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Humanity Magi  作者: やばくない奴
揺らぎ
46/71

事情聴取

 奏美(かなみ)はマグスの集落に到着した。彼女を出迎えたのは、たくさんのマグスたちだ。彼らは皆、彼女を警戒し、怒りの交じった表情を見せている。奏美はすぐに両腕を上げ、自分が武器を持っていないことを示す。

「……今のワタシに戦意はない! ワタシはただ、リベリオン・マギにまつわる情報を集めにきただけだ!」

 ここで彼らに敵意を見せることは、百害あって一利なしだ。奏美は彼らに対し、友好的な姿勢を見せなければならない。


 その直後だった。


「お前はマグスの敵だ!」

「消え失せろ!」

「テメェの顔だけは見たくねぇ!」


 辺り一帯は怒号に包まれた。マグスの軍勢は一斉に石を拾い集め、それを彼女に投げつけ始める。無論、武器を持っていない奏美に抵抗の手段はない。彼女は無数の石を浴び、全身を傷つけられている。

「誤解だ! ワタシは……ワタシはアナタたちを殺しにきたわけじゃない! 今だけは、アナタたちの力が必要なんだ!」

 奏美は大声を張り上げ、必死に訴えた。しかし、愛恋(あれん)と情報を共有している彼らは、御鷹(みたか)が暴走した元凶を知っている。そんな彼らが、彼女のことを許すはずはない。

「アタシたちは、ただひっそりと生きてきただけなのに!」

「テメェは許されねぇことをしたんだ! この悪魔!」

「今度は何を企んでいるんだ! 海邦奏美(わたくにかなみ)!」

 もはや暴徒と化しつつある群衆は、何かに取りつかれたように石を投げ続ける。奏美はおぼつかない足取りで体を支え、肩で息をしている有り様だ。


 その時、マグスたちの前に、一人の少年が飛び込んできた。

「もうやめよう! そんなことをして、一体何になる!」

 愛恋だ。彼は両腕を大きく広げ、奏美の盾となった。人望のある彼が起こした行動により、マグスの軍勢は一斉に動きを止める。彼らは依然として彼女に憎しみの目を向けているが、もうこれ以上攻撃を続けるつもりはなさそうだ。


 奏美は言う。

「ありがとう……愛恋。今日だけは、ワタシを信じてくれないか?」

 無論、愛恋は彼女のしてきた所業を知っている。ゆえに、彼が彼女を信用することは難しいだろう。しかし、奏美は真剣な眼差しをしている。マグスを憎んでいるはずの彼女が彼を頼るということは、余程のことだ。

「わかった。とりあえず、僕の家まで着いてきて」

 彼は、奏美を自分の住む仮設住宅へと案内した。



 彼女が仮設住宅に立ち入ると、そこには瑞葉(みずは)紅蓮(ぐれん)がいた。

「何の用ですか? 海邦奏美」

「オメェだけは、ここに来るべきじゃねぇだろ」

 二人はあまり、奏美を歓迎していないようだ。奏美は小さなため息をつき、スマートフォンを取り出した。画面には、先ほど彼女がドローンで捉えた映像が映し出されている。

「ドクター・マガミと美山薫(みやまかおる)は、同一人物だ。彼は人間の味方なのか、あるいはマグスの味方なのか……今はそれを調べている。最悪の場合、ドクター・マガミは両方の敵である可能性もある。美山薫について、何か知っていることはないかな?」

 そう――――玲作の素性がわからない以上、彼は誰の敵にもなりうる存在なのだ。紅蓮は悪戯な笑みを浮かべ、薫について言及する。

「薫か。アイツは確かに、何かときな臭ぇ奴だよ。組織の中で、アイツの経歴を詳しく知っている奴は一人もいねぇからな。おまけに、アイツが何を考えているのか……そいつはオレにもわかりゃしねぇんだ」

 何やら薫は、組織内でもあまり信用されていないようだ。彼女に続き、瑞葉も言う。

「美山薫がリベリオン・マギに来たのは、三年前の六月のことでした。それまで、我々にはマグスウィルスを作る技術などありませんでした」

 次に発言するのは、愛恋だ。

「三年前の六月……ね。その直前に、何か予兆と思しき大きな出来事はあったかい?」

 奏美の表情が一変したのは、その直後である。

「ワ……ワタシは……敵を見誤っていたというのか⁉」

 そう言い放った彼女は、何かを悟ったような顔をしていた。

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