6話「限界」
「——っ!」
結界が、潰れる。
圧が一気に落ちた、その瞬間——
大和は、前に踏み出していた。
結界を、すり抜ける。
次の瞬間、背後で鈍い音が響いた。
さっきまで自分がいた場所が、完全に押し潰される。
「……あっぶね……!」
荒く息を吐く。
頬についた砂埃を乱暴に払う。
心臓がうるさい。
一歩、間違えていたら終わっていた。
顔を上げる。
「……静紀——」
言いかけて、止まる。
静紀は、こちらを見ていなかった。
その場に立ち尽くしている。
構えも、崩れている。
まるで——戦っていない。
「……おい」
違和感が走る。
その時だった。
空間が、歪む。
静紀のすぐ横。
だが——
避けない。
気づいていない。
「っ、危ねぇ!!」
間に合わない。
歪みが走る。
鈍い音。
静紀の身体が、わずかに揺れた。
遅れて、赤が滲む。
それでも——動かない。
視線の先。
静紀の目は、どこも見ていなかった。
⸻
——透明な壁。
叩く音。
小さな手。
内側から、必死に。
守ろうとして——閉じ込めた。
倒れている。
動かない。
——自分のせいだ。
⸻
「……また」
静紀の唇が、かすかに動く。
「また……同じことを……」
現実と記憶が重なったまま離れない。
視界は揺れたまま。
「……守れなかった……」
歪みが走る。
——それでも、動かない。
「——っ!!」
直撃。
肩口が裂ける。
血が、はっきりと流れる。
「……ふざけんなよ」
低く、声が落ちる。
大和だった。
一歩、踏み出す。
「勝手に終わってんじゃねぇよ」
もう一歩。
歪みが走る。
今度は大和を狙う。
紙一重で避ける。
踏み込む。
距離を詰める。
「守るとか言っといて」
さらに一歩。
「勝手に諦めてんじゃねぇ!!」
静紀の前に立つ。
初めて。
同じ場所に並ぶ。
「……や、まと」
静紀の視線が、わずかに動く。
そこにあったのは
庇われる側じゃない背中だった。
歪みが、二人を捉える。
空間が、再び軋む。
まだ終わっていない。
むしろ——
ここからだ。




