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5話「選択」
悪きものが、大和を捉えた。
大和を囲う結界へ、圧が一点に集中する。
外側から——空間そのものが、押し潰されていく。
「……っ」
足元が軋む。
守られているはずの空間が、薄く削られていく感覚。
内側のヒビが、また増える。
「大和に攻撃するな!!巻き込むな!!」
叫びが響く。
静紀だった。
今までで一番強い声。
怒りではなく、焦りに近い。
歪みが“深くなる”。
外側から結界を押し潰す。
「……くそ……!」
静紀が歯を食いしばる。
手をかざす。
結界を重ねる。
強く、厚く——守るために。
だが、揺れる。
形が安定しない。
指先が震えていた。
⸻
透明な壁。
閉じ込める空間。
叩く手。
⸻
「また……あの時みたいになる……!」
抑えきれず、声が漏れる。
「……あの時ってなんだよ」
大和が言う。
拳を握る。
「何に怯えてる」
静紀は答えない。
ただ、目の前の歪みを弾こうとする。
守ることしか、選べない。
「分かんねぇよ」
大和が一歩踏み出す。
結界に手をつく。
「でも——」
押す。
「俺の意思を無視するな!!」
弾かれない。
手が沈む。
「……なんで」
静紀の目が見開かれる。
大和手が結界をすり抜ける。
しかし、その瞬間——
一際強い歪みが結界を襲う。
圧が一直線に落ちる。
「このままじゃ——」
結界ごと潰れる。
——潰れたはずのその場所に、
大和の姿は、なかった。
「……え」
それ以上、言葉が出なかった。




