信念の衝突
「――――僕の余命も残りわずかだ。メディカが人命を救えるというのなら、僕はマグスを狩り続ける。そして正しい医学を世に浸透させるためにも……僕には先生が必要だ」
己の境遇を語り終わり、竜也は宙を漂う無数の銃からエネルギー弾を連射する。奏美は覚悟を決め、彼と戦うことを選ぶ。数多のエネルギー弾がぶつかり合い、爆発を起こし、辺り一帯を轟音に包み込んでいく。奏美は御鷹の方へと目を遣り、指示を出す。
「竜也の相手はワタシが引き受ける。ドクター・マガミを倒せるのは、御鷹……アナタだけだ!」
御鷹は頷き、玲作への攻撃を開始する。両者共に、エネルギーをまとった剣をぶつけ合い、文字通り火花を散らしていく。オートミストによる援護射撃も相まって、今は御鷹が優勢だ。それでも玲作は己の肉体を修復し、彼の体に切り傷をつけていく。
「御鷹! お前は、私の医学の礎となるのだ!」
「アンタはそれでも医者か⁉ 命を救うべき者が、一体どれほどの命を不意にしてきた!」
「同じことを何度も言わせるな! 平和は犠牲を伴う! それが条理だ!」
彼の体は、徐々に不調を起こしている。それでも彼の再生能力は、不完全とは言え機能している現状だ。一方で、御鷹には再生能力はない。彼は玲作の斬撃や砲撃を受け、着実に疲弊している。御鷹が失血死するのが先か、あるいは玲作の体の機能が停止するのが先か――――全ての命運は、この勝負にかかっている。
一方で、奏美は竜也に追い詰められていた。彼女は全身を酷く負傷し、立つのもやっとの有り様だ。それでも彼女は立ち上がる。彼女の脳裏に、御鷹の言葉が浮かび上がる。
「心には、どんな武器にも優る力がある。本物の信念を持つ者は、絶対に負けはしない!」
奏美はそう言い放ち、間合いを一気に詰める。彼女はメタルミストを刀に変形させ、稲妻のような速さで竜也を切りつけていく。彼女の強い意志に反応し、その刀身は眩い光を放っている。彼女の心は、紛れもなく彼女自身の力となった。
「馬鹿な……一体、君のどこにそんな力が⁉」
「心だよ。ワタシの心が、メタルミストの挙動に現れているんだよ!」
「何が心だ! 僕の父親の歪んだ心が、今の僕を作り出したんだぞ! 違うか⁉ 違うのか⁉」
竜也は取り乱しつつ、闇雲に銃を乱射する。奏美はエネルギー弾を浴びつつも、それをものともせずに刀を振り続ける。やがて竜也は失血し、その場で咳き込み始める。彼はそのまま平衡感覚を失い、その場に倒れ込む。一先ず、奏美は敵陣の戦力を削ることに成功したようだ。
しかし竜也は笑っている。全身から血を流し、虫の息になりながらも、彼は勝利を諦めてはいない。
「後は任せたぞ……先生」
彼の使っていたメタルミストとオートミストは、銀色の霧となって交じり合う。霧は宙を漂い、そのまま玲作の体と同化する。直後、玲作の体に起きていた不具合は改善され、彼は本来の再生能力を取り戻した。瞬時に無傷の状態にまで再生した彼を横目に、竜也は呟く。
「先生……どうか、この国を救ってくれ……」
それが竜也の最期の言葉だった。彼は眠りに落ちるように息絶え、そのまま二度と動かなくなった。玲作の周囲で、オートミストがうごめき始める。竜也の死は、彼に新たな力を与えたようだ。
「ククク……力がみなぎってきた。今度こそ、オペを開始する!」
玲作は余裕を取り戻した。竜也との戦いで負傷した奏美は、すでに戦える状態にはなさそうだ。彼女は肩で呼吸し、おぼつかない足取りで全身を支えている。
「御鷹! ワタシのオートミストも使え! ここで全てを終わらせるんだ!」
奏美は力を振り絞り、掠れた大声を出した。御鷹は彼女からオートミストを受け取り、玲作を睨みつけた。
――――ついに最終決戦が始まる。




