ルーベに帰還
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だからといって特段変わることはありません。勿論なろう様の方でも投稿はしていきます。
引き続き、アマーリエの物語を宜しくお願いします。
久方ぶりの我が家がある、領主街ルーベ。
城壁に囲まれた大きな街は、中世ヨーロッパの街並みを思い出させる。
ゲームではラスボス・アマーリエとの最終決戦がこの地で行われることを鑑みての城壁だったのかも。実際の話は、百年以上昔に起きた大戦の名残らしい。巨人に攻められたら一瞬の大きさだけど、人が相手ならそれなりに持ちこたえられそうだ。
城門を潜り、メインストリートを闊歩する。
騎士が囲むバルカン公爵家の馬車だと分かると、人々は道を空け手を止め頭を下げ、馬車が過ぎると元の作業に戻っていく。人々の営みは領主が居なくてもなんら変わり無かったようだ。
変わったことといえば、私への関心だろうか。
アマーリエになって一番最初、街を歩いていた時は嫌悪まではいかない――と思いたい――が、辟易している印象を受けた。
二度目は改善が見られたことによる関心、疑問レベルの軟化。
そして三度目の今は……『ああ、お偉いさんが通るのか』みたいな関心の薄さが伺えた。耳を大にしなくても聞こえていた私に関する事が、今は全く聞こえないのがその証拠だろう。
可もなく不可もなく。結構なことじゃないか。
中には領民から愛されたいやら地位や名誉を誇示したいという領主もいるだろうけど、私はこれでいい。
(このまま付かず離れず領主のままで結婚して、仕事は再婚相手に任せて引退出来たら幸せだな~)
平穏無事なのが一番だ。
(そう、平穏がね……)
……残念ながら、平穏な暮らしはもう少し先になりそうだけれど。
パーシーの言葉を思い出す。
『メリアージュ様がお越しになられたと聞いたとき、正直この話は終わったと思いました。あの方はクロノア様を救い、傾きかけたトリスタン公爵家を立て直してくれた大恩ある御方。エドガー様たちも強くは出れないのです。
冷たく感じられたでしょうか、あの方はクロノア様とトリスタン家を第一に考えておられるのです』
……正直、地位や立場の所為でメリアージュが強いのかと思ってた。
けど、そうか、ライニールの所為で傾いた家に嫁いだとなっては、並大抵の覚悟と努力じゃ建て直しなんて出来ないだろう。
そうしてやっと元に戻ったのに、また厄介事を持ち込まれたらたまったものじゃない。
あれは、あの人なりに守る為の言動だったんだ。
……なにかを守りたい気持ちはわからなくもない。けど、個人的な意見としては、いけすかない人だったな……。
そして私が懸念しているのはもう一つ……。
そんなことを考えてると、馬車は屋敷に到着。
玄関を潜ると、裾を乱すことも厭わずに駆けてくる人影があった。
侍女長キャロラインだ。
「アマーリエ様!」
「わっ!」
「ああ、アマーリエ様、ご無事で何よりです……!キャロラインは心配で心配で……!」
年齢を感じさせない俊敏さで階段を下りてきて、勢い良く抱き着かれる。
まさか抱き締められると思わなくて驚いたけど、腕の強さと切なそうな声を聞いたら、無理やり引き剥がすなんて出来なかった。
「た、ただいま、キャロライン……遅くなってごめんね」
「本来であれば、アマーリエ様は屋敷の中で楽しく暮らして…――え?」
途端に声のトーンが変わったのは、恐らく私の背後にいるヨツバたちが視界に入ったからだろう。
そう思いながら振り返ると、やはりそこにはヨツバ、ミツバ、ニーナの三人。
ゆっくりと身体を離していくキャロラインの顔を見れば、驚きで大きく見開かれた目はそのままに、眉間だけを不快そうに寄せていた。
「……アマーリエ様、これはどういうことでしょう? こやつらは、トリスタン公爵家の者たちが引き取るという話だったのでは……?」
「そのことについては、執務室で話すよ。みんな、長旅お疲れ様。ゆっくり休んで」
共に長旅をしてきた者たちを労いつつ、予想範囲内の反応を受け流して執務室に向かう。
執務室には私とキャロライン、パーシーの三人。
キャロラインとは執務机を挟んで向かい合い、トリスタン公爵家とのやり取りを伝えた。
「なんと無責任な……! トリスタン公爵家にはほとほと愛想が尽きました!」
「その台詞が子供たちを思ってのことだったら同意できたけどね。そういうわけで、ニーナ、ヨツバ、ミツバは我が家で受け入れることになっ」
「反対です! 幾らトリスタン公爵家の血を引いていると言っても、半分は卑しい平民! アマーリエ様の養子になるには相応しくありません!!」
「まだ最後まで言ってない……。養子にはしない。あくまで使用人として受け入れる」
「使用人……!? これ以上、平民の使用人は必要ありません! 今ですら多いくらいなのに……!!」
「どっちかっていうと、貴族出身の使用人の方が多いよ。しかも貴族出の使用人たちは平民出の使用人に面倒な仕事を押し付けて、遊んでるみたいだし」
激昂していたキャロラインだけど、私がそう言った途端に息を呑んだようにピタリと固まった。
「な……! だ、誰がそんな出鱈目なことを言っているのですか!? へ、平民たちが口から出任せを言ってるだけで……!」
「出鱈目じゃない。報告は上がってるよ」
調べ始めた理由はニーヴェルが執事見習いとして雇われてからの話を聞いてからだけど。
お読みいただき、ありがとうございました(*^^*)




