第33話「妖獣王」
「お疲れ様!さぁ偉大なあの方が蘇る!」
レピリクに刻まれている模様が回転しだし、体が激しく発光する。
デコとケーテも現れ、同様に光に包まれる。
すると三体同時に体から空に向かって光の柱が立ち上る。
空が割れ、裂け目が虹色に輝き巨大な目玉が覗く。
裂け目から鋭い爪が現れ、裂け目を広げていく。
「全ての理を統べるお方、妖獣王カルブドット様の降臨だ」
「妖獣王?一体なんだ?願いが叶うんじゃないのか?」
「願いは叶うよ、妖獣王の御心のままに」
そう言うとレピリク達は裂け目に消えて行った。
裂け目から胴体が完全に出ると、地上に太い足を降ろした。
「ギルルルルルァ」
低い異様な唸り声が辺りに響く。
黄金色の皮膚に黒い斑の模様が入った巨体はスギヤマを睨みつけ、腕を伸ばすと掴み上げた。
「うわぁあああ」
「スギヤマ!」
そのまま口に運び、あっという間に呑み込んでしまった。
「そんな……」
シティスが狼狽する。
視界が閉ざされると全身に不快な粘液が張り付き、押し出されるように運ばれると、触れている感覚が無くなり、落下していた。
地に足が着くと突如として太陽の光のような眩さが溢れ、気が付くと辺り一面の小麦畑だった。
「ここは……?」
行く当てもなく進んでいると、人影があった。
近付いてみると足元まで伸びた長い緑色の服を着た白髪の老人だった。
「ここを訪れる者が現れたか。ちょっと話を聞いて行かんか」
スギヤマは頷くと老人は話し始めた。
「とある世界には様々な種族の生き物が共生しておった。海に棲む者、森に住む者、多くが言葉を覚え、交流しておった。
生き物は集うと繁栄し、国を作った。
そうして多くの国が生まれた。やがて国同士の利害が発生し、争いが始まった。
ある国は敗北し、戦勝国による劣悪な支配下に置かれていた。
そんな中、敗戦国の民が畑で作業をしていると、空から飛来する物体が遠くの地へ落下した。
不思議に思い、落下した場所に向かうと赤い角を生やした傷付いた生き物が倒れていた。
介抱してやると、その生き物は不思議な方法で語り掛けて来た。
尻尾を民の腕に巻き付けると、言わんとする事がわかるのだ。
そうしてその生き物は発した『お前の願いは何だ』
民はこう返した『支配から解放してほしい』と。
すると翌月から戦勝国の取り立てがなくなった。
戦勝国を訪れる者が見たのは言葉を話さなくなり、それぞれの住処を荒らす理性を失った生き物達だった。
妖獣と呼ばれる者たちじゃよ」
「妖獣が生まれた話か……。では妖獣王とは何なんですか」
「助けた赤い角の生き物はこうも言った
『私の力を多くの世界に分割する。最後に願いを叶えておこう』と。
民はこう願った。
『永遠の命を』
こうして民はこの世界から消えた。
妖獣王とはおそらく分割された力が集まった強大な姿」
「それではどうやって願いを叶えてもらえるんですか」
「その体に既に触れている。この話も聞いているだろう。返答を待つ事じゃ」
老人はそう話すと、瞬く間に消えてしまった。
やがて体の内側から声が響いてくる。
「ネガイヲ゛カナエタイカ?ソレナラバワタシノチカラヲ゛ワケルコトダ」
体が浮き再び落下する感覚が襲う。




