悪女の運命、書き換え完了!
いいね、ブクマ、感謝です!
なんとか、なんとか何年も前から構想していたところまで書き切りました…!!
ひとえに読者の皆様のお陰でございます!
ありがとうございます!
※なお、こんな事言ってるしタイトルも完了言ってますけど、まだ続きます。
丁度一区切りついたので、次の章に入る前に校正とか手直ししてきます。
アムズ前伯爵とキャロラインの遺体を乗せた移送馬車が領主街ルーベを発ったのは、一週間程前だ。
「キャロライン・アムズの遺体は、バルカン領の境にある砦前の平原で燃やされたそうです」
「……そう」
執務室。窓の外を見ながら、背中でパーシーの報告を聞いていた。
この世界に『火葬』という言葉はない。
何故なら、土葬が基本だからだ。
遺体を燃やされるのは犯罪者だけで、遺体だからとて身体に傷を負わせるようなことは忌むべき行為なのだそうだ。
だから『燃やされる』という表現をされる。まるで人間扱いされていない言い方に僅かな不快感を覚えた。
でも、彼女がしてきたのはまごうことなき犯罪なのだから、何も言えなかった。
せめて私だけでも火葬と思う事にして、黙って聞き流している。
キャロラインの遺体引き取りは、『犯罪者だから』という理由で、アムズ伯爵家にも生家である男爵家にも断られた。
そこに、夫であるアムズ前伯爵が引き取りを申し出てきたのでこれを了承。幽閉先で埋葬することとなった。
だが、アムズ領までは遠い。
だから途中で火葬することになったのだった。
形はどうあれ、キャロラインが帰ってくることは、アムズ前伯爵にとっては何にも代え難い喜びだろう。
(どうかキャロラインが、何もかも……特に私のことを全部忘れて、安らかに眠れますように)
遥か彼方の大地でこの世から姿を消したキャロラインに、私は一人、黙祷を捧げた。
――それを終えるのを待っていたかのように、執務室の扉が叩かれる。入室を促すと、パーシーが扉を開け、そこからヨツバとニーヴェルが入ってきた。
「ヨツバ、ニーヴェル。急に呼び出して悪いね。仕事はどう? 楽しくやれている?」
「はい! アマーリエ様のお陰で、毎日とても楽しいです!」
「お気遣い頂き、有難うございます。ヨツバの言う通り、充実した日々を送っております」
事件から二ヶ月以上。この間、何もしていなかった訳じゃない。
そりゃ確かに最初は医者呼ばれて暫く静養するように言われて休んだけど、暇過ぎて逆に死にそうになったから一週間くらいで復帰。
誘拐事件の聴取とか後始末、不誠実な使用人たちへの処罰や人員整理、新しい使用人の補充、日常の業務などなど……それらをこなしている間に、今に至る。
ヨツバたちももう客人ではなく、使用人として屋敷に置いていたので、今のヨツバはメイド服。
可愛すぎて目の保養。
一応、彼女たちにはそれとなく人を付けていたけど、本人たちが言うように恙無く職務をこなしているようだ。ひとまずは一安心である。
「そうか、ならよかった。それで、今日呼び出したのは他でもない。改めて二人にお礼をさせてほしくてね」
あの夜、二人が救出部隊と共に居た理由なんだけど、なんと私の誘拐にいの一番に気付いたのがヨツバとニーヴェルなのだ。
「ヨツバ。君は、火事の報せを受け、自分の危険も顧みずに私の元と駆けつけようとしてくれた。その優しさと勇気のお陰で、誘拐の早期発見に繋がった。
次に、ニーヴェル。君はキャロラインの怪しい行動にいち早く気付き、馬車に目印を付けた。そのお陰で、騎士たちが馬車を見つけることができた。素晴らしい判断能力だった」
補足すると、火事の報せを聞いたパーシーや他の使用人も、最初は私のところに駆けつけようとした。だけどキャロラインに自分がいるから、と火事の方に行かされたらしい。
で、誰も来ないようにした隙にキャロラインは手下と共に私を連れ出した。
ヨツバは急いで私のところに向かっていた所、火事の消火に向かおうとしていたニーヴェルと鉢合わせ。強引にニーヴェルを連れて私の部屋に来たら、キャロラインだけでなく、私の姿も無い。
