決着
閃光と砂煙が静まり、悠々と直立する玲作の姿が露わとなった。彼の眼前では、力尽きた御鷹が仰向けで倒れている。この時、玲作を除く全員が絶望した。彼を倒し得る唯一の希望が絶たれたとあっては、彼らに勝算はない。
「御鷹!」
愛恋は御鷹の方へと駆け寄った。どういうわけか、玲作が彼らに攻撃を仕掛けようとする様子はない。玲作の体の節々からは、黒い煙と電流が放たれている。彼は腹を押さえつつ、その場にうずくまる。
「この私が……負けたのか……?」
彼の体は、足下から徐々に銀色に染まっていく。その体を構成するメタルミストは、徐々に機能を停止しているようだ。
奏美はよろけながら立ち上がり、勝利を宣言する。
「アナタの負けだ……ドクター・マガミ。正義は絶対に勝つ。御鷹は、本物のヒーローなんだよ」
もはや玲作に勝ち目はない。彼の体は、風に吹かれた砂の像のように崩壊していく。
「御鷹の……信念は……本物だ。だが、それが……正しいとは……限らない。無論、だからと……言って、正しくないと……断ずるつもりは……ないが……な」
「……何が言いたいのかな?」
「あの男の……正しさを……証明してみろ。メディカを……使わずして、多くの……命を……救うことが……できるのなら、私は……」
最期の言葉を言い終わる前に、彼は完全に銀の砂と化した。何はともあれ、御鷹たちの勝利である。
「強くなったじゃねぇか……御鷹」
御鷹は再び、紅蓮の声を聞き取った。彼が目を覚ますや否や、彼が首にかけていたメディカは粉々に砕け散った。御鷹は少し寂しそうに微笑み、疲労の混じったような声で呟く。
「ようやく眠れるんだな……紅蓮」
紅蓮の役目は終わった。彼女は彼と共に、全てを成し遂げたのだ。
御鷹と奏美の周囲に、たくさんのマグスが群がってくる。
「ドクター・マガミはマグスウィルスを撒いたはずだ! そうだろう?」
「これはおれの親父のメディカだ! 遠慮なく使ってくれ!」
「御鷹のために取っておいたのです。私の姉のメディカを……」
彼らは皆、その手にメディカを握っている。一先ず、御鷹たちがマグスウィルス感染症で命を落とすことは無さそうだ。
「ありがとう……皆!」
「……皆、今まですまなかった。こんなワタシを許してくれて、本当にありがとう」
それから二人は、すぐにマグスの経営する病院に搬送された。
彼らはメディカを使った治療により、体内に潜伏していたマグスウィルスを全て除去された。これで御鷹たちは一命を取り留めたが、まだ彼らが退院することは許可されていない。
「なあ、俺たちにはまだやり残したことがあるんだ。もうマグスウィルス感染症は治ったんだし、退院させてくれないか?」
「次はドクター・マガミの悪行を世間に知らしめる必要がある。ワタシたちの戦いは、まだ終わっていないんだよ」
二人はそう言ったが、その体は両者ともに満身創痍だ。包帯に包まれた彼らの姿を見て、女医は首を横に振る。
「もう少し休みなさい。その傷が治るまで……ね」
彼女の言葉に、愛恋も頷く。御鷹たちは当分、ベッドの上から動けなさそうだ。
そんな中、病室に一人の少年が現れた。
「ウェーイ! 二人とも、ドクター・マガミを倒したみたいだね!」
五十嵐祐だ。彼は両腕で、黄色い花を咲かせている植物を抱えている。
御鷹は訊ねる。
「その花は?」
祐は答える。
「ミーの魔法で生み出したオトギリソウだよん」
「オトギリソウ?」
「傷に効く薬草だよ。もうすでに乾燥させてあるから、後はこれを煎じて作った汁を傷口に塗るだけだよん。ま、共通の敵はいなくなったし、ユーたちとはこれから上手くやっていけそうだね!」
彼は意外にも、御鷹たちに対して友好的だ。
「あ……ありがとう」
二人は少し困惑しつつ、彼に礼を言った。




