忌まわしき炎
翌日、御鷹はいつもの集落に戻った。彼は愛恋から、政府の陰謀や玲作の素性について聞かされた。
「……そうか。アイツが……全ての元凶だったんだな」
「そうなるね。今の僕たちには、大きな課題が二つある。一つはドクター・マガミを倒すことで、もう一つは全ての真実を国民に伝えることだ」
彼らの戦いは、ついに国そのものを敵に回すほどのものに発展していた。紅蓮は二人の肩に手を置き、ある提案をする。
「今は迅速に行動を起こす必要がある。政府の連中が対策を講じる前に、オレたちは動かねぇといけねぇ。行くぞ。御鷹、愛恋」
御鷹は首を傾げ、彼女に問う。
「行くって……どこにだ?」
「リベリオン・マギの拠点だ。司令官に全てを話し、組織の連中にも手を貸してもらう」
彼女は答えた。御鷹たちは頷き、すぐに準備に取り掛かった。無論、この作戦には瑞葉も同行する。強大な敵の存在を前にして、彼らは確かに結束している。
数時間後、御鷹たちはリベリオン・マギの会議室に辿り着いた。全ての真相を語った紅蓮は、秀一を仲間に引き入れようとする。
「司令官……真の敵はドクター・マガミだ。ここは一つ、オレたちに力を貸して欲しい」
「ふむ……つまるところ、結局は人間が我々の敵だったということだな。ドクター・マガミも、政府の連中も、同じ人間だ」
「今はそんなことを言っている場合じゃねぇだろ! この戦争を終わらせるためにも……」
「終わらせてなるものか! 人間は敵だ! 我々は人間によって人権を失い、人間によって尊厳を踏みにじられてきた! そんな忌まわしい種族と手を組めというのか? 悪い冗談もほどほどにしてもらいたい!」
「そうか……それなら仕方ねぇな」
話し合いは通用しない。紅蓮は両手に炎をまとい、彼を睨みつける。彼女はそのまま両手を前方へと突き出し――――
「オレはもう、オメェにはついていけねぇよ」
――――灼熱の炎を放出した。秀一は全身を焼かれつつ、かつて自分が四肢と片目を失った時のことを思い出した。彼の脳裏には、彼に暴行を加えてきた人間たちの姿が鮮明に映し出されている。
「やめろ! 私はまだ、死にたくない! 祐! 何をしている! 早くコイツを止めたまえ!」
押し寄せるトラウマを前にして、秀一は酷く取り乱している。その横で、祐は苦笑いをしながら肩をすくめている。
「コイツら全員の相手をしろって? ミーが? 無茶振りがすぎるよん。司令官」
「ふざけるな! 何故だ! 何故、私が苦しまねばならぬのだ! これが、これが祝福されし命だと言うのか!」
「瑞葉ちゃんも紅蓮ちゃんも、組織を裏切った。それってつまり、司令官に人望がないってことじゃん。ミーだって、ユーなんかのために命を張りたいとは思わないよん」
「紅蓮! わかった! もうわかった! 私の力ならいくらでも貸そう! だから、こんな真似はよせ!」
秀一は怯えていた。過去の悲劇と現在の死の危機が交わり合い、彼の正気を奪っていく。その様を冷たい眼差しで眺めつつ、紅蓮は言う。
「オメェは司令官の器じゃねぇ。これからのリベリオン・マギを率いるのは、このオレだ」
彼女の目の前で、秀一の叫び声が掠れていく。彼の動きが鈍っていく。その身を焼かれていく中で、秀一の意識は徐々に薄れていく。
「ユグドラーム……何故……私を……救ってはくれぬのだ。私は……ずっと……ずっと……苦しんできたというのに……」
それが彼の最期の言葉だった。彼は苦痛に顔を歪めたまま、力尽きるように息絶えた。紅蓮は祐の方へと目を遣り、不敵な笑みを浮かべる。
「今日からオレのことは、司令官と呼べ」
「ウェーイ! それが良いね。ユーたちの話を聞く限り、少なくともミーたちの利害は一致しているしね」
意外にも、祐は彼女の誘いを快く受け入れた。