慌てて探しに出たところで、月明かりの下、裏門で怪しい行動をしている人影を発見したニーヴェル。
嫌な予感がして窓から外に飛び出したものの、ニーヴェルはこう考えた。
『子供一人では止めることはできない。だが、声を上げても正反対で起こっている火事に集中して声は届かないだろう。ヨツバに人を呼んでもらっても、馬車は今まさに出ようとしているのだから間に合わない』、と。
そこで咄嗟に、消火の為にと持ち出していた桶に縄を結び、走り出した馬車に投げつけ……見事とは言い難いが、なんとか馬車の後部に絡みついたそうだ。
話を聞いたイーロンは騎士団を率いて、桶が引き摺られた後を見て追跡。
最初こそヨツバとニーヴェルは置いていかれそうになったが、私を心配するあまり走ってでも付いてきそうになったから、イーロンが『その意気や良し!』と二人も追跡に加えたそうだ。あの男は本当に適当だな。
桶を引きずる音なんて普通気付きそうなものだが、御者は極度の緊張と恐怖から、一刻も早く帰還することに意識を向け過ぎてしまい、異音は耳に入らなかったようだ。
いやはや。ニーヴェルのなんという判断力、そして投擲力と幸運なのだろうか。主人公補正か、ダイスクリティカル入ったな絶対。
勿論助けられてすぐにお礼を言ったけど、あのときはバタバタしていてちゃんとしたお礼が出来ていない。
なのでようやく落ち着いた今、改めて二人に向かって頭を下げる。
「なっ、お、奥様! 頭をお上げください!」
「わっ、そ、そうですよ! わたしたちはアマーリエ様に恩返しをしているだけですから!!」
創作物で『貴族が頭を下げるのは異例。だから、頭を下げると驚かれる』と表現されているのをよく見たが、まさにその通りの反応をされた。
「確かに頭を下げるのは貴族のマナー違反だけど、心からの感謝を伝えるには、頭を下げるのが一番分かりやすいだろ? だから、これはここだけの話にしてね」
頭を上げて微笑みかけながら二人を交互に見る。「はい!」と満面の笑みで頷くヨツバに、「わ、わかりました……」と高揚したような顔で返事をするニーヴェル。
「それで、感謝の気持ちとしてなにか褒美を二人に渡したいと思って考えてみたんだ。
パーシーたちと話し合った結果……まずはヨツバ。ニーナ、ミツバの三人は、君たちの当初の希望通り、正式にバルカン公爵家で預かることにした。ただ、こちらの都合上、養子としての受け入れはできない。でも、私が君達家族にできる最大限の保証をするつもりだ」
「本当!? やったぁ! アマーリエ様、有難うございます!!」
『こちらの都合』は、私が王族の血筋だからそう簡単に養子を迎え入れられないこと。何より、私の目標である『愛のある幸せな結婚』をする為には、養子がいるとゴタゴタしそう……という、めちゃくちゃ個人的な理由からだ。幾らヨツバとミツバが可愛くても、これは譲れない。初志貫徹。
でも普通にちゃんと喜んでくれて良かった。
「どういたしまして。
次に、ニーヴェル。君の方は当初の希望通り、というわけにはいかない。なので、何か希望はある? こちらで出来る限りのことはするよ」
「私は、このまま執事として、アマーリエ様にお仕えしたいと思っております」
「ん? あ、ああ、それは全然いいよ。使用人、そこそこの数いなくなってるからね。寧ろ有難い」
「ありがとうございます。このニーヴェル、誠心誠意お仕えさせていただきます」
「うん、これからもよろしくね。で、褒美は何がいいの?」
「え?」
「え?」
……あれ? もしかしてなんか会話噛み合ってない? お互いの顔を見つつ、はてなマークを乱舞させている私に、控えていたパーシーが教えてくれた。
「……奥様。つまり、ニーヴェルは奥様に仕えられることが褒美だと申しているのです」
「えっ! それどんなドM?」
「どえむ? とは、どういう意味でしょうか……?」
「な、なんでもない。教えてくれて有難う、パーシー。というか、なんで私に仕えたいの?」
「……私は、初めてこの家を尋ねてからずっと奥様に無礼と迷惑を掛けていました。自分がこの世界の中心だと疑っておりませんでした。
