お金がないと手にする選択肢も限られてきます
ピリポが指定したのは、あろうことか昨日のファミレスだった。
「この人は気まずさとかは感じないのだろうか?」
カヤは唖然としながらも、結局は承諾した。
おそらく、そういう感覚は天使にはないのだろう。
制服のままでは校則違反になるので、いったん家に帰り、私服に着替えてから足を運ぶ。
すでにピリポは先に来ていて、今日はイチゴパフェを食べていた。
テーブルに案内してくれた昨日の女性スタッフが何事もなかったようにカヤの注文を聞き、去っていく。
カヤはフリードリンクコーナーでやはりオレンジジュースをコップに注ぎ、席に戻る。
「やあ、どうも。その気になってくれてうれしいよ」
「いえ。お話をうかがう前に、確認しておきたいことがあるんでですが」
「オケー。なんでも聞いて」
「時給はいくらなんですか?」
「え、お金欲しいの? お金は堕落のもとだよ」
「それじゃアルバイトの意味がありません」
「うーん、それもそうか」
「それに、お金がないと手にする選択肢も限られてきます」
「え?」
「選択肢が限定されると、本来持っている可能性が閉ざされることにつながります」
「………」
ピリポの顔に明らかに
(この子、めんどくさい……)
という思いが浮かび上がったが、カヤは意に介さず続ける。
「それに、タダ働きの強要は」
「わかった。ストップ。お金は払おう」
言い方に引っかかったが、まずは一歩前進だ。
「それで、時給は?」
「えーと、百円でどう?」
「安っ!」
「だったら、百万円」
「………私、今日は部活を休んで来たんですよ」
「何の部活やってんの?」
「剣道です」
「へえ、意外。強いの?」
「いまはそんな話ではないと思いますが」
「だったね。じゃ、逆にいくらならいいの?」
「えーと、八五○円くらいでどうでしょうか?」
「じゃ、それで」
「え?」
「ん?」
「……いえ、なんでもありません」
(即決されると損をした気分)
カヤは内心で唇を噛むが、まあ中学生のアルバイトとしてはいい方だろう。
もっとも仕事内容にもよるのだが、ピリポは簡単なものだと言っていた。
その仕事内容について聞こうとしたとき、ピリポが言った。
「で、仕事だけど、実際に見た方が早いね」
素早くパフェをたいらげる。
「昨日は残しちゃったからね」
そして真っ白なカードを取り出して
「払って来る」
と立ち上がった。




