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どうやら悪逆非道の女領主に転生したようです。目の前には将来私に復讐する子供達がいます。どうしよう  作者: 夢編 此方
第六章

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70/70

王との謁見

この作品の執筆に悩んでいるのと、別コンテスト応募作品執筆中のため、この作品の執筆がめちゃくちゃ遅れてます。申し訳ありません。

一段落着いたら執筆頑張ります。


(ヤバいヤバいヤバい)


 柔らかなレッドカーペットが敷き詰められた一室で、私は極度の緊張から、心の中でヤバいを連呼していた。


 理由は二つ。

 

 一つは、堅牢な壁と堀に囲まれた角のような二本の塔が特徴の王城ダスファレイドの凄まじさ。

 ゲームでは、学校同様背景でしかなく、また学校よりも登場頻度は少ないので、そこまで期待はしていなかった。

 

 そんな私の思いとは裏腹に、待ち構えていたのは桁外れの巨大さと次元の違う荘厳さ。

 昔、テレビで見たドイツの古城とかを想像してたんだけど、生きている城は私の想像を遥かに凌駕していた。

 

 一瞬で魅了され、圧倒された私は城門を潜った時からずっとガチゴチに緊張。

 

 中も中でめちゃくちゃ広いし、あちこちキラキラしてるし、使用人や警備の質も公爵家の屋敷とは色々段違い。

 待機室で出されたティーなんか繊細で、壊してしまいそうで震えながら飲んだわ。もう絶句、白旗です。


 で、もう一つが、これから父王と会うことだ。

 

 登城目的がそれだったんだから今更って話なんだけど、いざとなるとやっぱり緊張するじゃん?

 

 降嫁した以上家臣としての謁見だから、真面目に、真剣に、そういう態度で臨まなければならない。

 実質、私は初めての父王との顔合わせだ。娘として顔を合わせるよりは他人のように振る舞う方が楽だろう……そう思ってたんだけどね、やっぱりね……。


(心臓のバクバクが止まらん……!!)

 

 侍従長に案内され、長い廊下の先にあった謁見の間の扉を前に、私の緊張は最高潮まで高まっていた。


 侍従長が左右にいる扉番兵に目配せする。扉番兵は、持っていた槍の石付きを一度、床に大きく叩き付けた。


(ひぃっ! とうとう来てしまったぁ……!)

 

 それが所謂ノック代わりなのだが、その力強さに、私の身体は無意識に跳ねる。


「バルカン公爵夫人、アマーリエ・バルカン様、ご到着でございます」


 侍従長の言葉を合図に、重厚な扉がゆっくり開けられていく。その間、侍従長は横に逸れて私に向かって頭を下げる。


(ここからは、私一人)


 ゴクリと唾を呑むが、乾いた喉が潤された感じはしない。

 領地の屋敷で、パーシーたちを相手に、毎日毎日何度も何度も練習したから、作法は頭の中に入っている。王や名だたるお偉方を前にしたイメトレもした。

 あとやれることは、腹を決めること。


 扉が完全に開放されると、ゆっくり、深呼吸を一つ。


(女は度胸!! っしゃ!!)

 

 覚悟を決めて、謁見の間に一歩足を踏み入れた瞬間、まずその高さに意識を奪われた。


 何本もの白い柱が天井へ向かって真っ直ぐ伸び、その先で交差するアーチは教会の聖堂を思わせる。

 遥か上方に設けられた窓から差し込む陽光は、白大理石の床へ降り注ぎ、室内を神々しいほどの輝きで満たしていた。

  

 正面には、左右から優美な弧を描いて高座の玉座へと合流する二連階段。幾十もの階段を上った先にある玉座に腰掛ける王の姿は、背後の壁に設置されたステンドグラスの光に照らされ、七色の輝きを放っているような気がした。


(綺麗……)


 部屋の神々しい美しさに魅了されながら、扉から玉座へと繋がる赤と金で彩られた絨毯を歩く。

 けれども両脇の壁に整然と立ち並ぶ近衛騎士たちの存在が、王と相見える場所であることを嫌でも思い起こさせた。

 呆けて緩んだ私の気持ちが一気に緊張を取り戻す。


 階段を上がり、二連階段の中央付近、広く平らな踊り場で足を止める。ここから先は王の御前に直結するからだ。

 ここの左右にも近衛騎士に加えて高官たちも佇んでいるが、どんな顔触れかなんて見る余裕はない。

 

 王の許しがあるまで顔も上げられない。

 なので私はまだ父王の顔を見れていない。


 作法通り、ドレスの裾を摘み、深く膝を折る。


「王国を導く光にして、天穹を統べる偉大なる統治者、アーディー王国国王陛下に拝謁致します。陛下より、バルカン公爵領を賜りしアマーリエ・バルカンにございます」


 おっし噛まずに言えたー!

