8話「初共闘」
熱が、残っている。
指先から腕へ、脈打つように流れてくる。
大和は、手の中を見た。
炎を纏う刀。
「……」
握る。
しっくりくる。
まるで——ずっと使っていたみたいに。
悪きものが、動く。
空間が軋み、ねじれる。
“見えない圧力”が一点に集中し、大和へと落ちる。
逃げ道を作る余地すらない。
「……来る」
呟いた瞬間、身体が動いた。
踏み込む。
最小の動きで、圧の軌道を外す。
そのまま振る。
炎が走った。
歪みが裂ける。
確かな手応え。
「……やっぱ、いけるな」
息を吐く。
この力は、身体に馴染んでいた。
「大和、前」
静紀の声が飛ぶ。
短い指示。
それだけで十分だった。
考える前に、体が動く。
前へ。
落ちてくる歪みの“軌道”が、わずかにズレた。
「……っ」
静紀の結界。
攻撃そのものではなく、“流れ”を変えている。
ほんの僅か。
だが、それだけで道ができる。
滑り込む。
振り抜く。
炎が空間を裂いた。
「……今の」
「偶然じゃない」
静紀が即座に返す。
視線は交わらない。
それでも、ズレがない。
悪きものが、形を変える。
圧が重くなる。
空間そのものを押し潰すように、範囲を広げてくる。
さっきまでの単純な攻撃ではない。
「右」
大和が動く。
「止まって」
静紀の声。
即座に踏みとどまる。
次の瞬間、横から歪みが通り抜けた。
紙一重。
「上!」
振り上げる。
炎が弧を描き、歪みを弾く。
「……はは」
思わず笑いが漏れる。
動きが“分かる”。
身体が先に正解を選んでいる。
「そこだ!!」
踏み込む。
そこが“正しい位置”だと、身体が知っている。
炎が走る。
悪きものを押し返す。
「追い込む」
静紀が小さく呟く。
結界を展開する。
防御ではない。
“流れの制御”。
空間をわずかに歪め、進行方向を誘導する。
その先に——
大和がいる。
「……そこだ」
炎が走る。
悪きものが大きく揺らぐ。
形が変わる。
今度は広範囲の圧。
一撃で潰そうとする動き。
だが——遅い。
「右下、落とす」
「了解」
短い会話。
それだけで成立する。
結界が角度を変える。
圧が“ずれる”。
その隙間に——
大和が踏み込む。
「——っ!」
振り抜く。
炎が爆ぜる。
一閃。
歪みが大きく裂けた。
まだ終わらない。
だが、確実に効いている。
「……いける」
静紀が小さく言う。
大和は肩で息をしながら笑った。
「だから言っただろ」
炎が揺れる。
未熟。
無駄も多い。
それでも——
二人の動きは、明らかに“揃っている”。
悪きものが、再び形を変える。
圧が上がる。
戦いは、まだ終わらない。
次は——
仕留める。




