信念を持つ者
数時間後、三人のマグスバスターは、以前紅蓮に燃やされた研究所の跡地へと赴いた。彼らを待ち受けていたのは、真上玲作だ。御鷹は紅蓮の生み出したメディカを首飾りにし、それを首に下げている。
御鷹は言う。
「紅蓮。アンタの仇は……俺が討つ!」
この一言が、闘争の狼煙だ。彼はメタルミストをぐにゃぐにゃと変形させ、標的への攻撃を試みる。彼に続き、奏美と竜也はエネルギー弾の乱射による援護を行う。玲作は全身を切り刻まれ、無数の弾丸を浴びていくが、その度に再生していく。無論、御鷹は彼に対抗するためのナノマシンを生み出そうと奮闘しているが、その努力は簡単に実を結ぶものではなさそうだ。
「クソッ……抵抗を感じる! 何か大きな力による……抵抗を……!」
「御鷹。お前は以前、心にはどんな武器にも優る力があると言っていたな」
「まさか……!」
「私にも、心がある。医学を進歩させ、より多くの命を救いたい……その心が私の武器だ」
「くっ……」
強い信念を持つ者は、御鷹だけではない。玲作もまた、信念をもって戦っているのだ。
「オペを開始する……!」
彼は右腕を真上に伸ばし、右手の先に巨大なエネルギーの球体を作り出す。直後、辺り一帯は激しい爆発に呑まれ、煙をまとった御鷹たちは後方へと吹き飛ばされる。竜也は飛ばされながらも無数の銃を作り、エネルギー弾を乱射する。奏美は後転で体勢を整え、数百本もの太刀を生み出す。数多の銃撃と斬撃を浴びてもなお、玲作は余裕綽々としている。彼の体は、依然として瞬時に再生する。
「お前たちには、私を倒すことはできない」
彼はそう言い放ち、今度は指先から無数の針を発射する。御鷹たちは盾を作り、各々の身を守ろうとする。そこで玲作は、彼らの頭上に小さな鉄球を作り、そこから雷のようなものを落とす。眼前の針に気を取られていた彼らに、この一撃を避けられるはずはなかった。三人の体内を、高圧電流が駆け巡る。御鷹は力尽き、地に膝を突く。竜也は酷く咳き込み、奏美は痛みに悶えながらしゃがみ込む。もはや、彼らは戦いを続行できる状態にない。
玲作にはまだ、彼らを殺す意志はない。
「さあ、研究所に引き返すが良い。お前たちはヒーローで、マグスはヴィランだ。その構図が成り立つ限り、医学の未来は明るいだろう」
その発言に御鷹たちが不満を覚えたことは、もはや言うまでもないだろう。しかし、今の彼らには玲作に打ち勝てるだけの力がない。
奏美はよろよろと立ち上がり、御鷹と竜也に指示を出す。
「撤退しよう。今のままじゃ、まだドクター・マガミには勝てない!」
これ以上戦っていても、得られるものは何もない。二人は奏美の指示に従う。
「ああ、わかった」
「……ミッション中止だ」
彼らはメタルミストを引っ込め、奏美の後についていった。
三人の背中を見送りつつ、玲作は笑う。
「ククク……私を生かしておけば、竜也の持病を治せるかも知れないというのに」
何やら彼には、何らかの秘策があるようだ。
*
マグスバスターたちは研究所に引き返した。奏美は黄土色の液体を飲みつつ、何かを作っている様子だ。
「これは……何を作っているんだ?」
御鷹は訊ねた。奏美は得意げに笑い、彼の質問に答える。
「オートミストだよ。これは従来のメタルミストと違って、AIによって動くんだ。これは自動で所有者を守り、自動で敵対者を攻撃する代物だよ。これを従来のメタルミストと併用すれば、ワタシたちにも勝ち目があるかも知れない」
どうやらこの女は、ただで転ぶような器ではないようだ。そんな彼女に対し、御鷹は案を出す。
「……俺たちの体もメタルミストにしないか? 戦うために」
「それは無理だよ。ワタシの専門は機械工学だし、医学に関しては素人だからね」
優秀な科学者にも、できないことはあるようだ。




