命の秤
「ニュースです。先日、新宿駅にて、リベリオン・マギによるテロが発生しました。テロにはマグスウィルスが用いられ、感染被害は今でも拡大しているもようです。なお、このテロにより、政府関係者数名が殺害されました」
あれから一日が経ち、この事件は世界中を騒がせた。多くの人間とマグスが犠牲となった悲劇を胸に、御鷹は誓う。
「俺は今日から、研究所を拠点にする。竜也を野放しにはできないからな」
竜也の狼藉は、彼にとって看過できないものだ。ゆえに御鷹は集落を離れ、奏美と行動を共にすることを選んだ。彼に続き、奏美も竜也を責める。
「勝手な行動は許されないよ……竜也。金輪際、アナタはあの集落に立ち入らないように」
彼女が御鷹の肩を持っている現状は、実に心強いものだ。
テレビでは、まだニュースが流れ続けている。
「マグスウィルス感染症は、メディカの使用以外の治療法が確立されていません。メディカはあらゆる細菌、ウィルス、毒などを癒す力を持つ、マグスが死亡する時に生み出される宝石です」
やはりマグスウィルスの被害が拡大している今、世間はメディカを必要としているようだ。竜也は御鷹を睨み、主張する。
「今のニュースの意味がわかるか? 世間は今、メディカを必要としている。違うか? 僕が救わなければならない……人間を」
もはやマグスの人権など、彼の眼中にはない。そんな彼の胸倉を掴み、御鷹は激昂する。
「人間の命は、マグスの命より重いのか⁉ マグスウィルスを生み出したのも人間で、戦争を引き起こしたのも人間で、人間とマグスを敵対させたのも人間だろ! 何故マグスがその尻拭いをしなければならないんだ!」
「一人の人間が全ての元凶であれば、不特定多数の人間の命を不意にできるのか?」
「違う! だが、そのためにマグスの命を不意にすることは間違っている!」
両者共に、一歩も譲らない舌戦だ。奏美は二人の間に割って入り、仲裁を試みる。
「二人とも、もうやめよう。ワタシたちの敵はドクター・マガミなんだ。仲間同士で言い争いをしている暇があったら、奴を倒す方法を考えるんだ」
彼女の言い分はもっともだ。御鷹は舌打ちをし、すぐに竜也を離した。彼の怒りはまだ静まってはいないが、ここで怒鳴り続けていても仕方がない。
「すまない……奏美」
「とりあえず、ワタシとハグをして落ち着こうか」
「いや、それはやめておく」
御鷹はハグの誘いを断り、ため息をついた。
*
その頃、マグスたちの集落には、無数の軍人が押し寄せていた。彼らに立ち向かうのは、四人のマグスだ。愛恋は恐竜に変身し、大きな尻尾で軍勢を蹴散らす。祐はサンタンカモドキの猛毒により、迎え撃つ者たちを即死させる。紅蓮は灼熱の炎をまき散らし、瑞葉は標的に氷柱を突き刺す。四人は息が合っている。この四人が揃えば、向かうところ敵なしと言ったところだろう。しかし、軍人たちは皆、その手に例の魔法兵器を持っている。数多の魔法がぶつかり合い、集落は大混戦となっていた。
紅蓮は玲作の話を思い出し、優しく微笑む。
「そうか……オメェらは、その機械に部品として取り込まれちまったんだよな。良いぜ……今、楽にしてやるよ」
彼女は両腕を広げ、左右に炎で象った竜を放つ。竜は敵軍を包み込み、魔法兵器を次々と破壊していく。愛恋たちの戦いは、まさしく順調であった。
そんな彼らの前に、一人の男が姿を現す。
「そろそろ……私が動く時が来たようだな」
真上玲作だ。
彼の放つ禍々しい雰囲気は、その場にいる全員を圧倒した。紅蓮は悪寒を噛みしめつつも、不敵な笑みを浮かべる。
「とうとう大将のおでましか。ここはオレが引き受ける……オメェらは集落の連中を逃がせ! 一人残らずだ!」
愛恋たちは、彼女の強さをよく知っている。
「任せたよ……紅蓮!」
愛恋は祐たちを連れ、集落を駆け巡った。




