流鏑馬御鷹
竜也の力を取り込んだ後の玲作は強かった。御鷹が何度ナノマシンを作り続けても、彼の体には不具合が発生しない。まるで、玲作がナノマシンに対する免疫を獲得しているかのようだった。オートミストを手にした彼は凄まじいエネルギー量の光線を放ち、森林ごと御鷹の身を焼き払っていく。無論、御鷹も応戦を試みるが、彼の攻撃は銀色の盾によって防がれてしまう。すでに満身創痍となりつつある彼に、もはや勝機は見られない。
その時だった。
「負けるな! 御鷹!」
「お前はおれたちのヒーローだ!」
「あんな奴、やっちまえ!」
どこからともなく、声援が聞こえてきた。御鷹が振り向くと、そこにはマグスの群集が群がっている。その先頭に立っているのは、愛恋だ。
「やれやれ……僕は危ないからドクター・マガミには近寄るなって、皆を止めたんだよ? でも皆は、君が戦っていると聞いて、黙っていられなくなったみたいだ」
何やらここに集った者たちは皆、彼の反対を押し切ってここに来たらしい。御鷹は嬉しさのあまり頬を綻ばせ、感謝を述べる。
「ありがとう……皆」
彼の笑顔につられ、愛恋も笑う。
「皆、準備はできてる?」
愛恋は群衆に訊ねた。
「もちろんだ!」
「私の炎を見せてアゲル!」
「ヒャッハー! コイツは祭りだぜぇ!」
マグスたちは次々と駆け出し、魔法を使っていく。玲作は様々な魔法による攻撃を浴びるが、依然として再生を繰り返していくばかりだ。
「ククク……お前たちが束になってかかってきても……この私には敵わんよ」
彼はそう言い放ち、両腕をレーザー砲に変形させた。
「させるか!」
御鷹はすぐに間合いを詰め、玲作の両腕を切り落とす。無論、両腕はすぐに再生するが、マグスの軍勢は玲作に反撃の暇を与えない。数多の魔力が交じり合い、彼の体を幾度となく爆破していく。
愛恋は言う。
「御鷹……君が思っている以上に、君自身の信念は大きな力を秘めているんだ。さあ、今までなんのために戦ってきたのかを思い出して。今まで守ってきたものを思い出して。今の君が背負っている思いが、どれほどのものかを思い出すんだ」
彼に言われたまま、御鷹は今までのことを回想する。
孤児院を襲われたことや、テロリストから双子を守ったこと。
盗賊団を守れなかったことや、愛恋と出会えたこと。
リベリオン・マギの幹部たちの境遇を知り、憤りを覚えたこと。
多くの命を奪ってしまったことや、殺人衝動を克服したこと。
そして、協力者となった紅蓮が息絶え、メディカと化した今でも力を貸してくれていること。
それら全てが、今の御鷹を象る糧となっている。そして今、彼は全ての元凶に等しい男と対峙している。御鷹は今、全てを終わらせようとしているのだ。
「迷うな、御鷹。オレはオメェの側にいる」
突如、どこからともなく、紅蓮の声が聞こえてきた。それが幻聴なのか、あるいはメディカに秘められた力なのか――――御鷹にはそれがわからなかった。それでも、その声は確かに、彼に勇気を与えていた。
「これで終わりだ! ドクター・マガミ!」
彼は叫び声を上げ、メタルミストとオートミストを掛け合わせる。彼の手元には、竜の彫刻のあしらわれた大剣が生成される。その刀身は赤い光を放ち、神々しいエネルギーをまとっていた。御鷹は高く跳躍し、その大剣を振りかぶる。
玲作は彼を睨みつつ、己の手元にも大剣を生成する。その刀身は紫色の光を放ち、禍々しいエネルギーをまとっている。
「散るのはお前だ……御鷹ァ!」
「真上ィ!」
両者の振るう大剣がぶつかり合い、火花を散らす。二人を中心に、眩い光と衝撃波が放たれる。彼らの力は、ほぼ互角だ。
「俺は……ヒーローなんだ!」
「私は、医者だ!」
辺り一帯は光に覆われ、大きな爆発に巻き込まれた。




