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どうやら悪逆非道の女領主に転生したようです。目の前には将来私に復讐する子供達がいます。どうしよう  作者: 夢編 此方
第六章

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繋がった筋

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 目は開けた。

 だけど、視界ははっきりしない。ぼんやりとしていて、暗いことだけはわかった。

 耳にはガラガラ、パカパカと一定のリズム音が聞こえてくる。瞬きを繰り返して視界を取り戻してくるにつれ、それが馬車の音だと理解した。

 振動に揺れる身体を動かすと、長い髪が手に触れた。

 陸恵時代はショートカットだったことを鑑みるに、私は戻ってきたようだ。

 

(戻った、か。完全にアマーリエになっちゃったんだな……)

「まあ、起きてしまいましたか」


 突然聞こえてきた声に驚きながら飛び起きる。


「きゃ、キャロライン……?」


 私が寝かせられていた座席の向かい側に座っていたのは、月明かりに照らされた笑顔のキャロラインだった。

 

「ええ、キャロラインでございますよ。具合はいかがですか?」

「……まだ少し怠い、かな。私が倒れてからどれくらい経った?」

「二週間ほどでございます」

「にしゅうかん……」


 めちゃ時間経ってる……気分的には一日なのに。

 えーっと、倒れる前は何をしようとてたんだっけ……。

 ……そうだ、使用人たちの雇用を見直そうとしてて、その筆頭として、キャロラインには侍女長から降りてもらおうとしてたんだ。

 ってことは、あれ?

 

「……キャロラインはなんでここに……」

「幼い頃からアマーリエ様のお世話をしているわたくしだけが、アマーリエ様を看病するに相応しいからです」


 ……言いたいことは分かるけど……なんか、言い回しが気になるな……。


「そ、そういえば、なんで馬車に……しかも、こんな夜中に……」

「急ぐ必要があったのでございます」

「急ぐ? なんで?」

「ボヤ騒ぎがございまして。避難をしている途中なのでございます」

「ボヤ騒ぎ……!? ひっ、被害状況は? 怪我人は居なかったの? パーシーとか、ヨツバたちは?」

「パーシーの無事は確認致しました。現在、パーシーを先頭に鎮火に努めており、原因も調査中でございます」

「そう……。みんな、無事だと良いんだけど……。それで、どこに向かっているの?」

「着くまでの秘密です。でも、とぉっても楽しい所ですわ」

「……は?」


 秘密って……なんで……?

 

 そこまで会話して、この状況のおかしさに気付く。


(ボヤって言い切ってるなら、被害は小規模で済んでるんじゃ……? わざわざ危険な深夜に馬車を出して避難する必要ある……?)

 

 しかも馬車の周囲には他の使用人や護衛たちの気配もない。領主の私が単独で移動とか、夜逃げ以外で普通あり得ない。

 

 そして、キャロラインの様子もおかしいことに気付いた。

 こんな状況下、彼女なら兎にも角にも怒っているイメージなのに、今はただ、楽しそうに笑っている。


 ニコニコ、ニコニコ、と。


(……っ!? ま、瞬き、してなくない……?)


 歪めた瞳がただ一心に私を見る様子に気付いた瞬間、訳も分からず全身に悪寒が走った。

 

「まあまあ、アマーリエ様。寒いですか? まだまだ到着は先にございますので、デュベ(※欧州の掛け布団の呼び方)をしっかりかけてくださいませ」


 起きたばかりだから眠気はない。というか、今の悪寒でバッチリ目が覚めた。


(絶対、寝てはいけない……!)

