷹は照れくさそうに愛想笑いを浮かべ、こう返す。
「感謝するのは俺の方だ。俺一人じゃ、何もできなかった。何も成し遂げられなかった。今日という日を迎えられたのは、アンタらのおかげだよ」
これは謙遜ではない。彼は本心から、彼らの功績を称えているのだ。
瑞葉は訊ねる。
「流鏑馬御鷹。人間とマグスは、これからわかり合えるようになりますか?」
現時点ではまだ、未来を確約することはできないだろう。それでも、御鷹は輝かしい未来が訪れる日を信じている。
「俺たちに出来ないことはない。そうだろ?」
彼の言葉に、祐と愛恋も同調する。
「ウェーイ! ミーたちはずっといがみ合ってきたけど、手を取り合えば最強じゃん? もう誰にも負ける気がしないよん!」
「そうだね。僕たちに出来ないことはない。だって、僕たちは……国一つを動かしたんだから」
集落の跡地に、爽やかな風が吹きつける。その風に髪をなびかせつつ、御鷹は言う。
「どうだ? これから、ピクニックにでも行かないか?」
彼の案に、三人は賛同する。
「いいね! サンドウィッチは僕が用意しておくよ」
「ウェーイ! 最近は色々と忙しかったし、久々に羽根を休められるよん!」
「私も賛成です」
――――決まりだ。しかし愛恋には、もう一人誘いたい人物がいる。
「せっかくだし、奏美も呼ぼうよ。先ずは研究所に行って、ありったけのイチゴホイップのサンドウィッチを作ろう!」
四人はすぐに研究所へと向かった。
御鷹たちが研究室の戸を開けると、そこには作業に打ち込む奏美の後ろ姿があった。
「何を作っているんだ? 奏美」
御鷹は訊ねた。奏美は嬉々とした表情で立ち上がり、プレゼンを始める。
「良い質問だね、御鷹。ワタシは今、生物の体内のあらゆる異物を破壊するナノマシン……メディカルミストを作っているんだ」
「おお……それは凄いな。要は、それでマグスウィルスも除去できるんだろ?」
「ご名答。ドクター・マガミのメタルミストを解析したことで、ワタシにも医学の知識が身についたからね。いつか絶対に、メディカルミストを完成させてみせるよ。私も、ヒーローになりたいからね」
彼女の心は、御鷹に感化されていた。