 練習に付き合ってくれた皆有難う!!


「面を上げよ」


頭の中で一人喜びの舞を踊っていた私は、腹に響くような低い声にゆっくり顔を上げた。

 

 後ろに撫で付けた濡鴉のような美しい黒髪と、全てを見透かすような切れ長の金眼。

 高く通った鼻の下と形の良い顎には美しく整えられた髭を蓄えている。

 ただ座っているだけだというのに、圧倒的な威圧感は、まるで洗練された武人を感じさせる堂々とした王者の風格。

 だが、玉座に鎮座する男の顔は、酸いも甘いも噛み分けて歳を重ねた男の色気を纏っていた。

 

 ——一言でいえば、イケオジである。


 このイケオジが、アーディー王国の王にして、アマーリエ・バルカンの実父ジェファーソン・アーディーだ。

 

(待って! 《クロ約》の立ち絵もろモブ顔だったじゃん!? アマーリエの記憶よりも全っ然かっこいいじゃんっ!?)


 ゲームに出てくる王は、第一王子のストーリー以外とはほぼ関係ないからか、のっぺりとしたイラストだったし、アマーリエの記憶でも、ここまでシブかっこいいイメージではなかった。

 

 完っ全に油断した。

 

 まあ、確かに、あのモブ顔からじゃあアマーリエみたいな美女生まれないわな。

 

 娘目線でも父親のイメージって変わるものだったりするのかな?

 こんなイケオジがアウトオブ眼中だなんて……。

 

 あ、父親か。

 

(血の繋がった父親なのが悔やまれる!!)

「久しいな、バルカン公爵夫人。ライニールの葬式以来だから六年ぶりか」


 ひぃ、声も良い!

 

「お久しぶりでございます、陛下。その節は、弔問くださりありがとうございました」

「……元気そうで、安心したぞ」

「っ……!」


 その言葉に、浮かれていた私の胸の奥が一気に熱くなる。

 

 私はアマーリエであり、アマーリエではない。

 けれど、この人に心配されると、どうしようもなく嬉しいと思ってしまった。

 

「……陛下も、ご健勝で何よりでございます」


 突然の優しい言葉に、鼻の奥がツンとする。不意打ちで父親出すなんてズルい男だ。なんとか笑顔で誤魔化す。

  

「本来ならもっと早く会うつもりだったが、友好国である大公国(リンドブルム)帝国(シュヴァルツァ)との戦が始まってしまってはな……余も王である以上、国を優先せねばならなかった」

「心得ております。我が領地にも、少なからず流通の乱れや難民が流れてきておりましたので」

「報告は聞いている。そなたにも苦労を掛けてしまったな」

「いえ、私は陛下のお考えに従うだけでございます」

「うむ。そなたの忠義、嬉しく思うぞ。

 そういえば、領内の教育改革成功したそうだな。ルーベの民の六割が文字を読めるようになったというではないか」 

「はい。しかし、私の力だけではありません。運が良かったのと、協力してくれる仲間、ルーベの民の向上心のお陰でございます」

「謙遜するな。教育改革は長い歴史の中でも、どの領主もなし得なかったことだ。偉業と呼ぶに相応しい」

 

 ……それな私でもアイデア浮かんだんだし、単に領主である貴族連中にする気もやる気もなかったんじゃないかなと思う。口が裂けても言えないけどさ。


「勿体なきお言葉でございます。すべては陛下のご威光の賜物です」


 王様一番な国だからね。とにかく王様を立てる台詞で返さねばならない。

 

「国の発展に貢献した褒賞を与えようと思うておる。とはいえ、そなたは公爵。富も栄誉も持っているからな。これ以上なにを与えるべきか迷うておる。故に、そなたが望むものを与えようと思う。欲しいものを考えておいてくれ」

「わかりました。陛下のご厚意、感謝致します」

 

 ……これって、個人的に欲しいものでいいのかな? そしたら一つしかないんだけど。

 それとも領主らしく、領民に貢献するものの方がいいのか……?

 

「うむ。それでは、これで王としての話は終わりだ。

 ここからは格式張った物言いは良い。父と子として話そうではないか。皆のもの、下がれ」


 そう言って王が手を払うと、高官も近衛騎士たちも一礼した後に一斉に部屋を出ていく。

 重厚な扉が閉められると、広い室内はシーンと静まり返る。つい先程まで甲冑の鳴る音が響いていたので、耳に妙な違和感が残った。


「リエ」


 扉が閉まるのを見ていたら、優しい響きで愛称を呼ばれた。

 

 

お読みいただき、ありがとうございました(*^^*)

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