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量産兵のボクにチートなアドバイザー(オレ)がつきました  作者: 星野林


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スカーレット、ギムレット親子

 サードアイの集落から飛行すること1時間。


 人間の町が見えてきた。


 〈距離にすると100キロくらい離れているか? しっかし町や村の距離が結構離れてるよな……元の世界と違って〉


《オレ》が元の世界のことについて言及するのは珍しい。


 研究所で少し教えてもらった上位の世界……ボクも結構興味があったりするけど……なかなか教えてくれないんだよね。


 町の外に降りて、門番の魔族に挨拶してから中に入ると、魔族は多いけど、人も普通に歩いていた。


 まぁ逃亡防止の首輪がつけられているけど。


 一部の建物は焼け落ちていたり、崩れたりしていて、戦闘の痕跡が見える。


 ちなみにこの町には将軍様も滞在しているから変なことはしないようにしないと……。


 町の中を眺めながら、また来れる様に外れの場所に瞬間移動のマーキングを何箇所か施しておく。


 それから町の中央に行くと略奪品だったり奴隷が売られていた。


 〈投げ売り品があるかもしれないが、今回は奴隷優先だな。商人に声をかけてみてくれ〉


(了解)


 捕虜や奴隷を扱っている商人を探して声を掛けてみると、人間の商人が奴隷を扱っていた。


 人間が人間を売るのか……。


「魔族の旦那、良い品が揃ってますぜ!」


「腕の立つ奴隷はいるか?」


「何名かございますが」


 商人に案内されて奴隷を見せてもらうと、腕の立つ奴隷の殆どは男が多かったが、ちょっと値段が高い。


 今の手持ちだと厳しいかな〜って思いながら《オレ》にアドバイスを求めると、訳あり品を見せてもらうように商人に頼むように言われた。


 言われた通り訳あり品を覗いて見ると、手足を欠損した人間の兵士が何名か……しかも扱いが悪いのか今にも死にそうだったりしている。


《オレ》に気になるのいるか聞いてみると、片腕、片足を失った女戦士と多分その息子が裸で床に転がされていた。


 〈何処かで見たことがあるな……この2人の名前を聞いてくれ〉


 商人に聞くと、赤髪の母親はスカーレット、息子はギムレットと言うらしい。


 〈スカーレットとギムレットの顔に似てるキャラがいるんだよな……血縁かなぁ? バイオレットてそのキャラは言うんだが……〉


(どんな人物なの? そのバイオレットって?)


 〈人間の女将軍で魔王領の捕虜収容所で生まれて、魔王様が討たれた混乱に乗じて脱出し、第二次魔王軍で冒険者、第三次魔王軍で女将軍になって魔王軍を苦しめるんだが……赤髪のスカーレットと青髪のギムレットを混ぜた紫色の髪色をしていたキャラだったな〉


(この2人から生まれたんじゃない?)


 〈いや、流石に近親相姦になるから……〉


 一応商人に聞いてみると、魔王軍が町を陥落させた際に防衛隊で指揮をしていた彼女は町民から責任追及の声が上がり、将軍様の目の前で守っていたハズの人間達に追い立てられて、息子と交わる無様な姿をショーとして晒したのだとか。


 将軍様は不愉快に思ったらしく、彼女の手足を片方ずつ切断すると不機嫌そうに出ていき、その後も何度か町民のガス抜きの為にショーが行われたらしい。


 息子を守る姿勢はしているが、抱きしめることしかできない哀れな女だと商人は言う。


 〈人間の方に恨みが凄そうだな。治せそうか? 〉


(これくらいなら治せるよ)


「商人、この親子を買う。幾らだい?」


「ほぼ不良品なんで銀貨1枚で親子引き取ってくれれば」


「分かった」


 商人に銀貨を握らせると、ボクは壁により掛かって震えている彼女と裸の少年を抱き変えて、店を出た。


 適当に近くの店で彼女達に着せる衣服を購入すると、そのまま瞬間移動で町の外に出る。


 そこで直ぐに治癒魔法で治療を開始した。


 失った手足が生えてきて、息子の方も鞭打ちを何度もくらったのか、背中の皮膚が一部裂けていたが、それも綺麗に治し、体内もグズグズだろうからと、上位回復薬を無理やり飲ませた。


