第37話「決戦前夜」
スギヤマ達は砂浜に立っていた。
明らかに様子がおかしいと感じたのは、海の色が真っ黄色な事だった。
砂浜を囲む海は一望でき、小さな島の様だった。
やがて砂浜の一部が隆起し始め、砂の中から異形の生き物が現れた。
車輪のように中心から三方向に伸びて獅子、犀、狒々に似た頭部が付いている。
回転しながら空に浮くと青い炎を纏い始める。
弧を描き、勢いよくリル目掛けて降下してくる。
「雷牢!」
バチバチバチッ
激しい音が鳴ると車輪の生き物を弾き返す。
車輪の炎が消え、雷を纏い始める。
再び勢いよく回転し始めるとシティス目掛けて襲い掛かる。
避け切れずシティスの全身に電流が流れる。
ふっ、とシティスは真後ろに倒れこんだ、
スギヤマが駆け寄ると容体を確認する。
「息をしていない!」
「何だと!スギヤマ、心肺蘇生は出来るか!?」
「緑生檻」
レアラが術を唱えると、シティスとスギヤマの周りに太い木の幹が檻の様に複数覆い始めた。
「授業で教わった処置方法で何とかしないと…」
スギヤマが焦りを隠せずに言う。
「雷焔の影槍!」
リルが応戦する。
槍は車輪に吸い込まれるように消えてしまった。
スギヤマはシティスの体に腕を伸ばし、心臓マッサージを始めた。
「緑生檻」
レアラが再び術を唱えると車輪の頭上高くに木が覆いかぶさった。
木の蔦が締まっていき、車輪は口々に呻き声を漏らした。
すると車輪の生き物は煙のように消えてしまった。
「シティス!起きてくれ!」
答えを聞く間もなく視界が乱れ始める。
スギヤマ達はくすんだ灰色の水玉模様が描かれた壁の部屋に移動していた。
「目を覚ましたみたいだ」
スギヤマが額を拭う。
「みんなごめん」
シティスが申し訳なさそうに言うとスギヤマはほっと安堵の息を吐く。
「一体この空間はどうなっているの?出られるの?」
リルが言う。
部屋の奥には厳かな祭壇があった。
「やっと到着ね」
祭壇にはガラスのような容器に入った片腕が置かれていた。
「あの容器が封印よ、恐らく割った者に術が継承される」
一同がしばし沈黙した後、スギヤマが声を上げた。
「俺がやる」
深呼吸をして腕を振り上げる。
「鉄鋼!」
容器が割れ聞き取れない言語がスギヤマの脳内を駆け巡る。やがて一つの単語が記憶に残った。
「どうやら術を会得したようです」
「さてここから帰る方法だけれど……」
レアラが不安気に言う。
「あの扉!」
シティスが指差すと光が漏れる扉に一同は向かった。
扉を開け先に進む。
再び視界が乱れ始め、見覚えのある獣闘場の外の草原に出ていた。
「さて、禁術が解決策となるのか、最後まで付き合うわよ」
レアラが言う。
「今日は一旦休んで明日が最後の決戦だ」
スギヤマが奮起する。
「妖獣は飼えるくらいが丁度いい、客を減らすようじゃ商売あがったりだからな」
ゼリトが目を細めて言う。
「それじゃ部屋へ案内するわ」
レアラに連れられ、スギヤマ達は朝まで眠った。