 

 小刻みに震え出した身体を隠すように、掛け布団で身体を覆う。だが、横になる気にはなれない。横になった途端、キャロラインが側に来て頭を撫でられる想像が頭を過る。


(――怖い)

 

 何故か、恐ろしいという感情しか湧いてこなかった。

 

 かといって、このまま起きているのも息が苦しい。

 どうしよう……と考えあぐねていたが、私が寝ないのをどう取ったのか、キャロラインは勝手に喋りだした。


「二人だけでゆっくりと過ごすのは、久し振りでございますねぇ。あの男が死ぬ以前は、いつもわたくしと二人でお茶会をしたり、お出かけをしたり……本当に楽しゅうございましたわ。お互いの誕生日の時は、二人きりでお祝いをしたり、贈り物を贈り合ったり……ああ、そういえば……」


 遠い日の思い出に浸るように、目を閉じてうっとりしていたキャロライン。だが、次の言葉でぐりん、と再び仄暗い瞳を私に向ける。

 

「ねえ、アマーリエ様。どうして、あの時キウイを買ったんですか。わたくし、キウイは大嫌いだとあれほど申し上げていたのに」

「え……」


 キウイ? キウイって……なんのことだっただろう?

 

(え、待って、マジでなんの話? あの時っていつ……?)


 本当に覚えてない。多分、私からしたら日常的な些細なことだったからだと思うけど……。

 まさか、この記憶力低下は、三十七歳の魂の定着の所為じゃないよね?

 ――十中八九、元々の性格です。ハイ。

 

「いえ、キャロラインはわかっております。あの男が死んだ所為で、アマーリエ様は色々と忘れてしまったのですよね。わたくしがあれほど平民と関わってはいけないと教えていたのに、急に平民を受け入れるなんて……。

 ヨーキリス男爵家の小倅は籍は置かれているとはいえ、父親が誰ともわからない上、アマーリエ様に対する無礼の数々……いつ縊り殺してやろうかと思っていましたわ。あれの父親は間違いなく冷酷な犯罪者の子供です。ああ、恐ろしい。

 そうそう、あの娼婦が来た時なんかは大変でしたわ。あれが触れたものは処分と徹底清掃をすることになって……バカなメイドが誤って来客用のティーカップを出していた時は怒鳴りそうになりましたわ。すぐに捨てましたし、罰としてメイドの給料から弁償させましたから、ご安心ください」


 私の戸惑いに気づきをもしないキャロライン。悦に酔ったようにべらべら言葉を紡ぐ。

 

 娼婦って――多分、ケイレブ母子の話だよな。

 そんなことしてたの? 弁償って……壊した本人じゃなく、メイドに出させたとか理不尽が過ぎる。

 

「何より一番許せないのが、あの男によく似た娘と、アマーリエ様を悲しませた原因の女によく似た娘。最も憎まれている子供の癖に、図々しくも屋敷に居座り、アマーリエ様の迷惑も顧みずに口を出してきて……本当に目障りなことこの上ない。アマーリエ様がお優しいことは存知でおりますが、あんな卑しいネズミ共に心を傾ける必要はありませんよ。

 アマーリエ様はなにも気にしないでよいのです。

 ただ、好きなものを好きなだけ買って、わたくしと楽しく過ごしていれば良いのです。

 平民共は、アマーリエ様に好きなものを好きなだけ捧げる為に生きているのですから、苦しもうが野垂れ死のうが、どうでも良いのです」


 ――『平民共は、わたくしに好きなものを好きなだけ捧げる為に生きているのだから、苦しもうが野垂れ死のうが、どうでも良いわ』――

 

「……!!?」

 

 その言葉を聞いた瞬間、脳裏に焼き付いていたとあるスチルが蘇る。

 

 ラスボスたる悪逆非道の女領主の冷酷無比な美しさを表した一枚。

 主人公と攻略対象と相対した時に告げられる、彼女の純粋な残虐性を表した台詞。

 

 ——悪逆非道の女領主、アマーリエ・バルカン。

あの台詞と、まったく同じだった。


 頭ふあふあお花畑王女様が、男一人に裏切られたくらいでここまで性格変わるか? と疑問に思っていたことがここにきて合点がいった。

 

(……ゲームのアマーリエ・バルカンは、キャロラインによって作り出されたのか……)



お読みいただき、ありがとうございました(*^^*)

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