 目に生気が宿り、スカーレットは息子を抱えて守ろうとしながらボクを睨みつける。


「魔族の慰みものにされるくらいだったら!」


 と言うが、声は震えている。


「まぁ待て、別に危害を加える気は無い。それにお前の恨みは自身と息子をこんな扱いにした人間の方に向いているんじゃないのか?」


「……」


 目を逸らす。


 実際魔族とは戦ったが、敗れた後は味方であるはずの民衆に後ろから刺された形である。


 息子まで巻き込まれて……。


 魔族も憎いが町の住民達……いや、人間も憎く思っていてもおかしくはない。


「提案をしようスカーレット。息子共々魔族にならないか」


「魔族に」


 魔族になれば人間に復讐をすることができるし、魔族であれば同族として魔族からは味方として扱われる。


 息子も人間と関わるのはトラウマになっているだろう。


「何より魔族になれば力が手にはいる。将軍様の様に強くなることも可能……兵士時代に鍛えた剣技や武術も鋭さを増す。強くなろうスカーレット」


 ボクは彼女の心に語りかける。


「息子と別れさせないのであれば……そしてあの町には居たくない」


「分かった。距離を取ろう。服をまず着よう」


 ボクは服を投げ渡す。


 彼女と息子は服を着た後に手を繋いでもらって瞬間移動を行う。


 すると一瞬で景色が変わって、サードアイの集落に到着した。


 サードアイ達を見て、少しビクついていたが、ボクは直ぐにスクエニーを呼んで、彼女と息子のギムレットを魔族化させる魔法を発動させる。


 黒い煙が彼女達を包み込むと、ボクと近いドラゴノイドの姿に生まれ変わった。


 スカーレットはボクと同じ赤い翼や尻尾、赤黄色の角。


 ギムレットはそれが全部青色になっていた。


「……これだけの力があれば私は魔族何かに負けなかった。息子と共に慰みものにされることも……」


「まぁまぁ、とりあえず今は一緒の魔族になったことだし、腹を割って話そう。スクエニー、お茶用意してくれない?」


「はーい」







 ボクは隊長も呼んできて、スカーレットとギムレットを椅子に座らせて、ゆっくり話し始める。


「まずは魔族として元人間の2人には今までキツイ思いをさせたことを謝ろう」


「いえ、魔族はどちらかといえば正々堂々と戦っていたので……」


「うん、魔王軍の人達は怖かったけど……僕的に一番怖かったのは同じ人達。お母さんが負けた瞬間に掌返しして……」


「……あのクズ共は許せませんが……」


 やっぱり人間側への恨みは強いらしい。


「魔族になることへの抵抗とかはなかったのか?」


 ボクが一応質問する。


「トントン拍子に私と息子を魔族に変えてそれを言います?」


 スカーレットのその声は別に怒っているわけではない。


 ギムレットの方は自分に尻尾が生えているのが面白いらしく、翼や尻尾を動かしたりいじっていた。


「いや、そもそもあの牢屋に居た時は同じ人間であることすら嫌がっていた様に見えたけど?」


「……ふう、確かにそう。ちゃんと息子と共に治療してもらったから本当に少しだけ心を開いたの。息子が居たから狂いたくても狂えなかったし」


「お母さん……ごめんなさい」


「ギムレットが謝ることじゃないよ。悪いのはあの町の人間だからね」


 とりあえず互いの身分とか町での立場を確認すると、スカーレットは元々上位の冒険者であり、町の防衛の為に臨時で部隊の指揮を執っただけだった。


 旦那は既に魔王軍の侵攻とは別で、冒険者時代に死別していて、女手1つでギムレットを育てていたのだとか。


「私の立場はこんな感じ」


「武芸や剣術とかも嗜んでるでしょ?」


「ええ、一通りは」


「ボクがスカーレットを買ったのはここにいる魔族に武芸を叩き込んで欲しいんだ」


「武芸を?」


 ボクと隊長はここの集落は魔族領ではなく、ホムンクルスの集落でスカーレット達と同じく、人間に迫害されて、辺境に隔離されていたと伝える。


 そして魔族に生まれ変わったは良いけど、狩猟をするくらいで戦いの技術が元ホムンクルス達は身についてないので、教官役を求めたとスカーレットに伝える。


「私が求めるのは息子と共に身分の保障。それが守ってくれて、使い潰す気が無いなら協力する」


「うん、私としてもそれでいい。いきなりうちの部隊に入ってくれとは言わないよ。でも魔王軍に入った方が強く馴れるのは確実だからね」


「……」


 とりあえず、スカーレットとギムレット親子はサキー隊の協力者として保護下に入るのだった。

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