憂鬱
正直に言えば、私が点を取っている数学は、先生の話を聞いて類題をこなした、暗記の数学だ。本当は、どうしてこうなるかなんて聞かれたら、分からないものだってある。そこを、いとも簡単に「分かる」人がいる。私は、自分が世界から滑り落ちているように思った。
祐介君を見ていると、私は惨めで、それでいて心地よくて、引っ張り上げてほしくて、堕落に沈めてほしくて…ごちゃごちゃな気持ちになった。
そういえば、彼は体操服も周りと違った。前の学校の体操服は、原色の赤が濃くてかわいそうだった。
ある日、私のジャージの上着がなくなった。私は持ち物の管理が苦手だった。シャープペンとか、消しゴムとか、失くしてはよく買い足した。ジャージも、どこかに行ったきり、出てこなかった。私は、何度目かの憂鬱に頭をもたげた。半袖の体操着でずっと過ごした。これは、悪くすると、冬だってこうやって過ごすしかない。何てばかばかしいだろう。きっと誰かが持ってたんだ。あの原色の体操着なら、誰も持ってかないだろうに…
梅雨が明けた。夏休みがそろそろ始まる。私は手芸部の活動で学校に何度か行く。数回行くのだ。わざわざ夏休みに…。なんて熱心で、清廉な過ごし方だろう。私は、密かに自分に酔った。休まないことに、何となくの安心感を覚えていた。私は思う。祐介くんは、きっと一度も学校に来ない。それで不安じゃないんだ。彼は、それで許される人なのだ。




