第30話「ホドクとダリア」
山を越え、フィルクセップ国へ帰って来ると、姫を国王の元へと連れて行く。
「心配したぞ、キエラ。スギヤマ達もよくやってくれた」
「サルバは撃退しました、もう力は使えないようです」
「それは朗報だな。褒美を取らせよう」
国王は一旦部屋に入っていき、再び戻ってくる。
「妖獣を退治するそなたらに相応しい物をと思い、これを授ける」
渡されたのは濃紅色の鞘の剣だった。
「天星剣という。妖獣の皮膚に刃が通る様に打たれた剣だ」
「ありがとうございます」
「サルバという男が現れてから戦が激しくなった。奴がいなくなった今、和平交渉を結ぶ時かもしれぬ、だがこれからも危機が訪れる事があるだろう、再び力を貸してくれる事を期待しているぞ」
スギヤマ達は広間を後にすると、衛兵に大佐のウルを呼び出してもらった。
「この国を出ようと思います」
「そうですか、まだまだ活躍していただきたかったですが、サルバが倒された事で後は我々でも何とかやっていけるでしょう」
別れを告げると、城を出る。
「レピリク、二人組はどの辺りにいるんだ?」
「どうやらこの街にいるみたいだね、青夢と赤龍だ」
レピリクに案内され街を進むと、出店が立ち並ぶ場所に、以前戦った青髪と赤髪を見つける。
赤い髪の女が、緑の果物を齧りながらこちらを見つける。
「ねぇホドク、あいつら倒そうよ」
「あぁダリア、いい機会がやってきたな」
果物を食べ終えたダリアが右手をかざすと光が集まり出し、一筋の光線がスギヤマ目掛けて飛んで来る。
防御態勢を取ると、受けた場所にヒリつく熱さを感じる。
シティスが治癒術をかけるが、同じ場所に何度も攻撃を加えられると体が持たない。
「闇封!」
スギヤマの体から黒い霧が噴き出し辺りを包んでいく。
完全に暗闇に包まれると、サルバから攻撃を受けた時には見えなかった霧の中の様子が手に取るように見えた。
リルが槍を作り出してダリアへ向けて飛ばす。
すると青い髪の男ホドクがダリアを抱えジャンプする。
「シャインバーン!」
ダリアが叫ぶと辺りの温度が急激に上昇する。
「この熱さはまずい、距離を取ろう!」
スギヤマ達が走って温度の下がる場所へ移動すると、霧の外に出ていた。
ホドクは追いかけて目の前に飛んで来る。
リルがスギヤマに話しかける。
「スギヤマ、私が合図したらあの女に攻撃をお願い!」
「わかった」
ダリアとホドクが離れたのを見てリルは両腕を前に突き出し、掌を閉じる動作をする。
「雷牢!」
ダリアの真上からバチバチと青白い稲妻が檻のように覆いかぶさる。
「今よ!」
「圧殺!」
巨大な黒い円柱が現れ、雷の檻を貫通してダリアの体を押しつぶす。
ダリアが地面に倒れると、骨と刻晶が割れる音が響いた。
「ダリア!」
ホドクが駆け寄り声を掛ける。
「あれ、しくじったな私、もう一度あの技を使うんだった……」
「待ってろ、すぐに終わらせる」
ホドクが目を閉じ、自分の体を拳で打つ。
「幻宙脚」
ホドクの姿が二つになり、四つ、八つと倍々に増えていく、背負っていた二丁の斧を取り出しシティス目掛けて襲い掛かる。
咄嗟に腕で受け止めるが、振り下ろされた斧がシティスに傷を付ける。
「雷牢!」
ホドクの周りに雷の檻が現れる。
「一体ずつ倒していくぞ!鉄鋼!」
動きの止まったホドクの一体に拳を叩きつけると、地面に溶けるように消えていく。
二体、三体と消えていき、四体目を止めたところで、残りが一斉にジャンプする。
急降下して斧を振るいスギヤマ達に襲い掛かると、再び飛翔する。
「圧殺!」
頭上に円柱を作り出し、地上の雷牢と合わせて包囲する。
降下する円柱に潰されホドクの分身は消えて行く。
「ちっ、殺れよ」
スギヤマはホドクの刻晶目掛けて拳を打ち込むと、刻晶は乾いた音を立て割れた。
ホドクは項垂れて力なく呟く。
「俺を助けるなら、ダリアも生かしてくれ」
「わかったわ、フィーア!」
ダリアの体が光に包まれていく。
「ホドク……」
スギヤマ達はそれ以上会話を交わす事もなくその場を離れた。




