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Humanity Magi  作者: やばくない奴
全ての元凶
58/71

赤い輝き

 あれから一時間ほど経過し、愛恋(あれん)たちは無事にマグスたちを逃がし終えた。愛恋は瑞葉(みずは)(ゆう)を連れ、集落へと引き返す。


 彼らの目に飛び込んできたものは、壮絶な光景であった。


 玲作(れいさく)の右腕が大きな刃に変形し、傷だらけの紅蓮(ぐれん)の腹を貫いている。玲作は全くの無傷だが、紅蓮は虫の息だ。

「紅蓮!」

 愛恋はライオンに変身し、彼女の方へと駆け寄った。玲作は己の左手を銃に変形させ、彼の方へと発砲する。エネルギー弾は愛恋の腹に直撃し、小さな爆発を起こす。彼は苦しそうな声を上げ、後方へと吹き飛ばされた。続いて、瑞葉は玲作を凍らせ、祐は彼の体に有毒植物を絡ませる。しかし玲作の全身からは刃が生え、氷と蔓を一瞬にして破壊する。三人の力を束ねても、この男に打ち勝つには及ばないようだ。


 紅蓮の体は消えかかっている。彼女がメディカと化してしまうのも、もはや時間の問題だ。彼女は愛恋の方へと目を遣り、彼に遺言を託す。

「愛恋……瑞葉のことは任せたぜ」

「紅蓮!」

「オレはオメェを信じてる。そして、御鷹(みたか)のこともだ」

「消えちゃダメだ! 君はまだ生きる必要がある!」

「へへ……悪いな。流石のオレも、自然の摂理だけは手に負えねぇ。オレは……ここまでのようだ」

 もはや彼女が助かる手立てはない。紅蓮の体は発光し、掌に収まる大きさの赤いメディカへと姿を変えた。その表面には夕日が映り込んでおり、光沢の美しさを物語っている。この時、愛恋たちは時間が止まったような感覚を覚えた。瑞葉は数瞬の静寂を破り、玲作の体を凍らせる。その隙を狙い、祐は赤いメディカに植物の蔓を絡めた。そして玲作が氷を打ち破るのと同時に、彼はメディカを回収する。愛恋はすぐに竜に変身し、大声を張り上げる。

「逃げよう、瑞葉! 祐!」

 その指示に従い、二人はすぐに彼の背中にまたがった。瑞葉は巨大なドライアイスと水を作り、自分たちの周囲を白い煙で包み込む。

「目眩ましか……小賢しい真似を」

 玲作は大砲に変形させた両手を前方に突き出し、凄まじい火力の光線を発射した。彼の目の前で、白い煙と黒い煙、そして砂煙が交じり合う。そして、それら全てが風の中に消えた時、そこにはもう愛恋たちの姿はなかった。

「ふ……逃がしたか」

 玲作は両腕を元に戻し、その場を去った。



 愛恋たちが向かった先は、奏美(かなみ)の研究所だ。研究所では、奏美と御鷹と竜也(りゅうや)の三人が待ち構えていた。愛恋は先ず、彼らに紅蓮の死を伝えた。次に彼は御鷹の手を掴み、赤いメディカを握らせる。

「……紅蓮は、君のことを信じていた。だからこれは、君に持っていて欲しい」

 言うならば、このメディカは形見だ。御鷹はそれを握りしめ、拳を震わせる。

「そっか。あの紅蓮が……死んじまったのか。信じられないし、信じたくもないな。俺の頭が、感覚が、アイツの死を受け入れることを拒んでいるよ」

「僕も同じ気持ちだよ……御鷹。だけど、僕たちはこの目で紅蓮の死を見届けたんだ。紅蓮なら絶対に負けないと思っていたのに……ね」

「もしかしたら俺たちは、紅蓮に重荷を背負わせ過ぎていたのかも知れないな。今度は、俺たちが背負う番だ」

 そう語った彼の中では、数多の感情が渦巻いていた。悲哀、怒り、闘志、正義感など、例を挙げればきりがないだろう。いずれにせよ、今はその感情を解き明かしている場合ではない。


 最初に案を出すのは、奏美だ。

「メタルミストのプログラムを破壊するためのナノマシンを作ろう。あの殺人衝動を克服できた御鷹になら、その強い意志をもってナノマシンを作れるはずだ」

「ああ、任せろ」

 御鷹は快く大役を引き受けた。

「心には、どんな武器にも優る力がある……か。今は、その言葉を信じてみるよ」

 そう呟いた奏美は、優しげな微笑みを浮かべていた。

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