表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/19

失業手当が切れるまでにはマンガ家に!

 もしかすると、父は母の死をきっかけにして人生について考えるところがあったのかも知れない。

「一度限りの人生。夢は実現しなければ!」

 とか。

 動機としては手垢がついたものだが、意外に現実というのはそういうものなのかも知れない。


 この一か月、父はほとんど外出をせず作品をせっせと描き続けた。

 本気だということは、その様子からも分かった。

(だけど)

 とカヤはため息混じりに思う。

(古いんだよねー)


 父の作品にはよく姉妹が出てくる。

 いま読んだ作品のサユリはきっと私がモデルだ、とカヤは思う。

 サユリの母親も、きっとお母さんがモデル。

 でも、おねーちゃんは想像の産物。

 なぜなら、カヤは一人っ子だからだ。

(お父さんはもう一人、子どもが欲しかったのかも)

 と、カヤは父の作品を読むたびにそう思う。


「そっか、ちゅどーんはダメか……」

 と原稿を見ながらつぶやいている父にカヤは言った。

「とにかく、ごはん作るね。お腹、空いてるんでしょ?」

「うん。もう、ペコペコ」

 カヤはテーブルに手をついて「よいしょ」と立ち上がり、隣室のキッチンへ向かう。

 手早くエプロンの紐を後ろでくくった後、米びつを開けた。

「……お父さん。お米、ないんだけど」

「ズコーッ!」

「買っといてって言ったでしょ!」

「ちゅどーん」


 近所のスーパーマーケット。

 カヤは左手に持った黄色のカゴに三キロ入りの米袋をドサリと入れた。

 その後、精肉コーナーへ行き、豚のバラ肉と鶏肉のササミのパックを追加する。

 牛肉はいつものように素通りだ。

「失業手当が切れるまでにはマンガ家になってみせる!」

 とガッツポーズをする父親の姿が脳裏に蘇るが、その望みが叶うのはほぼ絶望的だと思っている。食費は少しでも削りたい。


 カヤはレジに向かい、並んでいる人の少ない列の最後尾につく。

 並んでから気づいた。

 レジの女性の胸には「研修中」のプレートがあった。

 列が少ないのは、研修中であるがゆえにレジ操作に不慣れで、そのぶん時間がかかると他の買い物客が判断したからだろう。

「ま、いいか」

 とカヤは退屈しのぎのスマホを取り出そうとして、ふとレジ脇のPOPに気づいた。

 そこには「レジスタッフ大募集!」の文字が踊っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