告白
新学期が始まった。私は、初めてくらいに話す祐介部長に、「一緒に帰らない?」と口ごもりながら言った。彼は存外、「はい。」と呆気なく言った。
「いいの?」
「うん。」
そこには、男女とか、思春期とか、初めての会話とか、そういうウェットな感じはなかった。ただ、目の前の人間が帰りたいと言った、帰宅部だから断る理由がない、いいよ、という、淡々とした返事だ、と、私は感じ取った。
隣で歩くあの学ランの彼は、無表情だった。会話がないのは不自然だと思ったのか、「宿題終わりましたか?次のテストもいい点数取れそうですか?」と、大人のような口調で、当たり障りのない内容を振ってきた。私は、「終わったよ。」とか、「取りたいな。」とか、そんなことしか言えなかったが、話せないことでもない絶妙な話題なので、口数は多くなった。祐介君がなぜか敬語を使っていることにも、あまりにも軽やかで淡々とした話し方だったから、気付けなかった。
彼は本当は私に興味を持っていないように思えた。ただ、礼儀として、また暮らしやすい環境を守るため、薄い壁を作った上で、話してるのでは?と、私は思った。その壁が、何とも言えず、高貴で崇高なものに思えた。
「そろそろ…」
彼は、そろそろあの路地だ、と思っていた私に言った。
「こっちだから。」
「うん。ありがとう。…。」
お礼を言ったきり、私は、思いつめた顔で黙ってしまった。言ってしまわないと…
「ありがとうございました。」
祐介くんは、あっさり私に背を向けた。
「……。」
彼が路地を曲がっていく。
「好き!」
「…。」
「……。好き!」




