火蓄戦隊ライフストッカーズ2
『火蓄戦隊ライフストッカーズ』2
・同僚
会社公認戦隊、火蓄戦隊ライフストッカーズの主任、ライフレッドに任命された陽豚焚は、部下に昨日のデータを渡していた。
そこへ陽牛と陽鶏がやって来た。
「よう。主任様」
「お疲れ様です!陽豚主任!」
「二人共……どうしたんだ?こんな所に来て」
「俺達もここに配属されたんだよ」
彼らの腕には焚と似たブレスレットが着けられていた。
「二人共……!?そのブレスレット、どうした!?」
「社長に着けるよう言われたんです」
「今すぐ外せ……!ない、か……!」
「知ってるぞ。お前が昨日ストックズと戦った事」
「知ってたのか?」
「あぁ。家畜の分際で人間様に逆らおうだなんて良い度胸だ。存分に狩ってやろうじゃないか」
「一種のジビエですね」
「人間様、か……」
「どうした?」
「いや、何でもない」
その日は変身テストを行った。三人は変身し、各々の耐久度や俊敏性、腕力、武器の性能等を計測した。結果は上々。
変身を解くと三人は異常なまでに腹が減った。そこで昨日のストックズの肉を食べ、空腹感を満たした。
「やっぱり腹が減るな……」
「昨日もそうだったんですか?」
「あぁ。何か、変身すると妙に腹が減るんだよな……」
「それくらいの副作用が無いと変身出来ないって事なんだろ?」
「まぁ、そうなんだろうけど……」
一方その頃、脱走したストックズ達は富士山の山頂に来ていた。
「ぶっひっひ~!今日も人間達を食べてやるぶひ~!」
「それより人間達を氷河期に陥れて絶滅させる方が優先だも~」
「こけー!じゃあ私が季節外れの雪を降らせてやるこっこ~!カモ~ン!カーモ!」
「ぐわっぐわっぐわ~!お呼びですか~?姉御~!」
「人間達を冷やしてきなさ~い!」
「はいは~い!」
カーモは富士山から雲まで飛んでいき、雲をかき集めて大きな積乱雲にして東京を季節外れの雪に包んだ。
人間達は突然の春の雪にパニックになった。そこに焚、陽牛、陽鶏が現場に駆け付けた。
「止めろ!ストックズ!」
「ぐわっ?何だ、人間!」
「人間達を惑わすな!」
「アタイ達を惑わしておいてそれはないんじゃないかい!?」
「黙れ!家畜風情が余計な感情を持つんじゃない!」
「先輩方!行きますよ!」
焚と陽牛は「応っ!」と言ってストマックチェンジャーに注射器で液体を注入し「火蓄チェンジ!フレイムストアー!」と叫んで変身した。焚はライフレッド、陽牛はライフホワイト、陽鶏はライフピンクになった。「よし!行くぞ!」と思ったその時、社長から通信が入った。
「今こそ名乗りを上げるんだ!」
「えっ!?な、名乗り!?」
「そうだ!名乗ってこそ、全ての武器の解放が行われるんだ!」
「えぇ!?そんな恥ずかしいですよ!」
「良いからやり給え!」
「分かりました……!ライフレッド!」
「ライフホワイト!」
「ライフピンク!」
「株式会社!火蓄戦隊ライフストッカーズ!ここに見参!」
後ろで爆破が起こった。
「うわっ!?吃驚した!」
「無駄なエネルギーが解放されたんだ!今から武器を無制限に使えるぞ!」
「そ、そうですか!よーし……ヨウトンブレード!」
「ヨウギュウアックス!」
「ヨウケイガン!」
ライフレッドとライフホワイトは真っ直ぐカーモに向かって行き、刃を振り下ろした。しかしカーモは空を飛び、逃げようとした。そこにライフピンクがヨウケイガンでカーモの翼を撃ち抜いた。
「ぐわっ!?」
落ちたカーモの翼をライフレッドのヨウトンブレードとライフホワイトのヨウギュウアックスで削ぎ落した。
「お得意の空中殺法もこれで終わりだ!」
「行くぞ!ヨウトンブレード!」
「ヨウギュウアックス!」
「ヨウケイガン!」
三人は一斉にカーモに攻撃しに行った。その瞬間、前のストックズ同様「死にたくない!」と叫ぶカーモ。それを躊躇い、ライフレッドは攻撃を中断した。ライフホワイトとライフピンクはカーモを攻撃し、それにハッとしたライフレッドはヨウトンブレードで倒した。
「……ふぅ……」
「お疲れ。主任」
「お疲れ様です」
「あ、あぁ……」
「主任は止めてくれ。折角だ。名前で呼んでくれ」
「そうか。じゃあこれから宜しくな。焚」
「あぁ。陽牛」
「俺の事も名前で呼んでくれよ」
「わ、私の事も折角なんで!」
「そうか?じゃあ宜しく。炙、燃さん」
三人は変身を解いた。その瞬間、眩暈がする程空腹感に襲われた。即座に会社の人間が三人を回収し、帰社した。
目を覚ますと、三人の目の前にはカーモが調理された状態で差し出されていた。
「これは……?」
「やぁ、燃さん。目を覚ましたか?」
「これは……食べて良いんですか?」
「そうだよ」
「じゃあ、遠慮無く……」
燃は目の前の肉にかぶり付いた。それを見て炙も肉を食べた。焚は「頂きます」と言って食べ始めた。
三人は食べ終わると口元をナプキンで拭き、焚だけ「ご馳走様でした」と言った。
