どんなアルバイトかって? いい質問だね
「ちょっと、お嬢さん。話だけでも」
とチャラ男はなおも声をかけてきた。
「………」
スタスタと早足になるカヤに負けじと半ば横歩きでついて来る。
右足と左足をいちいち交差させるので、奇妙なダンスにも見える。
「ヘイ、ウェイト。ヘーイ!」
カヤはぴたりと足を止め、男を睨みつける。
「いい加減にして下さい。そんなヒマ、ありません」
「え、まだ何も言ってないよ」
「どうせナンパでしょ!」
そう言うと、男は「?」という表情になった。
「違うよ。アルバイトの話」
「はい?」
「簡単なアルバイトなんだけど、興味ない?」
カヤは一瞬迷った。
しかし、選択肢が一つしかないなら……。
「ぜひ、詳しいお話を」
その頃、空野家では……。
「カヤ、遅いなー」
マコトがテーブルに顎をのせ、腹をギュルルと鳴らしていた。
チャラ男は「ピリポ」と名乗った。
「ピリポ?」
「ピリポ」
……変な名前。でも、ま、いいか。
いまはアルバイトの話を優先しよう。
そう思ってカヤは、うれしそうにチョコレートパフェを食べているピリポに言った。
「それでどんなアルバイトなんですか?」
二人はいま、ファミリーレストランにいる。
「ここで立ち話はなんだから」
とピリポに連れてこられたのが、商店街を抜けた先の市道に面したこのファミリーレストランだった。
店内は混雑しておらず、知り合いに見られる心配もない。
席に案内されるや否やピリポは名前を告げる前にチョコレートパフェを頼んだのだった。
まさかとは思うが、これが目当てでファミレスに?
「どんなアルバイトかって? いい質問だね」
ピリポが口の端に生クリームをつけながら言う。
「………」
カヤは無言でオレンジジュースのストローに口をつける。
早く話を始めて下さい、という意思表示だ。
その意思が伝わったのかどうかは不明だが、
「では、お答えしよう」
とピリポは胸をそらして言った。
「君にお願いしたいのは、天使のアルバイトだ」
カヤは黙ってオレンジジュースを飲み干し、立ち上がる。
「では、これで」
「え? いやあの、ちょっと」
「私、中学生なんです」
「見た感じ、そうだね」
「だからそういうアルバイトはできません」
「え、なんで? 天使だよ」
カヤは自分でも真面目な性格だと思っていたし、まわりもそのように見ている。
やや世間知らずの面があるのも認めよう。
ただ、それでも
「女子中学生が天使になるアルバイト」
がどういう性質のものかを察するだけの知識はあった。
カヤのその思いを確信に変えるかのようにピリポが言う。
「ちゃんと天使のコスチュームも用意してるんだよ」