ですが、奥様は私と真っ直ぐ向き合い、私を正してくれるだけでなく、故郷の危機も救ってくださいました。
他の使用人との揉め事も、侮蔑も軽蔑もせず、親身に対応してくださいました。
奥様の深い慈愛と度量の大きさに感銘を受け、私自身の小ささ、愚かさに気づけたのは奥様のお陰です。
このご恩はこの身を賭して、一生をかけて返していきたいと思っております」
……見違えたな、ニーヴェル。
「有難う。そんなに褒めてもらえるなんて本当に嬉しいよ。
でも私が全て正しい訳じゃない。だから私だけを盲目的に信じるのは良くないよ。
今回新しい世界を見せたように、これからまた新しい世界を見つけることが出来ると思う。
私に一生を賭けるなんてことはせず、これからの長い人生、いろんなものを見て、考えて、取捨選択するといいよ」
「……わかりました。肝に銘じておきます」
「うん。
というわけで、私に仕えるのはご褒美じゃない。もっと他にいいものあるだろうから、考えておきなさい」
「……はい。ありがとうございます」
そう言って、ニーヴェルは深く頭を下げた。
話は終わった、と二人に戻るように促そうとしたところで、ヨツバが口を開いた。
「……あの、アマーリエ様。一個だけ、お願いしてもいいですか?」
「ん? 何? 私に出来る範囲であればいいよ」
「……じゃ、じゃあ! アマーリエ様のこと、『お姉ちゃん』って呼んでもいいですか?!」
……はい?
「おねえ、ちゃん?」
「はい! 私はミツバのお姉ちゃんだけど、ずっと『お姉ちゃん』が欲しかったんです! アマーリエ様、お母さんに性格がそっくりだし!」
お母さん、と言われてハッとする。
あの夢……いや、死一歩手前の世界で出会った光の玉の言葉を思い出した。
――『娘たちをお願いします』――
……助けてくれた恩人の頼みだ。聞かない訳にはいかない。
(お姉ちゃん、か……)
なにより私自身、『お姉ちゃん』って呼ばれて嬉しくない訳がない! 前世の妹、周りに感化されて名前呼びしてたんだもん! 両親も『お姉ちゃんだから』なんて抑えてくるような人たちじゃなかったけど、妹からお姉ちゃん呼びはされたかったよ、普通に!
なのに、呼んでくれるのがこんな天使の如く可愛い子なんて、最高が過ぎる!!!!
……待て待て待て待て待て、落ち着け私。
下手にメロメロ喜んだら、ロリコンだと誤解されてしまうかもしれない。
(……ダメだ、ニヤけるな私。耐えろ。ここでデレたら威厳が死ぬ!)
密かに深呼吸を繰り返し、昂る心臓と気持ちを抑えつつ尋ねた。
「じゃあ、ヨツバ自身へのご褒美はそれでいい?」
「! 良いです! え、ほ、本当に良いんですか?!」
「良いよ。ね、パーシー? これぐらい、恩人へのお礼としては安いものだよね?」
「……まあ、良いでしょう。しかし、他人の前では呼んではいけませんよ?」
「やったぁ! わかりました、パーシー様! ありがとう、お姉ちゃん!!」
「ヨツバ、貴族なんだから『お姉様』の方がいいんじゃないか?」
「あ、そうか。ありがと、ニーヴェル! ありがとう、お姉様!」
「どういたしまして。私もこんなに可愛い妹分ができて嬉しいよ。
ニーヴェル、あとで美味しい高級菓子買ってあげる」
「はい?」
――結婚して子供を産んで、愛し愛される家庭を作るつもりだった。
(形は違うけど……これはこれで大団円、だな)
――こうして、私の周りは少し賑やかになった。
普通のOLが、元王族の高位貴族に転生。
しかもいずれ若くして処刑される運命で。
問題だらけの周囲をなんとかしようと奮闘してたら、一番の敵はめちゃくちゃ身近にいて。
誘拐されたりなんだりと情緒が大忙しだったけど。
結果的には、家族が増えて、信頼できる人も増えて、なんだかんだうまくやれている。
さて。次は――本命の「幸せな結婚」に向けて、頑張りますか!!
お読みいただき、ありがとうございました(*^^*)
※大団円言ってますけど、まだ続きます。(大事なことなので2回言う)