三人は精密検査を行った。そこで分かった事は、この変身には異常なまでにカロリーを消費する事が分かった。一回の変身で約十万キロカロリーを消費するという事らしい。普通の食事なら到底補えるだけの食料が手に入らないが、どうやらストックズを食べれば落ち着くらしい。
「何て事だ……」
社長はそう呟いた。
三人はその日、自宅に帰り、食事をして風呂に入って寝た。
翌日、三人は出社し、インターンの学生の相手をした。二人いたが、既に彼らにはストマックチェンジャーが装備されていた。
「君達……!?」
「あ、ども。インターンで来ました、陽殖ウオです」
「陽殖チュウっす」
「君達、そのブレスレットは……!?」
「あぁ、何か社長から頂いたんですよ」
「これを着ければ、内定をくれるって事だったんで」
「……それがどんな物か分かっているのか?」
「狩の為の道具。ですよね?」
「狩って……生き物を殺すんだぞ?」
「そうですね。でも、俺達が生きる為ッスよね?」
「それはそうだけど……!」
「俺、一度で良いから生き物を殺してみたかったんですよね」
「俺も、俺も。合法的に生き物を殺せた上に、お給料まで貰えるなんてこんな天職なかなか無いですからね」
「生き物を殺すって、相当な覚悟が無いと意味が無いんだぞ!?そんな遊び半分の気持ちで命を弄ぶな!」
静寂が流れた。
「君達には分からないだろうな……生き物を殺すという事が、どういう意味か!」
焚はフロアを出ていった。
「何なんスか?」
「家畜に情でも移ったんじゃないか?」
「へー。家畜なんかに。珍しいですね。ただの食材なのに」
「命をどう扱おうが、人間様の勝手なのにな」
屋上へ行った焚は缶珈琲を片手にビル街を眺めた。そこに燃がやってきた。
「どうしたんです?主任」
「主任は止めてくれ」
「あぁ、そうでしたね。焚先輩。どうしたんです?あんなに怒ったりなんかして」
「君は怖くないのか?」
「え……?」
「生き物を殺すって、相当、覚悟を決めなきゃ出来ない事なんだぞ?」
「でもあれは食料じゃないですか。それに覚悟も何も……」
「ただの食料じゃない。彼らだって、立派な、一つの生命体だ」
「生命体……でも食べられる事が目的で生まれたんだから、食べられる事に誇りを持たないストックズなんて、ただの害悪でしかありませんよ?」
「じゃあ君はどうだ?」
「は?」
「君は、もし、彼らのように生まれていたら、素直に喜んで死ねるか?」
「さぁ……?私は人間として生まれたので何とも……」
「その覚悟を持たない限り、俺達はライフストッカーズに変身しちゃいけない気がする」
その瞬間、焚のストマックチェンジャーが赤く点滅した。
「あっ!やばっ!」
電撃が流れ、焚は気絶した。
焚が目を覚ますと、そこは応急手当室だった。焚は起き上がり、近くにあった水に手を伸ばした。すると社長が現れ、水を手に取った。
「目が覚めたかね?」
「しゃ、社長……?」
「君は決心が揺らいだね」
「……はい」
「……君は特別だ。これからはライフストッカーズに変身しなくても良いぞ」
「ほ、本当ですか!?」
「あぁ。但し、条件があるがね」
「条件……?」
「着いて来なさい」
焚は社長に言われるがまま着いて行くと、そこは地下にあるストックズ製造工場だった。そこでは様々なストックズが飼育されていた。しかし妙な事に、餌箱が無かった。
「あの、餌は……?」
「これから始まる」
「始まる……?」
社長は手を挙げ、部下に指示を出した。部下はボタンを押した。その後、天井から人間が落ちてきた。その人間達を、ストックズが食べ始めた。
「こ、これは……!?」
「この工場の秘密だよ。尤も、これを知っているのは我が社の上層部、そしてこの管理部門、それに国の最高機密管理者のみだがね」
「う……うげぇ……!」
焚は思わず吐き出した。
「な、何でこんな事を……!?」
「彼らだって生き物だ。生き物には、食料が必要だ。それが人間だった。それだけの事だ」
「そんな……!?この人達が何をしたって言うんですか!?」
「犯罪だよ」
「えっ……?」
「彼らは終身刑に掛けられた囚人、及び死刑囚だ。彼らを殺してほしいという声は世間でも多くてね。少しでも役に立ってもらう為にこうして餌として活用させてもらっている」
「で、でも!そんな事をしたら人間の数が減ってしまうじゃ……!」
「おいおい。忘れたのか?今は世界人口百億人だぞ?そうそう犯罪を止める人間が減る訳が無いじゃないか。人間はいつだって、我が儘で、業突く張りで、意地汚いんだ。食料の心配が無くなったからって、犯罪が減る訳じゃない。これが世の中の摂理というものだよ」
「…………」
「もしライフストッカーズを抜けたいと考えているなら、彼らのようになる。秘密厳守の会社だからね」
「…………ッ!?」
「今日はもう仕事は液相に無いみただね。半休を取って休みなさい」
「……はい」
焚は自宅に帰り、死ぬかのように眠りに着いた。
その日、焚は悪夢を見た。死にゆく人々、殺したストックズの怨霊。彼らから囲まれて逃げられなくなり、最後は自分が食い殺されるという夢だった。
翌朝、焚は重い足取りで会社に出勤したのだった。




