官邸
同じ頃、瑞葉と祐は官邸の近くまで辿り着いていた。魔法兵器を構えた軍人を次々と倒しつつ、二人は目的地へと駆けていく。
祐は魔法兵器に対し、哀れみの目を向ける。
「そういや、前に紅蓮ちゃんから聞いたね。魔法兵器の部品には、遺伝子操作によって最低限の臓器しか生まれ持たない――――使い捨てのマグスの肉塊が使われているって」
彼に続き、瑞葉も言う。
「もう終わらせないといけませんね……こんな非人道的な所業が繰り返される歴史は」
祐は有毒植物、瑞葉は液体窒素の入った氷の容器を生み出し、周囲の軍人たちを蹴散らしていく。サンタンカモドキは標的を毒殺し、液体窒素の入った容器は勢いよく爆発する。元リベリオン・マギの幹部たちが相手では、魔法兵器を持った軍勢など無力に等しいだろう。祐たちは敵を殲滅し、いよいよ官邸に乗り込んだ。
さっそく、祐は首相の胸倉を掴み上げる。彼の瞳には、底知れぬ憎しみが宿っている。
「ミーたちがここに来た意味……わかってる?」
「ま……待て! 話せばわかる! 先ずは私のことを降ろしてくれないか⁉」
首相は取り乱し、必死に命乞いをしている。無論、祐が彼を許すはずはない。
「ドクター・マガミが何者か、知らないとは言わせないよん。彼の正体は桜神靱――――全ての元凶だ」
「落ち着け! そうだ、金ならある! いくらだ! いくら欲しいんだ⁉ 私を見逃してくれたら、プライベートビーチのある豪邸を君にやろう! ダーツバーもあるし、ワインセラーだって完備されている!」
「ふぅん……そっかぁ。ミーたちを虐げることで手に入れた金で、ユーはそんな美味しい想いをしていたんだね」
何やら首相は、藪をつついて蛇を出したようだ。そんな彼の頭を床に叩きつけ、祐は笑う。それから首相の後頭部をかかとで踏みつけ、彼は話を続ける。
「ユーに残された道は二つだよん。ここで死ぬか、今まで隠蔽してきた事実を全て公表するかだ」
続いて、瑞葉も首相を脅す。
「凍傷が悪化すると、患部を中心に人間の細胞は徐々に壊死します。これは毒やウィルスに起因する傷ではないため、メディカでは癒せませんよ」
彼女はそう言い放ち、首相の四肢を凍らせた。官邸を守っていた軍隊が全滅した今、彼を助けようとする者はいない。彼は今まさに、袋の鼠である。
「わかった! 全てを話そう! それで全てを許してくれ!」
首相はそう言ったが、祐の腹の虫はまだ収まらない。
「甘いね。パンツ一丁で土下座して、ミーの靴の裏を舐めてもらうよん。でもそのままじゃ土下座はできないだろうし……瑞葉ちゃん、一旦氷を解いてあげて」
「了解しました」
彼の指示に従い、瑞葉はすぐに氷の魔法を解いた。首相は慌てて服を脱ぎ始め、中年太りの情けない体を露わにする。
「ごめんなさい……許してください……」
彼はその場で土下座し、祐の靴の裏を舐め始める。その様を見下ろしつつ、祐は笑う。
「無様だね……これが不祥事を隠蔽し続けてきた権力者の末路だなんて! そうだ瑞葉ちゃん! これ撮影しといてよん! 閲覧注意、マグスを怒らせた者の末路がこちらカッコ動画ありカッコ閉じ……ってね!」
「了解しました」
瑞葉はすぐにスマートフォンを取り出し、この様子を撮影し始めた。生き延びるために尊厳を捨てた首相は、悔しさのあまり涙を流していた。
祐は言う。
「総理大臣さん、顔を上げなよん」
ようやく気が済んだのだろうか。首相は安堵の笑みを浮かべ、起き上がった。直後、彼の口元に、祐の指先が飛んでくる。首相はそのまま前歯をへし折られ、口から大量の血を流した。
「今日はこれくらいで勘弁してあげるよん。もし裏切ったら、次はユーの全身をギンピ・ギンピでラッピングしてあげるね。はい瑞葉ちゃん、カメラストップ」
これだけ釘を刺しておけば、首相が命令に背くことはないだろう。祐は瑞葉を連れ、官邸を後にした。




