第32話「緑壊のカトー」
翌日、朝食を摂ると、フィルクセップ国を後にした。
港へ向かい、ガテリヤ王国のある大陸へ行く船を待つ。
船に入ると、同乗者が続々と乗り込んでくる。
スギヤマ達は客室で荷物を下ろし、波に揺られていった。
数日間の船旅を終え、陸地へ着くとレピリクを呼び出す。
レピリクが指し示したのは、ガテリヤ王国と反対の方角だった。
途中、数匹妖獣に出くわしたが、これまで多くの戦闘をこなしたスギヤマ達は難なくやり過ごし、乾いた砂が広がる荒地に辿り着いた。
荒野の中には数人の男女がいた。
その中にカトーの姿もあった。
彼らは巨大な狼のような妖獣の死骸を囲んでいた。
「我らの不浄の血を清め、魂を新たな次元へ引き上げたまえ……」
みすぼらしい身なりの女がそう呟くと、ナイフで妖獣の肉を切り始めた。
妖獣からは黒い血が流れ出し、女はその血を啜り始める。
周りの人達も同様に血を口にする。
カトーが片腕を上げると、真上に赤い靄が浮かぶ。
靄は広がり、数メートルの蛇の形になった。
蛇は口を大きく開け、血を啜る女を頭から呑み込んでいく。
蛇の胴が太くなり、一瞬で中身がどこかの空間に消え、再び細くなる。
次々に人を呑み込んでいき、カトー一人だけになった。
「うわ、何してるの、やばいよアイツ」
リルが顔を顰める。
「気づかれる前に一斉に叩こう、蜥蜴は攻撃しないで本人を狙うぞ」
スギヤマが提案すると、距離をつめる。
「ソルレイ!」
スギヤマの掌から光線が発射する。
カトーに直撃する前に、傍にいた巨大な蛇が体を素早く這わせて庇った。
「おや、いつかの刻晶持ちじゃねぇか。情報は入ってきてるぜ。お前達、他の刻晶持ちを粗方倒したそうだなぁ。手間が省けて助かるぜ」
カトーは蛇の口に手を突っ込むと刃が折れ曲がった短剣を2本取り出した。
フッとカトーの姿が消えると次の瞬間、シティスの背後から斬りかかる。
リルが腕を掲げて力を込める。
「雷牢!」
リルが技を放つとカトーの動きが止まる。
「ふん、小賢しい」
巨大な蛇がリル目掛けて移動し、襲い掛かる。
リルの集中が切れると、カトーの縛りも解ける。
「闇封!」
スギヤマが叫ぶと、辺りを黒い霧が包んでいく。
霧の中で、スギヤマはカトーに拳を向ける。
「圧殺!」
カトーは短剣をキンっと擦り合わすと、蛇から太い腕が生え、落下するカトーの頭上の円柱を破壊する。
蛇は大きく息を吸い込むと辺りの霧が晴れていく。
スギヤマ目掛けて蛇が移動し、牙を覗かせる。
「雷牢!」
再びカトーの動きが止まると、スギヤマが拳を振りかぶる。
「チッ」
カトーが目を閉じると何やら呟き始め、直後に目のない人型の蜥蜴が現れスギヤマの腕を掴む。
すると蜥蜴の手から炎が燃え上がりスギヤマの腕を焼く。
「うっ!」
スギヤマは蜥蜴の手を振りほどき距離を取る。
蜥蜴はシティス目掛けて火球を飛ばす。
シティスが避けると、カトーがすかさずリルへ短剣で斬りかかる。
リルの肩が裂かれ、血が噴き出す。
蛇を囲っていた雷が消え、蛇が自由になる。
「フィーア!」
シティスが治癒術でリルの肩を止血する。
「いい加減にするのよ!雷焔の影槍!」
カトーの胴体を槍が切り裂くと、カトーがうずくまる。
「もう一度だ、リル!」
「雷牢!」
カトーの動きが再び止まると、間を置かずスギヤマが念じる。
「圧殺!」
カトーの真上から黒い円柱が落下し押しつぶす。
円柱が消えると、カトーは身動き一つしなかった。
スギヤマがカトーの首にある刻晶を砕くと、どこからともなくレピリクが現れた。




