火蓄戦隊ライフストッカーズ4
『火蓄戦隊ライフストッカーズ』4
・食欲
富士山頂上ではブータ達が作戦会議をしていた。
「ぶひひ!ウーシ!トリー!ウーオ!ムッシ!次はどうする!?」
「私は活火山の調査がある故、今はまだ動けぬ」
「アタシも雲の流れを見ないと動けないわよ~ん」
「僕は……」
「僕達は……」
「ん~?何かあるのかぁ?」
「僕は、人間達の所に帰ろうと思う」
「……何だって?」
「僕も、人間達の所に帰ろうと思う」
「何でだ?」
「少なくとも、今の僕達なら人間達を殺して食べる事は簡単だ」
「だから逆にそこを交渉材料に、僕達の命の保証をしてもらう異にする」
「俺様達を、裏切る、と?」
「裏切るんじゃない。脱退だ」
「それは裏切りだ~!殺せ~!」
ブータ達はウーオとムッシを拘束しようとしたが、二人共間を擦り抜けて脱走した。
ウーオとムッシは少し町で暴れ、騒ぎを起こした。そこにライフストッカーズが颯爽と現れた。
「そこまでだ!ストックズ!」
「そう。ここまでだよ。ライフストッカーズ」
「何?」
「お手上げだ。降参だよ」
「降参?何か企んでるな!?」
「そう。企んでる。だから投降したい」
「……何か様子が変だな?」
「あぁ。取り敢えず保護って形にするか?」
「そうだな」
ライフストッカーズはウーオとムッシを拘束し、研究室に連れ帰った。ウーオとムッシは非常に友好的で、ライフストッカーズと意思の疎通が出来ていた。
「それで?お前達は何を企んでるんだ?」
「僕達は貴方達人間達の下に帰りたい」
「わざわざ食べられる為に?」
「そう。そこなんだ。そこを交渉しに来たんだ」
「どういう事だ?」
「僕達を保護してもらう代わりに、僕達を食べない」
「つまり僕達の身の安全を保障してもらいたい」
「……掛け合ってみよう」
焚達は社長に連絡を取った。社長はすぐに「殺せ」と言った。それを聞いて焚達は「分かりました……」と言って電話を切った。
「どうだった?」
「『殺せ』との事らしい……」
「そう、か……」
「やっぱりブータ達の所に居れば良かったね……」
「だが、これは我々にとっては有難い申し出である事に変わりは無い。社長の意思は取り敢えず置いておいて、君達を保護する」
「本当かい!?」
「嘘じゃない!?」
「嘘なんか吐かない。だから教えてくれ。君達が裏で何をしているのかを」
「分かった」
ウーオとムッシは語った。ブータ達は地球の氷河期を早めようとしている事を。ブータは単純に人間を喰う為。ウーシは火山活動を早め、粉塵で地球を覆い被さって温度を下げようとしている事。トリーは単純に雪雲をかき集めて集中的に人間達の住むエリアを凍えさせようとしている事。これらを話した。
何故この事を話そうと思ったのかと焚が聞くと、二人は「だって氷河期が来たら、僕らも死んじゃうから……」と弱弱しく答えた。「成程。単純明快だ」と思ったライフストッカーズはもう一度社長に提言しに行った。
「社長」
「何だね?」
「お話があります」
「私も忙しい。何せ、ストックズの事件を隠蔽する為に裏で回さなきゃいけない仕事が山積みだからね、時間は五分だけにしてくれ」
「分かりました。じゃあ端的に言います。先程捕獲した二体のストックズはこのまま保護すべきと思います」
「……何?」
「彼らは我々に有益な情報を与えてくれました。その礼に、生かしておくべきだと私は考えております」
「君達も同じ考えかね?」
焚以外の四人も「はい」と頷いた。
「……この裏切者共が!」
社長はスイッチを押した。その瞬間、ライフストッカーズはストマックチェンジャーから電撃が流れ、痺れてその場に倒れた。
「アレは只の害悪生物でしかない!殺すしかないんだ!」
「しかし……!彼らも生き物です……!家族を持つ、友を持つ、仲間を持つ一個の個体なんです……!」
「それがまず間違っている!奴らはただの家畜!養殖に過ぎない!だから一匹残らず殺す!そして食べる!それが生みの親としての責任だ!」
「生みの親の……責任……!?」
「ふっ……!ははっ……!ふはははははは!」
「何がおかしい!?」
五人は変身して電撃を撥ね退けた。
「生みの親の責任だと……?ふざけるな!だったらアンタが自分の手で殺せば良いだろうが!」
「私が手を下す必要は無い!」
「何故だ!?」
「私の失敗は部下の失敗!上司の尻拭いは部下がやるものだ!そうだろう!?」
「アンタという人は……!トップに立って良い人材じゃない!お前は、お前こそが害悪だ!」
ライフストッカーズは社長を摘まみ出し、屠殺場に連れて行った。
「何をする!?」
「アンタが自分で生き物を殺してみろ!捌いてみろ!そして喰ってみろ!生き物を殺す事の重さを、身をもって知るが良い!」
ライフレッドはヨウトンブレードを社長に差し出した。
「…………ッ!」
「さぁ、やれ!」
社長は目の前のストックズを見てヨウトンブレードを翳した。
「…………」
「さぁ、殺れ!」
社長はヨウトンブレードを落とし、その場で膝を折った。
「私には、出来ない……!」
ライフレッドは社長の肩に手を置いた。
「そうです。普通は出来ないんですよ。だから、責任を感じるなら、来る氷河期に備えて熱を蓄えましょう」
「熱を、蓄える……?」
「そうです。私達は火蓄戦隊ライフストッカーズじゃないですか。火を蓄えましょう」
「……そうだな。そうしよう」
それを見ていたウーオとムッシは二人でハイタッチした。
「じゃあ変身を解除しますね」
変身を解除した五人は猛烈な空腹に見舞われ、休憩室に移動した。そして五人の前に料理が並べられた。それを五人は「頂きます」と手を合わせて食べた。非常に美味しかった。しかし何処か違和感があった。
「これ、魚と昆虫、だよな?」
「だな」
「ですね」
「みたいですね」
「ッスね」
そこへ社長が現れた。
「やぁ。どうだね?彼らの味は」
「彼ら……?あの、これって誰の肉なんですか……?」
「勿論、君達が保護してくれたあの二匹だよ。三文芝居に付き合ってくれてありがとう。諸君」
五人はその場で吐瀉した。
「まさか……!殺したって言うんですか!?保護した彼らを!」
「そうだが?」
「『そうだが?』じゃない!彼らを助ける為に俺達は……!」
「彼らを助けても、我々は助からない。それは変わらない事実である」
「貴様ぁああああああああああああああああああああああああ!」
五人は再び変身しようとした。
「おっと、待ち給え。ここで私を殺そうとしても無駄だぞ?」
「何っ!?」
「ここで変身したらまた十万キロカロリーを摂取しなければならない。そのアテはあるのかね?」
「そ、それは……!」
「これで君達は我々と同じ、同じ穴の狢だ。この十字架を背負って、これからも業務を全うしてくれ給え」
社長は高らかに笑いながらその場を去っていった。
ライフストッカーズの五人は食欲が無くなってしまったが、空腹感には勝てず、ウーオとムッシを食べたのだった。




