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どうやら悪逆非道の女領主に転生したようです。目の前には将来私に復讐する子供達がいます。どうしよう  作者: 夢編 此方
第六章

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時は遡り

いいね、ブクマ、感謝です!

 港町ヴィスナでニーヴェルらと再会した後のことだ。


 海が一望できる自室のテラス。ニーナには私にお茶と菓子を準備してくれた後、室内でのんびりしてもらい、一人のんびりお茶していた時だった。


「あー……波の音はやっぱりいいわ〜……。結婚して家督譲ったらここに住もっかなぁ」

「これ、ヨツバ! 入ってはいけません!! ニーヴェル様!」 

「あの、アマーリエ様。少々お時間いいですか?!」

一時(いっとき)の休息もままなないのか、私は……」

 

 テラスと部屋を繋ぐガラス戸を勢い良く開けて姿を現したのは、ヨツバとニーヴェル。その後ろを、慌てて止めようとしてくれていたであろうニーナが続く。


「……あのねぇ、君たち。今私はゆっくりしてるところなの。子供は子供だけで、元気に外で遊んでいなさい」

「も、申し訳ございません、アマーリエ様……! ほ、ほら、だから言っただろ、ヨツバ……俺達の話を聞いてくれる訳ないって……」

「そんなことないわ! アマーリエ様はとってもお優しい方なんだから! ですよね、アマーリエ様!」

「優しいかどうかは人によると思うよ。で、なに、話があるの? なんの話?」

「ほらね!」


 遊びの誘いとかじゃないならいいやと思って聞く姿勢に入る。

 すると何故かヨツバが鼻息荒く胸を張り、ニーヴェルは目を丸くしていた。なんなんだ、この二人……。


「あのね、アマーリエ様。お屋敷の人たちのことなんですけど……」

「よ、ヨツバ! アマーリエ様の采配に意を唱えるなどと、許されないことですよ!」

「でも、おばあちゃんだって大変だって言ってたじゃない!」

「いや、采配ってものじゃないんだけど……」


 転生前の記憶を取り戻す前の使用人そのままだからね……。


「使用人たちのことは、追々考えるつもりではいたけど、それがどうしたの? 何が大変だったの?」

「あのね、平民の人たちが、貴族の人たちにいじめられているの。お仕事をおしつけたり、邪魔したり、悪口とかもいっぱい言われるの! おばあちゃんもいっぱい仕事やらされてたし、ニーヴェルなんか、たたかれたりしてたんですよ!」

「は?」

 

 は?

 ……なにそれ、初耳なんだけど


 ニーヴェルを見ると、気不味そうに目を逸らされた。でもヨツバに「ニーヴェル!」とせっつかれて、おずおずと口を開いた。

 

「あの……アマーリエ様は俺、いや、私の素性はご存知ですが、他の方々は知らないので……。で、ですが、反省を示す為に、その待遇を甘んじて……。……いえ」


 一端そこで言葉を止めるニーヴェル。

 暫し思考したかと思うと、まっすぐに私の目を見て話し出した。

 

「申し訳ございません、嘘を吐きました。

 本当は、雇われた当初には『なんで高貴な血を引く俺が使用人なんだ』と腹を立てて、周囲の言うことを全く聞きませんでした。それで、それまでの態度も相まって、すぐに周囲の反感を買ったんです。

 私は、その時になって、アマーリエ様が手加減してくださっていたことを知りました。

 本気で殴られる痛みや、一方的に怒鳴られる怖さ――私がしてきたことの、本当の酷さを身を以て理解したのです。

 だから、殴られたりするのは仕方がありません。自分がしてきたことが、自分に帰ってきたのですから」


 ……ニーヴェルの真っ直ぐな視線と真摯な台詞から、彼が本気で更生したのだと伝わる。

 手加減は……正直に言ったらしてないんだけど、まあいいや。

 そうか、知らないところで色々あったのか。

 殴られたとかは少し気になるけど、叱る為なら私も推奨派だからなぁ。そこのところ詳しく聞かないと。

 

「……ですが……」

「ん? ……え、ちょ、ニーヴェル、大丈夫?」


 ――急に、ニーヴェルの声が震え出す。徐々に顔は青褪め、身体も小刻みに震えていた。

 日射病? それとも熱中症?

 

 と思っていたら、隣にいたヨツバが、俯いたニーヴェルの顔を覗き込みながら手を握る。

 ニーヴェルも、ヨツバを見て、その手を力強く握り返していた。


 二人が静かに見つめ合っていると、ニーナがそそっと寄ってきて小声で話しかけてくる。

 

「……ニーヴェル様、連れ込まれそうになったそうなのです」

「……は?」


 連れ込まれそうになった、とは。

 眉を顰めながら視線を向けると、ニーナは言い辛そうに言葉を選びながら続けた。

 

「その、どうやら、使用人同士で関係を持っている者がいたようで……その場に居合わせてしまって……」

「……うん?」

「無理矢理、連れ込まれそうになった、と……」


 ……一瞬、理解が追いつかなかった。


「……ちょっと待ってくれる? 単体にじゃなくて、出来てる者同士のそういう部屋に、ってこと?」

「……はい」

「っ、有り得ない!!」

 

 私の声が、自分でも驚くほど大きくテラスに響いた。

 だって、性的虐待だし、子供を連れ込むやばい性癖持ってる使用人が二人もいるってことじゃん。

 あり得なさすぎる。


「で、ですが、ヨツバが目撃し、騒いだことによって未遂に終わっています。わたくしもヨツバから話を聞いた時は、他人事とは思えませんでした……」

「ああ……」 

 

 ヨツバもその美貌で周囲の男たちを無意識に虜にしてと、色々あったらしいしね。

 

 ヨツバもニーヴェルも、互いとって一番の理解者になってるんだろうな。


 頭が痛い……。


「っ……な、なぐられたのは、仕方、が、ない、と思って、ます……で、でも、わた、わたしは、き、きもちがわるくて……」

「いい。わかった、もう何も言わなくていい。辛かったな」


 目を潤ませながらも必死に泣くのを堪えつつ、自分の気持ちを一生懸命に伝えようとするニーヴェルの姿が、私の罪悪感を刺激する。

 

 安心させるには抱擁だ――そう思って席を立った、その瞬間、ニーヴェルの体がビクリと跳ねた。 向けられた視線から怯えているのがわかる。


(……そりゃトラウマにもなるか……無理もない)


 きっと、今の彼にとって自分より強い者からの接触は、暴力や陵辱の可能性があると思っているのだろう。

 そうなると、抱き締めるのは違うな。

 親とかならまだしも、雇用主でしかない私では、抱擁で彼を安心させることはできない。

 

 そう思い直して――ニーヴェルの頭に優しく手を乗せた。


「家のことを顧みなかったばかりに、怖い思いをさせて悪かった。ごめんな」


 謝罪しながら、頭を優しく撫でる。

 ニーヴェルは一瞬呆気に取られたが、私の言葉が終わると同時に、ボロボロと大粒の涙を零した。


(私が出来るのは、時間が彼の心を癒してくれるのを祈ること。それから――) 


 これからすべき事を一人、頭の中で計算していた。 


お読みいただき、ありがとうございました(*^^*)

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